第12話 2人の反省

「ただいまー」

「オズ、遅かったわね。服がボロボロじゃない!今まで何してたの?」

「え、そ、それは……」

「正直に言いなさい!」


 帰りが遅くなったのに加えて、服までボロボロになっていることに気付いた母さんが、オズに圧をかけるように尋ねた。

 母さんの普段と違う話し方に気圧されたオズは、小さな声で質問に答えた。


「う、うん。森に……行ってた」

「森って、獣が出るって言われてる森?」

「うん……」

「嘘言わないの!」

「え?」

「あの森に入って、帰ってきた人は誰もいないのよ? オズの魔法がどれだけ上手でも、あの森からは出られないの」

「え、でも―」

「転んで服がボロボロになったから、こんな嘘ついたんでしょ?」


 母さんは、オズの言ったことが信じられないようだ。

 それもそうだろう。鍛え上げられた冒険者でさえ、一度森に入ると、誰も出てこないのだから。

 まだまだ未熟な子供なら、尚更森から出られるわけがない。

 オズは、早く身体を休めたかったので、母さんに話を合わせることにした。


「ごめんなさい。転んだことを言うのが恥ずかしくて……」

「みんなは騙せても、母さんの目は騙せられないからね。次からはちゃんと素直に言うのよ?」

「うん、わかった。ちょっと疲れたから寝るね」

「身体を洗ってからにしなさいよ」

「わかってる」


 そうして、オズは身体を綺麗にしてからベッドに倒れこんだ。

 オズは目を瞑って、今日の戦いの反省をした。


「あいつ、強かったな」

「魔王の身体だったらもっと楽に戦えたのにな」

「そんなことは言い訳だよな」

「これが今の限界か。もっと修行が必要だな」


 ◆


「ただいまー!」

「アリア、おかえりなさい。それ、どうしたの!?」

「あ、これ? 木登りしてたら、足が滑って落ちちゃったんだー」

「そうだったの。身体は大丈夫なの?」

「うん! 平気だよ!」

「なら良かったわ。気をつけなさいよ」

「はーい!」


 オズとは対照的に、怒られるのを逃れるため、お母さんには嘘をついた。

 アリアは、普段から活発な為、特に怪しまれることなくやり過ごすことができた。


「私、疲れたから寝るねー」

「わかったわ、おやすみ」

「おやすみー」


 そうしてアリアは、服を着替えてベットに横になった。

 オズと同様に、今日の戦いの反省をしていた。


「今日のは本当にまずかったよー。次からは気をつけないとね」

「オズに恥ずかしいところ見せちゃったよ」


 弱点を忘れるという、凡ミスを犯してしまっただけでなく、オズに助けられることになってしまったアリアは、顔を赤らめながら反省していた。


「それにしてもオズ、強かったなー」


 アリアは、回復魔法を使っていたため、途中からオズの戦いぶりを見ていたのだ。


「オズって私よりも断然強いな。私も負けてられないね!」


 今回の戦いでアリアは、オズとの力の差が目に見えてしまったので、さらに修行に力を入れることが決まった。


「そうと決まったら、修行だー! って、いてててー。私の魔法はまだまだだなー」


 修行する為に起き上がろうとしたが、筋肉痛が酷いため、起き上がることが出来なかった。

 回復魔法で回復したが、筋肉痛までは今のアリアでは回復できないようだ。


「仕方ないかー。今日は寝よ」

「それにしても、オズ、かっこよかったなぁ」

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