第11話 オズの本気

「グワーッ!!!」

「遅すぎるんだよ」


 クマ助は、なりふり構わず攻撃してくる。

 オズは、そんな攻撃を簡単に避けていく。


「1撃でも攻撃を受けたら、僕に勝ち目はないな。それに、アリアを回復させる為の魔力も温存しておかないといけない。確実に1撃で倒すしかないな」

「グワーッ!!!」

「それまでは、身体強化を使って素手で戦うしかないか」

身体強化アビライズ


 オズは、攻撃を喰らわないために。そして、魔法を喰らわせる隙を作るために、身体能力を一時的に向上させる魔法を使った。


「まずは、腕からだな」


 ドガァン!


「グ、グワーッ!!!」


 大きな衝撃音と共に、クマ助の叫ぶ声が森に響く。

 オズは、1撃でクマ助の両腕を骨まで壊した。


「次は、足だ」


 ドガァン!


「グ、グワーッ!!!」


 音が響くと共に、クマ助は地面に倒れこんだ。

 クマ助は、手も足も動かず、じたばたしている。


「これで終わらせてやる。光のライト―」

「グワーッ!!!」


 ビュウゥゥン!!!


 オズが魔法を放とうとした瞬間に、クマ助が叫んだ。すると、闇属性魔法がオズの頭目掛けて飛んできた。

 間一髪で避けたオズだが、かすってしまったようで、頬が切れている。


「こいつ、魔法が使えるようになったのか?」

「グワーッ!!!」


 ドガァン!


「お、おい、なんで、なんで立ってんだ? 骨まで完全に砕いたはずだぞ⁉」


 魔法の行く先を見ていたオズが、クマ助の足音を感じて振り返ってみると、立てないはずのクマ助が立っていた。

 クマ助は、傷ついた手足が無かったかのように攻撃を続けてくる。


「闇属性魔法だけでなく、回復魔法まで使えるのか……、厄介だな。それに、アリアのほうが危険になってくるぞ」


 オズは、アリアの身体が危ないことが気になり始めていた。

 回復魔法がある以上、時間が掛かってしまうので、オズは焦りを感じ始めていた。


「ホントにまずいぞ」

回復キュアー……」

「ん? アリア、何か言ったような……」

「グワーッ!!!」


 オズは、アリアが何かを言ったように感じたが、クマ助の攻撃に妨げられてしまった。


「アリアを見ている余裕はなさそうだな。次の1発で決めるしかない」


 そうして、オズはクマ助とは反対の方向へと走り出した。

 クマ助は、無我夢中に追いかけてくる。


「今だ!火炎フレイム!!!」

「グワーッ!!!」


 オズは、一瞬でクマ助の周りを火の海にした。

 クマ助は、身動きが取れずにオドオドしている。

 オズは、地面を強く蹴り、空中へと飛んで魔法を唱えた。


「これで終わりだ。光の雷ライトバース!!!」


 ピカッ


「グガ?」


 ドガァン!!!


 空から光属性魔法が雷のように降る光の雷ライトバースによって、一瞬でクマ助は消え去った。

 しかし、森はどんどん燃え広がっている。


「早く消火しねぇとな。レイン


 レインによって、森に広がる炎は消火された。


「早くアリアのところに行かないとな」


 オズは、急いでアリアの元へ向かった。


「アリア、大丈夫かって、いない……。どこに行ったんだ?」

「隙あり!」


 アリアがいなくなっており、焦っていたオズの背後から突如、声が聞こえてチョップされた。


「いてっ。って大丈夫なのか⁉」

「うん、大丈夫だよ。回復魔法でこのとーり!」


 振り返ってみると、さっきの死にかけていた姿とは一変して、いつも通りの元気なアリアがいた。

 アリアは、いつもの笑顔でオズを見つめる。


「お前、回復魔法使えるのか⁉」

「当たり前じゃん。冒険の基本だよ?」

「はぁ、よかったー」

「あれれ? 私が元気になって嬉しそうだねー」

「ま、まあな。一緒に遊ぶ人がいなくなるからな」

「いつになく素直だねー」

「べ、別にいいだろ!」


 アリアが無事であった事が分かったオズは、思わず笑顔がこぼれた。

 クマ助がいなくなったこともあり、森には少しづつ賑やかになっている。


「みんな、クマ助に怯えてたんだね」

「そのようだな」

「それにしても、オズってめっちゃ強いね! びっくりしたよ!」

「まあな。それにしてもお前、相手の急所も分からずに突っ込んでいくなよな」

「それは……ごめん。ついつい嬉しくなっちゃって」

「気をつけろよ。僕の手間が増えるだろ」

「何それ⁉ 私の心配じゃないの⁉」

「そんなのするだけ無駄だろ」

「ひどいよー。でも……ありがとね。」

「お、おう」


 アリアの可愛らしい感謝の言葉に、オズは思わず照れてしまって返事に困ってしまった。


「へへへー。じゃあ、お家まで競争だね!」

「お、おい! 待てよ! こっちは戦って疲れてんだよ!」

「負けた方が、罰ゲームねー」

「ったく、仕方ないな」


 こうして、2人の子供によって、森が再び賑やかになった。

 もう既に強すぎるの2人だが、今回の戦いに苦戦したこともあり、さらに厳しい修行を始めていた。

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