第34話 テイム・モンスター大会 (1)

「1週間後のテイム・モンスター大会について話しましょう」


 サーシャが、みんなの前に立って言った。

 レイとジークの講義が始まってから3か月、クラスのみんなとの仲はだんだんと深まっていった。

 クラスでの決まった役割はないが、サーシャは、真面目な性格なので、前に立って指揮する役割を担っている。


「テイム・モンスター大会? なんだそれ?」

「オズ、知らないの? それはね―」


『テイム・モンスター大会』それは、名前の通りであるが、最強のテイム・モンスターを決める戦いである。

 出場人数に制限は無いが、最終的に勝ち残るのはほとんどがSクラスの人らしい。

 このような大会は、この学校の厳しい実力主義の制度で、上位に上り詰めるチャンスなのである。

 今のオズたちは、1年生の中ではトップだが、2、3年生よりは下という立ち位置だ。

 この大会で優勝することで、この立ち位置が大きく変わる為、生徒全員が必死になって戦うのだ。


「へぇー、そんなのがあるんだな」

「それで、戦闘系のテイム・モンスターを持っている人は?」


 オズとダリアが手を挙げた。

 テイム・モンスターには、バハムートの様な戦いに向いたモンスターだけでなく、回復系の援護をするモンスターや、ただのペットなどがいる。


「それじゃあ、2人にしようと思います」

「ジーク先生に負けたハムで勝てるのか?」

「これから修行したら大丈夫だよぉ」

「仕方ないか」

「ダリアのは、どんな感じなのぉ?」

「出てきな、僕の可愛いアウストヴァリリア!」

「名前、ダサいな」


 ダリアは、自分のテイム・モンスターを召喚した。

 ダリアはかっこいいと思っている名前の評判はあまり良くないようだ。


「ブー」

「……は?」


 クラス全員が、ダリアのテイム・モンスターを見て黙り込んだ。

 なんと、ダリアが戦闘系だと言って召喚したのは、『ブタ』であった。


「これのどこが戦闘系なんですか⁉」

「この子はね、見た目とは違って―」

「ブー!」

「グハッ!」


 ダリアは、アウストヴァリリアに勢いよく突進された。

 その勢いは中級魔法に及ぶ程、かなり強かった。


「こんな感じで、とても強いだろ?(キ、キラーン)」

「私は面白そうだからいいと思うよぉ」

「本気で言っているのですか⁉ 権威が損なわれますよ!」

「オズに勝ってもらえばいいんじゃないの?」

「アリアちゃんの言う通りだぜ!」

「多数なので、仕方がありませんね」


 サーシャ以外は、ダリアのアウストヴァリリアを見たいがために、ダリアの出場を認めた。

 しかし、サーシャもみんなが認めたので、渋々認めた。

 アウストヴァリリアは、『ドヤッ!』と言わんばかりのキメ顔をしている。

 念のために言っておくが、アウストヴァリリアはただのブタだ。

 どこまで勝ち残ることができるだろうか。


「って、僕の責任重くないか?」

「オズなら大丈夫だよ!」


 アリアが眩しい笑顔でオズを見る。

 オズはぞの笑顔を見て、顔を赤くする。


「ま、任せろよ」


 そうして、2人の出場が決定した。



 ◆



「それじゃあ、今からお前を鍛えあげるぞ」

「な、何をするんですか?」

「僕と戦う。1週間しかない。実践が1番手っ取り早いだろ?」

「あ、はい」

(私は生き残れるのか……)


 そうして、オズとハムの修行が始まった。

 ハムは、ジークとの戦いでは生き生きしていたが、オズを目の前にすると怯えてしまうようだ。


「それじゃあ、いくぞー」

「ちょ、待ってくださ―」


 ドガァァン!


「早く立て、時間がないんだ」

「は、はい」

(全力でしないと死んでしまう)


 ハムは速攻でオズに一撃を与えられた。

 死を覚悟したハムは、全力で抗う。


「いいぞ。だが、魔法も使えよ」

「え?」


 ドガァァン!


「お、オズ様、これ以上は……」

「早く。次いくぞ」

「は、はい!」


 ドガァァン!


「次」


 ドガァァン!


「次」


 ドガァァン!


「次」


 …………


 こんなスパルタ修行が1週間続いた。

 ハムは、何度か三途の川を泳いでいたが、何とか生き抜いた。

 そうして、テイム・モンスター大会の日がやってきた。

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