第7話
少しトラブルもあったが、俺は無事にCBWを入手し、今はいよいよソフトをハードに入れる瞬間だ
手に持つコントローラーにも、自然と力が入る
しばらくするとオープニング画面になり、ポップな音楽と広大な世界観が、俺の期待値を更に高めてくれる
すると画面の端に、ステータスカードを差し込んで下さいとの指示画面が見えた
事前に読み込んでいた説明書の通りだったし、なんなら拡張パックは今日の朝からセット済みだ。俺は迷う事無く用意していたステータスカードを差し込んだ
すると画面にはようこそ神鷹様の文字が
そして一瞬の暗転の後、既にゲームは始まっていた
「え?」
一人しかいないのに思わず声が漏れてしまった
それは別に、いきなりゲームがスタートしたからとかではなく、始まりの街らしき所に[俺]がいたのだ
…………うん。間違いなく俺だ。コントローラーで視点を動かし、俺の周りをグルグル回る
顔、体型、服装、髪型。全てがあの時の講習会の時の俺だ
別にあれから数日しか経っていないので、体に変化とかはない。違いと言えば服装くらいなもんだろうか
しばらく俺を観察していたが、とりあえずは動かして見ようとコントローラーを操作する
するとドスドスと効果音でも付いているかと思うようなゲーム内での俺の歩く姿
え?俺って傍から見たらこんな感じでみえてるの?
所謂TPSと呼ばれる三人称視点で映される俺の姿に少し落ち込んでしまう俺
ならばととりあえず走ったりしてみれば、流れる景色とかでなんとなくではあるが、あのときのテストがしっかりと反映されてるんだろう、確かに俺の走る速度を忠実に再現していた
そして走っていると頭の上にでる黄色いバー
多分だけど、明らかに短いその黄色いゲージが無くなると、画面の中では俺がゼーゼーと膝に手を付き息を整えている真っ最中
………そしてそれが地味に長い。いつまで休憩してんだとゲーム内の俺に文句を言いたくなる
なるほどなと思い、しばらくその場で攻撃ボタンや回避ボタン、チャージボタン等を押し、それぞれのボタンの効果と、ゲームの中での俺がどのような動きをするのかを確認する
一通り動かして見てわかった事は、今現在ゲーム内にいる俺自身の身体能力が、あのときのテストによって完全に反映されていると言うこと
思えばいろんな行動をテストされていた。その結果がこれなんだろう
そうしてしばらくすると、突然画面に行き先表示のミニマップが出る
一瞬、ボケっとしてしまうが、これはあくまでもゲームなのだ。目的も持たずにゲームを楽しめる訳がないと、行き先表示の案内に従い街を歩く。ホントは走って行きたい所だけど、スタミナ切れのモーションが地味に長いので歩いた方が結果的に早い。走る速度もそこまで速いわけじゃないし
そして到着したのはゲームでよく目にする、まさにお城。そこでゲームはシームレスでムービーに入り、街全体を上空から眺めるカットと、様々なモンスター達が映し出されるシーンとが流れる
ゴブリンに始まりオークやオーガ、ゴーレムにレイス、スケルトンにリッチ、果てはドラゴンまでもが格好良く登場していく。これは単に想像だけど、他にもまだまだたくさんのモンスターが登場することを予感させる作りになっている
それらはまさにファンタジー世界で、剣と魔法の大冒険が出来そうな雰囲気に、この時点で更にワクワクしてしまう
そうこうしていると目の前には王様の姿が。どうやらムービーの間に城の中に入っているという設定らしい。こういう所で、やはりこれはゲームなのだと再認識できる
『よく来た異世界の勇者様。この世界では今、魔を統べる者が魔物達を操り、なんの罪もない人々を各地で苦しめている。そなたにはこの魔を統べる者、[魔王]の討伐をお願いしたい。とはいえ勇者様であろうと、ただの人間と変わりはなく始めは弱い魔物にも苦戦することだろう。なのでまずはこちらで手ほどきをしたいと思うがいかがかな?』
なるほど。このゲームは単純明解、主人公が魔王を倒せばクリアになるようだ。そしてこれから戦闘によるチュートリアルが始まる所だろう
見れば、先程までは無かった緑色のバーが頭の上に増えている
スタミナのバーと比べると倍くらい長いけど、標準な長さが分からないので自慢できるものなのかが分からない
場面はスッと切り替わり、画面の端々にコントローラーのボタンと、そのボタンに対する効果、説明が書かれている
やっぱり緑のバーが体力で、黄色のバーがスタミナで合ってたみたいだ。スタミナは攻撃することでも少しずつ減っていき、動かない状態で回復するようだ
体力が無くなるとゲームオーバー。最後にセーブしたところからやり直し。他に赤いゲージが画面右下に縦に伸びていて、それが貯まると必殺技のような物が出せるみたいだ
『して、勇者様はどのような力をお求めか?』
いろんな説明を確認していると、王様から声が掛かる
現れたのは5つの項目
♢渾身の攻撃でどんな相手も叩きのめす!パワータイプ
♢攻撃なんて当たらなければ意味がない?スピードタイプ
♢どんな状況だろうと相手の弱点を的確に突く!テクニカルタイプ
♢破れるものなら破ってみろ!難攻不落のガードタイプ
♢頭脳こそがこの世で最も強い力となる?マジックタイプ
これは成長補正とかかかるのだろうか?
…………いや、確かこのゲームはレベルアップやステータスアップは一切無いと言っていた
だとすればこれらは単に、自らの身体能力に補正を掛けるための物ではないだろうか?
だとするならば、スピードタイプとマジックタイプはまず有り得ない
テクニックもないと思うから候補からはずせば、残るはパワーとガードタイプ
だったらここはやっぱり男としてのロマンでパワータイプでいこうと思う
そう思いパワータイプの項目を選択。そしてゲームはいよいよチュートリアルの相手、騎士団長のジンとの戦いに入る
まずは近接戦闘パートによる打撃訓練らしいが果たして?
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