Ep.

「後になって『シャーロット』の船舶識別用プレートを調べたところ、それは我々がそこに到達するまで150年程漂っていたそうで、我々は事象の地平面が複雑に入組んだ為に150年の時空を超えて会話をしていたらしいのです」

 「橋守」はここで目を細め、少し遠くを見た。


「この『橋』を建てた時の事なので、それからざっと150年……今からですと300年程前にシャーロットはその宙域に溶け込んでいたのです」

 「橋守」はここで話を終えると、何かを一口呑んだ。


「それは?」

 僕は思わず訊ねてしまう。

「ラムです。この『歌声』を聞きながらこの話をするときにはどうしても必要でしてね」

 僕は思わず不安げな顔をしてしまう。

「ご安心を。この空間内でしたら安全ですし、私の任務時間はとっくに終わっておりますので」

「それを聞いて安心したよ。『残業』ありがとう」

「いえいえ、こちらこそ、スワン氏」

 「橋守」はここで一旦言葉をつっかえ、遠くを見た。

「この『歌声』を独りで聞くのは、堪えるのですよ……溶け込んだ彼女も、愛らしい顔をしていました」


 ん?

 どういう事だ?

 そう言えば、昔話なのに先程から「我々」と……


「司令官、ひょっとして君の名前は……?」

 司令官はここで軽くため息を吐くと、もう一口ラムを口に含み、廻らせてからゆっくりと飲込んだ。


「ガラハッド・フレデリクソン……当時は指揮官でした」

 ここ迄を苦々しく言う。


「疑似とはいえ超光速での仕事は、時間の流れを歪めてしまいましてね」

「つまり、150年も君は『ここ』で?」

「ええ、今でもずっと、彼女と共にいるのです」


 ガラハッドがそう良い終えた時、ジェーンの端末から曲が流れ出した。

「あら、ごめんあそばせ?」

 それは、デイム・ヴェラ・リンの「We’ll Meet Again」であった。


 ♪

—僕達は再び出会うだろう

—何処でか何時の日か、それは判らない

—でも、僕は知っている

—いつか晴れたその日に、僕達が再び出会う事を——


—彼等は倖せになることでしょう

—貴方がこの歌を歌っていたのを私が見たと伝えたら——

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シャーロット恒星間飛行船 @Pz5

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