勇者は屈せず立ち上がる
タラップを上がった先、設置されていた貯水槽の裏に僕達は隠れた。
「――足立ッ! 早まるな考え直せッ――って、あれ?」
「ど、どこにもいないじゃない」
「ハッ、やっぱりホラだったじゃん! あーし言ったっしょ? 足勃チ〇コに飛び降りする度胸はないって」
「足立のLINE見て顔を青くしてたお前が良く言うよ」
「う――うるさいってのッ!」
「死ぬな――死なないでくれッ! くもはるうううううううううううううううううううッ!」
さっきまで僕と君和田さんがいた辺りが騒がしい。声からしてクラスメイトなのは間違いない。
み、みんな……僕のことを心配して……。
「死ぬのが嫌になった?」
「え――な、なんで?」
潜めた声でそう言ってきた君和田さんに、僕も声量を合わせて聞き返した。
「そういう顔してるから……違う?」
「ち、違うよ! そんなわけない、男に二言はないからね! 今更なにをって感じだよまったく――さ、それよりセックスしようッ! 君和田さん」
「ふふッ、強がっているのが丸わかりだけど……ま、いいわ。それじゃ早速、そこに座って?」
「う、うん」
君和田さんの指示通り、僕は全裸のまま地に腰を下ろした。影があるおかげでお尻に伝わってくる熱もそこまでじゃない。
はあああ――ドキドキしてきたッ! まさか、人生初のセックスがこういう形になるなんて……やっぱり、最初は女性に任せるんじゃなくて男の僕から責めた方が良いのかな? 動画だって大体そうだし……いや、でも女性に責められまくるのもあるし、君和田さんに座れって言われ――――。
「いたッ――――んんんんんッ!」
「静かにして? じゃないと皆にバレちゃうわよ?」
それは突然だった。どちらから責めるのが常識なのか悩んでいる間に、君和田さんは僕の【マイネームイズ雲晴Jr.】を上履きのまま踏みつけてきのだ。
痛い痛い痛い痛い痛い――ただただ痛ああああああああああああいッ⁉
ぐりぐりと【マイネームイズ雲晴Jr.】が虐められる。声を上げて少しでも痛みを和らげたいのに、君和田さんはそれすら許してくれず、僕の口を手で塞ぐ。
「痛い? 痛いでしょう? それはそうよ当然じゃない……痛くしてるんだもの。これが前戯というものよ」
「んんッ――――んんんんッ!」
こんなの前戯もなんでもないッ! と、言葉にしようにもできず、君和田さんは「ん」しか言えない僕を見て意地悪げに笑う。
「こんなのは違うって? ふふッ、確かに一般的ではないかもしれないわね。でも私はこれで興奮するの。ただ男の人を痛めつけているだけで性的興奮を覚えるの」
そう言って君和田さんは空いた方の手で僕の右乳首をつねってくる。
「んんんんんッ」
「僕はMじゃないって? ……残念ながらMどうこうは関係ないの、ごめんなさいね」
「んんん――んんんんんッ!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!
「でもよく考えて? 今はこうして私が責める一方だけど、本番では立場が逆転して足立くんが責めることになるのよ? 憎たらしいくらいに痛めてきた私を「あん♡あん♡」喘がせることができるのよ? そう考えたら逆に興奮してこない? 足立くん」
「んんんんん……ん?」
痛い痛い痛い痛――――確かにッ⁉
「これでもちゃんと感じているのよ…………ちょっと手、貸して」
乳首虐めをやめ、僕の手を取ってきた君和田さんは、その手をスカートの更に奥へと案内して――。
「ほら……〝濡れてる〟でしょ?」
ふぁ、ふぁ――――ふぁああああああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうッ!
指の先から伝わってくる〝彼女の興奮〟に、僕の【マイネームイズ雲晴Jr.】も共鳴する。
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんッ!」
「う、うそッ⁉ な――なにこの力ッ!」
君和田さんの足に踏まれ地に〝頭〟をつけている【マイネームイズ雲晴Jr.】が、バキバキと己を奮い立たせ、起き上がろうとしている。
その姿はチート級の技を放ってきたラスボスを前に屈しかけていた勇者が、世界中の人々の思いを受け取って再び剣を握る……そんな感じだった。
そして――――、
「んんんんんんん――――うらあああああああああああああああああああッ!」
「――キャッ」
【マイネームイズ雲晴Jr.】は見事、上からのしかかる重圧を跳ね返してみせたのだった。
反動で尻もちをついた君和田さんが、驚愕の表情を浮かべて僕を見てくる。
「な、なんて……生命力なの」
彼女が驚くのも無理ない。僕だって半信半疑だ……まさか【マイネームイズ雲晴Jr.】にこれほどまでの力が秘められていたなんて。
僕はゆっくりと立ち上がり、君和田さんを見下ろす。
「さ、攻守交代の時間だよ? 君和田さん。覚悟は……いいかな?」
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