第3話

私、鮫島彩花。

結婚して10年目の45歳。

人材派遣会社の事務だったが、コーディネーターもやらせてもらっていて、やりがいを感じていた。

仕事に生き甲斐を感じていて婚期を逃し、35歳の時に上司の勧めで出会った3つ年上の主人と結婚した。

主人は穏やかな性格で、年齢もお互いに30代半ばを超えていた事から、出会ってすぐに婚約。1年後には結婚した。

仕事をしたい私を尊重してくれて、結婚後も私はそのまま仕事を続けていた。

主人は夜勤の多い仕事で、泊まり込みもあったので夫婦生活はすれ違いが多かったけれど、穏やかで優しい主人との生活に不満はなかった。

高齢での結婚だったので、周りからは子供を早くしろと言われていたが、主人とはそういう関係はほとんど無かった。

結婚7年を過ぎると、もう夫婦というより兄妹のようになっており、お互いに情はあるけれど男女の仲という感覚は全く無くなっていた。

元々、私も淡白なほうだったので、男女の関係が無くなってホッとしていた。

そしてとうとう子供が産めない年齢になり、私はもう女としての役割が終わったと思っていた。そう…、いつ朽ち果てても良いとさえ思っていて、終活の事を考えていたくらいだった。

そんな時に彼と出会い、惹かれ合ってしまった。それが世間で言われる「不倫」と言われる関係だったとしても……。

私は彼と出会うまで、自分の中にこんなにも女の部分があるなんて知りもしなかった。

たとえその関係が、まるで散り急ぐ満開のソメイヨシノのように、鮮やかで美しくて儚い……とても悲しい恋だったとしても……。

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