episode 8『降霊術』
今年も文化祭の日がやって来た。私たち美術部員は、飾り付けられた教室で、交替で案内などをしつつ自分たちの展示を眺めていた。
特に目を惹いたのは、白いボードの上にピンで留めてあるだけの人形だった。三角帽子を被り、フェルトの羽を着けている。特に変わったところはないにも関わらず、なぜか目を離すことができなかった。
訪れた客たちも同じ「何か」を抱いたようだった。誰もが一瞬立ち止まり、訝しげな目で眺めていく――。
片づけの時、人形を制作した先輩に直接話を聞いてみた。
「すごかっただろ、あの人形」
――嫌っ!
ちょうどその時、一人の生徒が叫び声を上げ、顔を覆ってうずくまった。
先輩はあー、やっぱりと頭を掻いていた。
泣きじゃくりながら顧問の先生に手を引かれ、保健室に向かう生徒を私たちは見送った。
私たちが先輩を問い詰めて吐かせたのは、二つのことだった。一つは、展示にリアリティーを持たせられると思って、人形を使って降霊術を行ったこと。動画でやり方を調べて見様見真似だったらしい。もう一つは、あくまで真似事であり、人形にも曰くのようなものはないということ。
真相はさっぱり分からない。だが、先輩はしばらくの間、「覚えてはないけどとにかく嫌な夢」を見続けたそうだ。人形との因果関係は不明である。
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