花火

青空

第1話 エピローグ

外には冬の花火が美しく咲いている。

夜の帳が部屋を漆黒の闇に包み、人には言えない関係の私達を隠してくれていた。

窓の外では、様々な色で彩られる花火が打ち上がる。その様子を並んで見ている私の手に、彼の大きな手が重なる。

お互いの薬指にはめられた、デザインの違うプラチナの指輪を外し合う。

それが私達の自然に生まれた決まり事だった。

ホテルのベッドにあるサイドボードに、彼が外した私の指輪が重ねて置かれている。

黙ったまま窓の外を見つめている私の頬を、彼の暖かくて大きな手がそっと触れた。

まるで外の景色を忘れさせるかのように、彼の手が私の顔を彼へと向ける。

もう……今日が最後なんだと、零してはいけない涙を瞼の奥に隠して、私はゆっくりと瞳を閉じた。

閉じた瞼の向こう側で、一際大きな打ち上げ花火が夜空を彩ったのだろう。

窓の向こうに側から閉じた瞼の先に見えた黄色い光を感じた時、光を遮る影と、彼の暖かくて柔らかい唇が触れてベッドへと押し倒された───。

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