第14話
「おはようございます神鷹様。今回は初めての[ステータス更新]と言うことで少し説明させて頂きます。ステータス更新は施設がある場所であればどこにいても更新することが出来ます。ですが、ステータス更新にはご自身の持っているステータスカードが必要となりますので、必ずお持ち頂けるようお願いします
尚、再発行には5000円掛かりますのでご了承下さい。そして、今から行ってもらうステータス更新ですが、皆様のご希望から少し改変を行いまして、フル更新と、ハーフ更新の2種類が誕生しました。フル更新は前と同じく、全ての項目に対してテストを行いますが、ハーフ更新では[肉体派]か[頭脳派]かで分かれて頂く事で、自身の更新したい分野だけをピンポイントで更新することが出来ます
フル更新は10000円、ハーフ更新は5000円となっています」
土曜日を利用して、前回同様の場所に再び来た俺は、案内の看板に従い再びあの場所へとやって来ていた
「じゃあハーフ更新の肉体の方でお願いします」
前に聞いていた通り、ステータスカードはちゃんと持ってきていたので問題無かったが、更新に10000円掛かると思っていたステータス更新が、半分の5000円で済んだ事は嬉しい誤算だった。頭脳?勉強してないから変わんないよ?むしろ下がってるかも……
思い返せば、山に自生する薬となる草の種類の問題とかもあったもんな。もしかしてその能力が高かったらアイテム無双とか出来るようになるんだろうか?今更やらないけれど
火とか雷のメカニズムなんて詳しく説明なんて出来ないよね?
見るのは2回目となるパンチ力計測マシン
「右、172キロ。左、163キロです」
前回同様に3回ずつ殴って数値を計測。一旦ステータスカードを係りの人に預けた為、今手元には無くあまり詳しくは覚えてはいないのだが、ステータスカードに書かれていた数値よりは、明らかに威力は増しているものと思われる
その後も筆記テスト以外のテストを次々と終わらせていき、いよいよ最後のテストになった
「ではこちらの中から好きな重さの防具、使いたい武器をお決めになってあちらの部屋にお入り下さい。本日は人も少ないですからね、じっくりと選んで貰って大丈夫ですよ」
確かにこの日はあまり人の姿は見えなかった
もちろん更新場所はここだけじゃない筈なので、今も各地でステータス更新は行われているんだろうけど。人があまりいないのは言っても田舎だからだろうか?
俺からしたら十分都会なんだけどね?家の周囲の事を考えれば
だとしても俺は武器も防具も既に決めている
「これでお願いします」
「ほ、本当に良いんですか?」
係りの人が驚くのも無理はないかも知れない
何故なら俺は防具は付けずに、手には拳に嵌めるタイプの所謂、拳鍔。メリケンサックやナックルダスターと言った方が分かりやすいだろうか?
それだけを嵌めて立っている
「せめて防具は以前と違う物を付けた方が良いんじゃないでしょうか?」
係りの人がここまで言うのにも理由があって、CBWでは、装備する事が出来る武器、防具も、この更新場所で選んだ物だけと言うルールがあるのだ
その変わり前に装備した事のあるタイプの物は、変わらずに使う事が出来るので係りの人が言うように、前回軽装タイプの防具を付けた俺は、今回は中装か重装タイプの防具を付ければ、ゲームの[俺]が装備出来る防具の種類も幅が増える事になる
だけど、ただでさえ重たい体に、更に重りをつける気にはならないし、着けるだけで動きを阻害されたくはない
俺は今の俺が出来るベストな動きを、ゲームで再現したいのだ
多少困惑顔の係りの人の横を通り中に入る
すると、前回同様目の前に現れるオーク人形
「……最初は好きに叩いて下さい。後にオーク人形の頭、胴体、全身が順に光りますので、それらの場所に神鷹様の思う必殺技を放って下さい。光りは10秒間ですのでお気をつけて。また、光りだしてからが必殺技の効果範囲となりますので、あまり時間を掛けると出だしの遅い必殺技となりうる事はご了承下さい」
それだけを言って、係りの人は部屋を出ていく
「では始めて下さい」
どこかにあるスピーカーからの声を聞いて、俺は動き出した
まずは突き、蹴りとオーク人形に対して基本技を次々と叩き込んでいく
もう一ヶ月は前の事になるが、前回よりも遥かに力強い手応えを感じる
瞬間、オーク人形の頭部が光る
俺は瞬時にオーク人形に接近し、中段逆突きを胴体に当て、そのまま中段順突きを胴体よりやや上の胸部に当てる。そして最後に頭が光るオーク人形へ上段逆突きを放つ
胴、胸、頭へと下から連続で放つ威力の高い3連突きだ
まだまだ本来の威力にはなっていないが、それでも十分に通用するレベルだろう
頭部へと技を当てた事でオーク人形の光りが消え、少し経ってから胴体が光る
俺はそれを確認してから少しの距離を保ったまま意識を集中させる
そしてそのまま微動だにせず時を待つ
俺はこのテストに対して少しだけズルをする
別に反則な訳では無いだろうがな
半身に構えて意識を集中。これは俺独自が生み出した一撃の型。集中する時間が必要な為に、試合では出した事もないし、通用するわけがない技だが、これはゲームなのだ
試合でもなければ、実戦の場でもなんでもない。こうしていて敵から攻撃を食らう事もない
3つだけあるスキル技のうち、1つを無駄にしてしまうがそれでも尚、この技は使える筈
実際前回でも1つはハズレスキルに成り果てていた。今更どうってことはない
そしてその時がやって来た
何もしなかった胴体の光が消え、一瞬の後、オーク人形の全身が光りだす
瞬間。俺の体は2メートル程の距離を自身の最速でオーク人形へと迫り、半身に構えた状態から一気に力を開放。今まで幾度となく突いてきた空手の基本技である[正拳突き]
才能のない俺が、応用技なんて簡単に繰り出せる訳がない
だから基本技だけはひたすらに繰り返し鍛錬してきた
毎日毎日、あの日まではずっと繰り返してきた[正拳突き]は、この体になろうとも簡単に忘れる事は出来ない
この技だけは俺の体に、いや魂に刻まれている基本にして究極の必殺技
集中していた事で全身の力を瞬時に各所へと効率的に伝える
最速でオーク人形へと肉薄する脚力の力を、腰、背中へと伝え、その推進力をも乗せる
そして軽く突き出していた左手を引くのと同時に右手を出す
今まで何万回とやって来た基本の技を、俺はこのゲームで必殺の技へと昇華させる
「正拳突き!」
かつてない程の衝撃力を叩き込んだオーク人形の光が消えて、俺の初めてとなるステータス更新は終わった
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