第3話 人間の心
魔王が人間へと転生してから、1週間が経った。話しを聞いているをここは、『アジサイ村』というらしい。
魔王はこの1週間の間、これからどうしていくかを考えていた。
「1週間考えたが、何も思いつかんぞ! しかも、身体は赤ん坊で心は魔王。辛すぎるぞ」
魔王は、間違えて転生してしまったことに加えて、不便な生活や不安などでとても苛立っていた。
「オズ、ご飯の時間ですよー。食べまちゅか?」
「食べまちゅ!! いただきまーす!」
「いっぱい食べてえらいねー」
「おいしー! バブバブー!」
魔王は、『オズ』と名付けられた。転生したことには不満である本人も名前に関しては気に入っているようだ。
そして、オズとしての唯一の楽しみが『ご飯』なのである。人間のご飯は、魔族のものと比べてはるかにおいしい。そのため、ついつい本能に従ってしまう。
ドンッ!
「急に人の家に上がり込んで、何ですか⁉」
「うるさいんだよ!」
バチンッ、
家に上がり込んできたのは、2人組の男で銃と剣を持っている。まあ、赤ん坊には助けることもできないし、気にしないでおこう。
そう思っていると、1人の男が近づいてきて銃を突き付けられた。
「おい、こいつが殺されたくなかったら、金を出せ!」
「殺されるんだ。ってことは、人間として生きなくていいってことか! おい、早く殺してくれよ」
オズは、これで嫌だった日々から解放されると思い、嬉しがっていた。
しかし、母親は違った。
「止めて! この子だけは、助けてあげて! お金なら出すから!」
「なら、早くしろよ」
「え、お金出さなくていいって」
そうして母親は、お金を持ってきた。
オズは、チャンスを逃したと思っていると、
「すくねぇなぁ。もうねぇのか!」
「すいません。もうないです」
「くそっ、外れかよ。仕方ねえ、このガキでも連れて帰るか」
そう言って、オズを連れ出そうとした時、
「止めてよ! お願いします!」
「掴んでくるんじゃねぇ!」
「お願いします! お願いします!」
「どうしてそこまでするんだ? 人間も魔族みたいに弱いものは、すぐに見捨てるんじゃないのか?」
「鬱陶しいんだよ!」
何度も男たちは母親を殴り続ける。それなのに、何度もオズを取り戻そうと男の足を掴む。
それを見ているオズは、だんだんと心が苦しくなっていく。
「お願いします! お願いします!」
「もういい、黙れ」
グサッ、
「う、うう、オズ……」
男は持っていた剣で母親を刺した。母親は、刺されてもまだ子の名前を呼び続ける。
「どうしてなんだ。どうして、そこまでして守ってくれるんだ? これが、人間なのか?」
「オ……ズ……」
母親は刺されたことよりも、子を失う悲さで名前を呼びながら泣いていた。
それを見たオズは、不思議と怒りと悲しみが込み上げてきた。
「消え去れ」
「ん? このガキ、しゃべったか?」
「
「うわぁぁぁ!!!! 急にいなくなった⁉」
「お前も……消えろ」
気付いた時には、オズはまだ使えないはずの魔法を使っていたし、話していた。
そうして、男たちを倒した。
「ママ、大丈夫⁉ 今、治すから。
オズは、力を使い果たして、その場に倒れてしまった。それもそうだ、泣くことしかできない赤ん坊が高難易度の魔法を何度も使ったのだから。
オズは、自分が何をしたのかは覚えていない。が心の中には温かいものが広がっていた。
「守ってくれてありがとうね。オズ」
母親は、刺されて意識が無かったものの、オズが守ってくれた。なぜかそれだけは間違いないと感じていた。
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