第14話

アイツが居ない職場は、何処か色褪せているように感じた。

「鮫島さん、今週は遅くても18時にはサーバー室落としますよ」

「えぇ!」

「たまには鮫島さんも早く帰って、旦那さん孝行した方が良いですよ」

「大きなお世話!」

情シスの子と会話をしながら、彼が私のせいで残業していたのが身に染みる。

鬼の形相で仕事を終わらせ、ノートパソコンを閉めて溜息を吐いた。

いつもなら

「鮫島サン、まだっすか?」

と、無愛想な顔が聞きに来る。

「後10分!」

画面を睨む私に、彼は呆れた顔で溜息を吐く。それがいつの間にか、当たり前の光景になっていた。

(今頃、新婚旅行かぁ~)

ふと考えた。


あれ?朝帰りした日って、新婚旅行の前の日じゃ無かったの?


そう気付いて真っ青になる。

私も自分の結婚式の日まで、旦那が忙しくて夫婦喧嘩ばかりしていたのを思い出す。

「悪い事……しちゃったな」

誰もいないオフィスで1人、ぽつりと呟いた。

きっと彼にそう伝えたら、あの無表情で

「別に……鮫島サンには関係無いですから」

って言うんだろうな~。

そう考えて、さっきから彼のことばかりを考えている自分に苦笑いする。

職場を出て、駅への道を歩き出す。

彼のいない日々は、なんだか魂が半分欠けたような気持ちになっていた。

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