第21話
季節は次第に移ろい、あんなにも暑かった日々は何処へやら。昼間は残暑の名残りを受けつつも、朝晩は少しひんやりとするのは周囲を山森に囲まれた田舎と言う土地特有のものだろうか
毎日マンネリ化しないようにメニューを少しずつ変えながらトレーニングを行う日々
アキくんとの初のオンラインプレイが終わってから早くも1ヶ月が経とうとしていた
この頃になると自身の体重も目立つ程の変化は特に見られず、今がまさに踏ん張り所だと言うことは姉ちゃんも言っていた
ダイエットを同じように目指す人も、この時期になれば当初よりもモチベーションを保つのが辛いのかも知れない
何せ最初に比べて変化が少ない日々が続くのだ。ほんとに痩せているのかと不安にもなるし、自身の欲求を全て抑えていると言う自負もある
が、そんな生活をずっと続けていたらやはり不満も溜まるし、正直少しイライラが止まらない
自分自身で始めた自分の為のダイエットの筈なのに、何故俺はこんな事をしなくてはならないのかと自問自答をしてしまう程度には、俺の意思は揺らいでいた
土日を好きに過ごしている俺でもこのように思うのだから、ずっとダイエットに頑張る人は更に辛い思いをしているだろうとは容易に想像がつく
とにかく変化だ。目にわかる変化が欲しい
それがあれば俺はまだ頑張れる気がする
ゲームでももう変化は少ない。アキくんとのオンラインプレイで稼いだお金と素材で防具もそれなりに整えたけど、1人ではリザードマンに苦戦し、ハーピーとラミアには数でボコられる為、今ではオークをずっと狩り続けている状況だ
そのお陰なのかなんなのか、[オークの魂]と言うやっぱりネットにも載ってない、超レアドロップを手に入れる事にも成功した
そしてふと俺は気が付く。時間も経ち、ゲーム内でもそれなりに戦えるようになってきたから忘れていた存在を
本来なら有り得ないシステムを採用するゲームだからこそ、ダイエットに励む一方で、最近では勉学にも少しずつ力を入れていたからすっかり忘れてしまっていた
そう、俺は思い出したのだ。最近になって下がってしまったモチベーションを確実に上げる方法を。[ステータス更新]の存在を
思い立ったが吉日。バイト代を握りしめやって来たのはいつものステータス更新会場
と言うのも、今回はフル更新を行おうと思い、財布には少し多めの金額を入れてきた
訪れたのは3回目ともなれば、期間は空いていても少しは覚えているようで、すんなりと受付を済ませて案内の声もそこそこに、計測機器の並ぶ部屋へと向かう
するとそこに身長が高く、スラリと伸びた長い脚に長い髪を頭の後ろで束ねている1人の女性が目に入った
少しタイトな服装で計測に挑む彼女は、スラリとスタイルがよろしい分、胸の辺りもスラリとしていて、しかし彼女の一挙手一投足に、周りの男達も色めき立っている
かく言う俺もその1人ではあるが、おそらく周囲の男連中と見ている部分は大分と違う
俺が見ているのは彼女の“脚”だ
…………いや、そう言う意味ではなく、俺は彼女の脚の本質を見ているのだ
スラリと伸びた長い脚には似付かわしく無いと言った表現が正しいのか、そのブレない“体幹”と言い筋力と言い、彼女は何か蹴り技を主体とした格闘技でもしているかのような匂いを俺は察知した
そんな彼女を尻目に俺も目的の計測を行っていく
今回は更に細分化したバージョンをアップデートしたとかで、ゲーム内での弱攻撃と強攻撃、更には左上のボタンを押しながら放つ第2種の弱攻撃と強攻撃を設定できるらしかった
更にはその設定の際にも自分の得物を反映させる事で、例えば今まで同じ[剣]を使っていた人達のモーションは多少の違いしかなかった物が、今回のシステム改善を受けて、1人1人その人自身によるモーションへと変わると言う事となった
そう言った方面へは全力で改善を重ねるこのゲームに、一万円と言う高額な更新費用が役立っているのだとすれば、少しは報われるような気がしないでも無い
そして俺は一通りの計測を全て終え、必殺技部屋では前回同様最後に大技を一瞬で放てるよう調整して計測を終えた
なんて事は無い。全体を通して見てみれば、全ての計測結果が前回を一回りも二回りも上回っていて、スタミナに至っては体重が落ちたからなのか、前回よりも約1.5倍程伸びている
やはりこうしてステータス更新ではっきりと成長を確認出来るのはとても有意義であったし、また明日からもトレーニングを頑張ろうと言う活力へと大きく繋がった
最近読んでいるサバイバルの本も役立ったのか、まだゲームで確認は出来ていないがいくつかのクラフトが作れるようになったのでは?と、言う程度の自信もある
勉学?学校の勉強の事じゃないよ?必要なのは回復の薬を作る為の知識さ
さて、とステータス更新も終わり時刻も夕暮れ時。前回と違いフル更新を受けた分、時間が掛かるのも仕方がない
会場であるビルを後にしてスタスタと帰ろうとすると後ろから声を掛けられた
「ねぇ君、さっきステータス更新に来てた子だよね?ちょっと話したい事があるのだけれど少し良いかしら?」
声を掛けてきたのは、ステータス更新が終わって着替えたからなのか先程とは違う服装の脚の長いあの女性
違う服装とは言えタイトな格好であることは変わらないから、少し目のやり場に困るのは思春期男子からすると仕方のない所か
「えぇっと……」
初めての状況に戸惑う俺に、その女性は続けてこう言った
「ちょっとなんだからそこでコーヒーでも飲みながら話そうよ」
生まれて初めての逆ナンは、スラリと背の高いモデルでもしているかのような綺麗な女性でした
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