第2話 ランプ

北の山のドラゴンは風を操る強敵だ。

俺を含めた6名のパーティは北の山のふもとについた。

ここまで道中は雑魚モンスターしか出てこないため3名の戦士だけで対処した。

魔法使いと僧侶は魔法力を温存している。

夕方、北の山のふもとでベースキャンプを作った。


「それで、ハルキゲニア殿はどのような召喚獣を?」

と魔法使いが聞いてきた。

おいそれと自分の秘儀を聞く関係ではないが、

ここまでくれば良いだろうという聞き方だ。

俺以外の5名も興味津々で熱いスープを飲んでいる。


「イフリート。炎の召喚獣イフリート。」

俺がそう答えると5名は「おお」と感嘆の声を漏らした。

「実はイフリートを召還するために限定化をしてしまって。」

そう俺が説明すると、またもや「おお」と沸き上がった。

限定化というのは高レベル召喚士が、その能力を極大化させるための秘術である。

複数の召喚獣を操るのをあきらめて、限定化してしまう。

限定化でイフリートしか召還できなくなる。

その代わりイフリートは街一つを破壊しつくすほどの攻撃力を得るわけだ。


「限定化したから俺が出せるのは極大化したイフリートのみ。

つまり雑魚相手には破壊力が強すぎる。

だから本当のピンチの時か、苦しいボス戦のみで召還したい。」


金色のヨロイを着た女戦士が話し始めた。

「たしかに通常のフロアでイフリートを出されても困る。

まだ探せていない宝箱や隠し部屋なども全て灰になってしまう。

ボス戦までは抑えて欲しい。」


俺は結界についても話しておいた。

「召喚獣を出した時の結界だが俺のまわり馬車二台分ほどが安全地帯だ。

だからボス戦ではできるだけ俺の周りに固まって戦ってくれ。

もしも離れているとイフリートの炎で炭にされてしまう。」


食事が終わって休憩中にこちらの動きを探るような雰囲気があった。

たしかに俺はまだ一回も召還をしていない。

だからギルドの登録が召喚士というだけで証明はできていない。

俺が限定召喚士だと嘘をついていると疑っているんだ。

こいつら。


焚火の炎が消えてイエローのランプだけになった。

星空が良く見えるので明日は晴れるだろう。

女僧侶はスパイスを調合して気付け薬を作っている。

戦士たちが吸ったパイプから薄い煙が香っている。

いつのまにか煙は黄色に溶けた。


俺を召喚士ではないと疑うのも当たり前だ。

本当は村人レベル1なのだから。

召喚士ではないしイフリートも出せないし限定化もしていない。

全て嘘なんすよ。

ただ皆を安心させるために召喚士のような行いを見せなければ。

俺は地面に枝で魔方陣を描く練習をしはじめた。


焼肉定食 焼肉定食 焼肉定食 焼肉定食 焼肉定食

豚生姜焼 豚生姜焼 豚生姜焼 豚生姜焼 豚生姜焼


円を描いて中に漢字を書いて、それらしく地面に描いた。

すると皆が寄ってきて見たことのない漢字の意味を聞いてきた。

くわしい意味は教えられないが「火炎で焦げる」という意味だと答えた。

ちなみに完成させるとベースキャンプにイフリートを召還してしまうので

これはまだ未完成だと言っておいた。


翌朝から北の山に登り順調にボス前まで来た。

まだ昼過ぎだから時間は充分だ。

今日中にベースキャンプまでは戻れないが。

ボスさえ倒せばどうにかなる。

ドラゴンが人の気配に気づいたのか急に風が強まった。











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