第4話 オズの潜在能力

「なんか身体がだるいな。あれ、強盗の奴らはどこに行ったんだ?」

「オズ、おはよう。朝ごはん食べようね」

「あれ、ママって刺されたんじゃなかったっけ?」

「どうしたの? そんなに不思議そうな顔をして」

「夢だったのかな。まあいつも通りだからいいか」


 オズは、ママが刺されて、男たちに連れて行かれそうになったことは、はっきりと覚えている。しかし、その後どうなったのかが全く覚えていない。


「ごちそうさまでした」

「今日もたくさん食べたわねー」

「よし、寝よう」


 赤ん坊になってからは、よく寝ることが増えたので、全部夢だったのではないかと思っている。

 眠りから目覚めたオズは、パパとママが居ないことを確認した。


「よし、大丈夫だな。じゃあ、今日から始めますか!」


 そう言うと、オズは深呼吸をして、集中力を高める。


「すぅぅ、はぁ、いくぞ。火炎ファイアー!!」


 ポンッ、


「最低魔法でこの威力か。でも、火属性は使えるようだな」


 何をしているのかと言うと、魔法が使えるのかの確認だ。流石にもう魔法が使えるってなると、怪しまれるので、1人の時にしている。


「じゃあ、次だな。水流アクア!!」


 チョロ、


「これはひどいが、2属性使えるぞ」


 同じように氷・風・光・無属性も試してみた。すると、氷と風属性は火、水属性と同様に使え、光、無属性は使えなかったが、練習すれば使えるようになるだろう。

 そして、元得意としていた闇属性に挑戦だ。


「光と無が無理だったから、厳しそうだよな。よし、いくぞ!」


 ビュワン!


 オズが魔力を集中させた瞬間、一気に周りの雰囲気が変わり、空気が張り詰めている。本人は集中しすぎていて、気づいていない。


「闇のブラックアロウ!!」


 ビュウゥゥン!!! ドガァン!!!


「え……これが闇のブラックアロウなのか? 魔王の時より何倍も威力が高いぞ」


 軽く魔力を放出したつもりだったのだが、想像以上の威力が出たので驚いてしまった。普通の闇の矢ブラックアロウは、壁に刺さるくらいの低威力の技だ。しかし、オズの放ったものは、壁をあっけなく貫通させたのである。


「もしかして、この身体は……闇属性が適正なんだな!」


 オズは、慣れ親しんだ闇属性が適正だったので喜んでいる。

 すると、遠くから、ママが走ってきているのが見えた。


「オズー! 大丈夫⁉」

「あ、やばい。寝とこ」


 あんなに強力な魔法が起きたら、急いで来るのは当然だ。

 オズは、魔法の正体が自分だとバレないように、寝たふりをしていた。


「……」

「寝ているのね。無事そうでよかったわ」

「すぅぅー、むにゃむにゃ」


 赤ん坊には寝たふりは、早かったらしく、そのまま眠ってしまった。


「ありゃま。寝てしまったのか。まあいいだろう」


 数時間後に目覚めたオズは、あることを始めた。それは、魔法の強化である。

 闇属性は流石に練習できなさそうなので、ほかの6種類にするのだが。

 魔力の強化方法はとても簡単で、ひたすら魔法を打つ。ただ、それだけだ。

 その理由は、オズがそれ以外の方法を知らないからだ。

 魔力のコントロールは、精神を統一し、魔力の流れを感じて、一点に集めるようにする練習だ。


 魔力の強化は比較的やり易い。だが、コントロールは一筋縄ではなかった。


「スゥー、ハァー。スゥー、ハァー。あ、お尻に違和感が。出ちゃってるな。」


 こんな感じで、何かと落ち着くことが難しいのである。しかし、それでもオズは根気強く練習に取り組んだ。

 全ては、人間としての生活を楽しむためだ。

 もう既にこの感覚こそがズレていることに、オズは気付くはずもない。

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