第13話 アイツが居ない職場
次の週の月曜日。
いつもなら改札でばったりの彼の姿が見えない。
どうしたんだろう?と思いながら、私はオフィスへと向かって歩いていた。
すると
「鮫島さん、おはようございます」
と、情シスの課長、小田川さんに声を掛けられた。
「あ、おはようございます」
小田川さんは私と同じ歳で、何気に同期だったりしている。
「金曜日、三島大丈夫だった?」
突然、彼の名前を言われてドキリとする。
「え?」
驚いて小田川さんの顔を見ると
「あいつ、基本的に社内の飲み会とか参加しないんだけどさ。金曜日、一緒に飲んだんでしょう?仕事は出来るんだけど、無愛想だし、ズケズケものを言うから心配でさ」
って笑っていた。
「あ、大丈夫でしたよ。むしろ最後まで付き合わせてしまって、ビジネスホテル泊にさせてしまったので申し訳無い事をしちゃいました」
苦笑いを浮かべた私に
「え!本当に?大丈夫だったのかな?」
と、小田川さんが心配そうに呟いた。
疑問の視線を向けると
「いやさ…、三島の奥さん?めちゃくちゃうるさいって聞いてるからさ」
そう言うと
「まぁ……でも今日から1週間、新婚旅行だからな。奥様のご機嫌も直るかな?」
って笑った。
「うちの仕事が忙しくて、結婚式の後にすぐ新婚旅行に行かせてあげられなくてさ〜」
と、何も知らない小田川さんが笑って話をしている。
私は分かっていたのに、何故か胸の奥がチクリと痛んだ。
遅かったのかもしれない。
もっと早くに、彼から離れなくちゃいけなかったのかもしれない。
痛む胸を押さえ、私は必死に作り笑顔を浮かべてオフィスのビルへと足を進めた。
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