第35話 テイム・モンスター大会(2)

「ハム、自身はあるか?」

「もう、怖いものはないです」

(あれだけボコボコにされたら、誰だって負ける気しないぞ)

「それじゃあ、アップしておこうか」


 今日は、テイム・モンスター大会当日である。

 学校はいつも以上に騒がしく、盛り上がっている。

 オズとハムは、開会式前の30分間のアップに取り組んでいる。


 ドーン!


 バーン!


「やっぱり、バハムートは強いな。ちょっとでも気を抜いたら負けそうだ」

「そんなことはないですよ。私も必死ですから」


 ハムは、オズとの修行によって訛っていた身体が鍛え直され、封印前よりも強くなっていた。

 しかし、オズとの修行の為、ハムは自分はまだまだ元の強さにはなっていないと思っている。

 一方のオズも、自分と同じくらいの実力で勝ち進めるのか不安になっている。

 既に最強のコンビになっているというのに。


「オズー!」

「おう、アリアか。みんなも来てくれたんだな」

「僕とオズ君の活躍を見に来てくれたんだよ!(キラーン)」

「オズ、任せたぁ」

「オズが勝たねぇと、優勝の希望はないからな!」

「それは、どういうことだい⁉ 僕のアウストヴァリリアも勝ち進むよ!(メラメラ)」

「楽しみにしているわ。ハハッ」

「どうして笑うんだい⁉(ギラギラ)」


 ダリアのテイム・モンスターのアウストヴァリリアには、誰も期待していないようだ。

 代わりに、オズのテイム・モンスターであるハムの期待度がとてつもなく高い。

 ダリアは、本気で勝つつもりでいるようだ。


「ハムはどれくらいの実力なの?」

「僕と同じくらいだ。僕には及ばないけど」

「お、オズと同じくらいの強さ……」

(勝ったな)


 ハムの実力を聞いたサーシャとジャックとシェリーは、優勝を確信した。

 このクラス全員、戦いの感覚はおかしくなったが、周りとの差を見る感覚は無事であったようだ。

 オズとアリアは元々、みんなとは違っているので話は変わるが。

 ダリアは、アウストヴァリリアの優勝を信じているようだ。


「それでは、開会式を始めます。皆さん、会場に集まってください」

「時間だね。頑張ってね」

「おう」

「ダリアも期待しているよぉ」

「任せたまえ!(キラーン)」


 そうして、2人は会場へと向かっていく。


「結構な人がいるな」

「まあ、僕が優勝するのだけどね!(キラーン)」


 会場には、総勢100人の出場者がいた。

 客席は、ほぼ全生徒が揃っているようだ。

 それぞれ、自信満々な人や、怯えている人など様々だ。


「ダリア、気づいたか?」

「もちろんさ! あの人は、間違いなく段違いに強いね(キラーン)」

「ラッシュ様ー!」

「フン! 今年も俺の優勝で決まりだろ」



 2人が察するほどのオーラを放つのは、長く黒い髪で目力が強く、整った身なりをしている『ラッシュ』だ。

『ラッシュ』は、この国の王の息子であり、3年生のSクラスで学校のトップである。

 ラッシュは、英才教育を受けてきた為、圧倒的な強さを持っているようで、1年の時から全ての大会で優勝を果たしている実力者だ。


「あいつとは確か、決勝まで当たらなかったよな」

「僕が準決勝で戦って勝つよ!(キラーン)」

「ああ、頑張れ」


 この大会は、トーナメント方式での戦いで、相手が降参するか戦えなくなると勝ちとなる。

 試合場には、障壁バリアが張られている為、会場が壊れる心配はない。


「これより、テイム・モンスター大会を開催します!」

「うおぉぉぉぉ!!!!!!」


 会場が一気に湧き上がる。

 出場者の緊張感が一気に高まる。

 そうして、次々に戦いが始まっていく。


「次は、僕の番だね!(キラーン)」

「こんなブタに負けるかよ!」

「ダリア、頑張れぇ」


 ダリアの対戦相手は、2年生のAクラスの人だ。

 テイム・モンスターはよくわからない人間の様なモンスターだ。

 やはり、アウストヴァリリアは舐められている。


「やってきな、アウストヴァリリア!」

「ブヒー!!!」

「負けるかよ! いけ!」

「あー!!!」


 ドーン!


「どっちだ?」

「俺の勝ちだな!」


 互いに勢いよくぶつかり合った。

 砂埃で結果が見えない。

 相手は自分の勝ちを確信しているようだ。


「ふふ、僕の勝ちだよ(キラーン)」

「ブヒ!」

「ま、マジかよ……」

「おおー! ダリア、勝ちやがった!」


 砂埃が消えると、そこにはドヤ顔をしたアウストヴァリリアがいた。

 なんと、1回戦を突破するとは思われていなかった、アウストヴァリリアが勝ったのだ。


「やるじゃん」

「次は、君の番だよ。オズ君(キラーン)」

「任せときな」

「ダリア、かっこいぃー」


 なぜか、いつものダリアよりも、何十倍もかっこよく見えた。

 順番が来たオズは、準備を始めた。

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