第13話
まずはなんと言っても走る事
先週の土曜日、ゲームに対して2度目となる心がポッキリと折られたあの日、俺はゲームを攻略するためにダイエットを始めた
苦手とする恋愛ゲームではなく、得意なジャンルでの敗北は俺の精神に多大なるダメージを与えた
CBWを進めるためには、今の俺にとってこの重たい体は正直邪魔だ
ネットでは、オーガと一対一の激戦を制したデブがいると少し話題が上がったが、おそらくはそのデブと言われている人も、筋力がかなりあるうちの親父みたいな、所謂ゴリゴリ系の人なんだろうと思われる
じゃなければただのデブではゴブリンにすら勝てない筈なのだ………俺のように
だからそのためにはひとまずこの余分な脂肪を落とし、同時に筋力トレーニングを行う事で基礎代謝を上げ、痩せやすい体を作りつつ、前の俺に戻れるような、理想的な体作りを目指す
そこに道場での鍛錬を再開することで、戦う為の技術や勘を取り戻していく
もうやらないと決めた空手だけど、今回は別に人と戦う為の空手じゃない。あくまでもゲームを攻略する為に必要だからやるのだ
だからニヤニヤするな千花姉!あと微妙な顔の親父!
俺は力と技を鍛えたとしても、もう二度とその力を人に向けて使わないと決めたんだ。だからこうして空手の鍛錬をしたとしても、空手の世界に戻るわけじゃないからな!
今まで全然気を使って無かった食事に関しても、作ってくれる千花姉が凄く協力的で、朝から卵やら納豆やらで食事を作ってくれる
「卵は一日3個は食べると痩せるって動画で見たのよ。納豆は善玉菌を増やす為ね」
「え⁉卵って食べ過ぎは良くないんじゃ……?」
「そんなの昔の話しよ。卵はスーパーフードなんだから。それにタンパク質を取らなきゃ?筋トレもしてるんでしょ?」
「そうだけど……なんだか千花姉の方が俺より張り切ってない?」
「…………バカね。ノブユキが痩せて道場に出れば良い宣伝になるじゃない?最近新規の生徒が増えないって父さんも言ってたし」
「なんで俺が宣伝になるんだよ?」
「あんたみたいなおデブちゃんが痩せたらそれだけで良い宣伝でしょ?それに痩せたあんたが道場にいるだけで女の子の生徒も増えると思うのよね。あんた痩せてる時の顔は結構イケてたし」
「そうなの?………それなら彼女の1人や2人出来てた筈じゃない?」
「そうね。ただ顔が良くてもバカには彼女は出来ないわよ?」
「………成績もそこまで悪くない筈なんだけど……」
「…………まずそこを理解出来るようになってからかしら?………菜々ちゃんも大変よね……」
朝から何故かバカ呼ばわりされながらも学校に行き授業を受け、学校が終わればすぐに家に帰りトレーニングをする
ランニングは朝にもしているけど、帰ってからも走る
朝は早起きして少し離れた大きな公園の中を走ってるが、帰ってからは家の周りをウォーミングアップ程度に10周走るだけだ
ただ、10周とは言え道場を含めた神鷹家の敷地は地味に大きい。それなりの距離になる
それが終われば道場の端で筋力トレーニング
トレーニング器具はそれなりにある神鷹道場だけど、今は使わない。この体をある程度変化させるまでは自重トレーニングで十分だ
腕立て伏せに始まり、腹筋を鍛えるレッグレイズ、背筋を鍛えるバックエクステンション、脚力を鍛えるフルスクワット等も一通りこなす
大事なのは時間を掛けてでも、しっかりと可動域を意識してトレーニングする事だ
どんなトレーニングでも、軽くやって回数を増やすくらいなら、可動域を意識して、スクワットで言うならしっかりと腰を落としてトレーニングをする
それらの意識は非常に大事で、100回腕立て伏せをしたからと言って、それがあまり肘を曲げないやり方であるならばほとんど効果はない
どうせやるなら、しっかりと効果のあるトレーニングをした方が、確実に効果も出て、やる気にもつながる
今日は筋力トレーニングの日にしているが、明日には空手の鍛錬メインの日にしている
と言うのも、バイトが火曜日と木曜日にあるので、月、水、金は筋力トレーニングに当てて、火曜木曜に、バイト終わりで空手の鍛錬をするのだ
筋力トレーニングに関しては、毎日やった方が良い気もするけれど、一日置きにやるのと比べてもほとんど大差が無いと言われているので、空手の鍛錬もするし丁度いいか、とも思っている
土日に関しては何もしない。食事だけは気を使うけど、トレーニングの類いは全くしない
昔は気にした事なんて無かったけど、今のこの体になってからは気付いた事がある。それはこの体でのトレーニングがめちゃくちゃしんどいって事
だから俺は土日を何もしない日に設定した。いくら目標があったとしても、毎日気を張っていたら疲れるし続かない。元より、土日はゲームをしたいのでそういったスケジュールと相成った
最初の1週間では何も感じる事はなかったけど、更に1週間くらいすると、お腹の肉は少し落ちたかな?程度の変化が現れ始めて、更にもう1週間経った頃には周囲から「なんだか最近少し痩せた?」と聞かれる程度にはなっていった
その声もあってか、辛いトレーニングや鍛錬の日々も、[変化を他人に認識]された事が嬉しいと思うようになり、土日もゲームの日にしていた事でストレスも発散されて、俺は生まれて初めてのダイエットを着実に進めていっている
時折CBWを起動して画面の中の[俺]を確認するが、明らかに動きが遅いと見て分かる程度には、今の俺は昔の自分を少し取り戻せている事が分かった
そしてついに一ヶ月が経ち、俺は待ちに待った[ステータス更新]に向かうのだった
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