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 「――……見つけた!!」

 たった数分が数時間にも感じられた飛行の末、果たして聖花は兄をその視界に捉えた。

 状況は最悪。

 兄の周りには複数の小さな空間亀裂があり、そこから黒い不定形のバケモノが滲み出すように姿を現していた。

 兄を囲む空間亀裂の向こう側にフードを深くかぶった人間の姿――おそらく『組織』の術者――が見え、さらにその横には聖花が今まで見たことのないような規模の巨大な空間亀裂が出現していた。

 「……ッ!?」

 思わず息を呑むほどに強烈で重いFPが発せられている。

おそらく先ほどのFPの揺れはこの亀裂が出現したせいなのだろう。

 今すぐに飛び出しそうになる体を必死に押さえつけ、聖花は空中にとどまったままもう一度兄の方を確認した。

 兄の側には大柄な男が佇んでいた。

 兄は拳で、大柄な男は手に持った金属バットで周囲の黒の化け物に応戦していた。

 状況を確認し、今度は衝動に逆らわずに聖花は跨っていた杖から飛び降りた。

 聖花の体は自由落下を始め、重力によって加速していく。

風切り音が聖花の耳に届く。

 空中に浮いていた杖はすぐに落下中の聖花に追いつき、聖花の右手に納まった。

 加速を感じながら聖花が小さく呪文を唱えると、杖を中心に魔法陣が展開され、煌めき、発動。

 落下する聖花の体をさらに加速させた。

 加速した聖花は一瞬にして目標地点である兄と大柄な男の間にズドンという轟音と小さな揺れとともに着地した。

 「ッ!? 聖花!!」

 兄が驚きながらも目の前の化け物から離れ、聖花の方へ駆け寄ってくる。

 音に気づいた大柄な男もこちらに振り向き、近寄ろうとするが――

 「それ以上近づくな!!」

 聖花は声を荒げて杖を向け、もう一人の動きを制した。

 距離を保ったまま二人の動きが止まる。

 「……随分な挨拶だな、宇野妹」

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