第7話 砂ぼこり
女賢者シルクが胸のペンダントを床に叩きつけて割った。
その直後、ダンジョン内の時間が止まり全員動けなくなった。
敵のゴーレムも動けない。
味方の戦士ゴライアスは倒れたまま。
俺たちも動けずクチが動かない。
呼吸さえできず完全に時が止まったことを理解した。
「シルクです。時間停止の魔力を入れたペンダントを割りました。このままでは危険だと思って緊急に。時間停止中は会話もできないですから、皆さんの念話を仲介します。」
「こちらハルキゲニア。ボスのゴーレム相手にコレは非常に厳しい。時間停止は、あとどのぐらいで終わる?」
「体感で休憩時間(30分)程度です。時間停止中はダメージの回復もできませんしクチや体が動かないので魔法やアイテムは使えません。」
「こちらトム、ペンダントはあと、いくつ残っている?」
「シルクです。時間停止ペンダントはこれ一つきりです。」
「こちらハルキゲニア。もう詰んでいる。このままだと全滅するぞ。」
「シルクです。ハルキゲニアさんの言うとおり撤退もできず強力な攻撃魔法も中断されてしまいます。ただ単純な回復魔法や蘇生魔法は使えそうです。このダンジョンの大きさが分からなかったので魔法力回復薬はカバン一杯、大量に持ってきています。ですから時間は稼げます。」
全員がしばらく無言になった。
動かないダンジョン内は全く音がせず砂ぼこりも止まっている。
念話も頭の中で響くだけで雑音トランシーバーのような違和感がある。
まばたきが出来ないから目が乾く感覚はあるが錯覚だ。
心臓も動いていないはずだがドキドキしている。
「こちらハルキゲニア。もう普通のやり方では勝てないだろ。この中で最優先は女賢者シルクさんだ。回復魔法や蘇生魔法が使えるのは君しかいない。君が死ねば全滅は時間の問題になる。絶対にシルクさんだけは死んではいけない。そして王子、お前は死んで良い。」
「何を言うか!」
「王子、私ハルキゲニアも召還魔法が中断されて使えないから全く意味がない要員です。王子と同じ死んで良い立場です。それから、この中で敵のゴーレムに少しでもダメージを与えられるのは戦士ゴライアスしかいない。今の王子の剣術ではミスだらけで難しい。」
「・・・・」
「私の単純な氷系攻撃魔法なら、どうですか?」
「シルクさん、あなたは回復魔法や蘇生魔法を使い続けてゴライアスを支援する役目がある。魔法力回復薬も何度も使用するだろう。さらにできるだけゴーレムのパンチをかわして即死級のクリティカル攻撃を受ける確率を減らすことも必要だ。」
「わかりました。戦闘を長引かせるためにも私自身を優先して回復します。次にゴライアスですね。」
「そう。トム王子、このハルキゲニアと一緒にシルクさんを守る盾となりましょう。絶対にゴーレムの攻撃をシルクさんに当てさせない。たとえ死んでも当てさせない。俺たち二人に意味を持たせるとすれば、それだけだ。」
止まった時が動き出しゴーレムのパンチが飛んできた。
俺たちは急いで女賢者シルクの前に立ちはだかった。
まずトム王子が瞬殺され、戦士ゴライアスが蘇生魔法で生き返った。
次は俺がゴーレムに殴られた。
もう痛いとか痛くないとか、そういう痛さではない。
ダメな痛さだとすぐに分かった。
このハルキゲニアをなめてもらっては困る。
なんせ、こちとら村人レベル1だからゴーレムのパンチは通常攻撃でも死ねる。
意識が途切れる直前に女賢者シルクが戦士ゴライアスを回復させたのが見えた。
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