2

 兄を探し、闇雲に夜の街を探していた聖花だったが一旦立ち止まっていた。

 ふとスマートフォンの表示に目をやると時刻は二三時を回っている。

 いつもの兄であればもう家に帰ってきている時間だ。

 家を出る時に兄が帰ってきたら連絡するよう母に頼んでおいたがその連絡も未だ来ていない。

 焦りが加速し始めた。

その時だった。

 ごうっ、と大気が大きく揺れた。

 一般人には感じ取れない、FP能力者が感じ取れる大気中のFPの揺れである。

 「……ッ!!」

 揺れを感じた方向を向き、FPを集中させ状況を確認する。

 あれほどの揺れがあったということ、誰かが大規模なFP能力を行使しているか、境界が裂けバケモノが出現したか。

 そのどちらにせよ戦闘が行われていることは明白であった。

 聖花はすぐに空中に指を走らせる。

 空中に光る魔法陣が出現し、発動させる。

 黒い三角帽子、黒いローブ、そして杖が顕現される。

 黒に身を包んだ聖花は飛び上がって杖に跨り、風を切るような速度で震源へと向かう。

 近づけば近づくほど、兄の気配が感じられるようで、聖花の焦りをさらに加速していく。

 「……もっと早く……!!」

 杖を握った両手に力を込めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る