第2話 出会い

彼との出会いは、職場の転勤がきっかけだった。地元駅にある営業所から、業務改革とかで私が本社へ行く事になった初日。

駅の改札口で、定期を持った青年と私が偶然かち合う。

見上げた人物は、綺麗な顔をした20代後半から30代前半くらいの男の子だった。

彼は私を無表情で見つめ、手で私に先を促す。

私がぺこりとお辞儀をして先に通ると、私達は人混みの中へと紛れた。

オフィス街にあるこの駅は、会社へ向かう人でごった返していた。

地元駅で悠々快適な生活をしていた私は、独身時代以来の満員電車の通勤に溜め息を吐いた。

自分が勤めるオフィスがあるビルに着くと、エレベーターに乗り込む。

押し込まれるように乗り込み、自分が降りる階を押そうと指でエレベーターを押した時、同時に同じ階を押した人物が居て見上げた。

そこには、駅で会った彼が立っていた。

2度ある事はなんとやら。

配属先へ行くと、私のパソコンが用意されていない!

この電子化の中で、パソコンが無かったら仕事になんかなりゃしない!

困ったなぁ〜と思っていると、上司が

「ごめんね。今日だけパソコンルームで作業してくれる?」

と声を掛けてきた。

だったら、別に今日からの配属で無くても良くないか?と思いながら、私は黙ってパソコンルームへと向かった。

「ったく!なんで用意してないんだよ!」

怒り半分。

本当は、私に来て欲しくなかったんじゃないか?という疑心感半分で呟いたその時

「あ〜、すんません。パソコン間に合わなくて」

と、突然、背後から声が聞こえた。

驚いて振り向くと、今朝会った綺麗な顔立ちの男の子だった。

「でも、こっちも急に言われたんで……」

迷惑そうに呟かれ、ムッとして

「それでも、配属が決まった時点で用意するべきなんじゃないの?それが情シスの仕事なんじゃないの?」

私も思わず反論してしまった。

すると彼はかったるそうに

「はぁ……。でも、本当に急だったんで。無理なものは、無理ですよね」

と言い返された。

(なんなの!ちょっと小綺麗な顔をしてるからって、良い気になって!)

心の中で文句を言っていると

「あんまカリカリしてると、嫌われますよ。もしかして、欲求不満ですか?」

と、バカにされたように言われた!

(ムカつく!!!!!!)

私はそいつを睨み付けて

「大きなお世話!」

と叫ぶと、パソコンルームを後にした。

これが彼、三島健人と私、鮫島彩花の出会いだった。

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