第5話  出会い

閃光フラッシュ!!」


 ピカッ


「全然眩しくないな。まだ、懐中電灯くらいの明るさしか出せないか」


 魔法の練習を始めてから、半年が経った。威力は少し上がったが、まだまだである。

 しかし、魔王の時の感覚が良かったのか、オズの潜在能力が良かったのか、既に光属性が少しだけ使えるようになっていた。

 これは、オズ自身も驚いている。魔王の時は、使えるようになるまでに1年は掛かったのに、オズは僅か半年で習得したのだから。

 魔法の練習をしていると、ママがやってくる足音が聞こえた。


「やばい、ママが来るぞ。寝たふり作戦だ。スヤスヤ……」

「オズ、広場へお出かけしましょう。今日は、お友達も一緒だからね」

「友達? どんな子だろう」


 オズは、友達が楽しみでニコニコしながら、ママに抱っこされて広場へ行った。

 この村の広場は、中心に大きな噴水があり、周りには、お店が多くある。

 噴水の近くでは、たくさんの人がお話をしたり、子供たちは剣士ごっこをしたりなど、とても賑わっている場所だ。

 オズも何度かママと来ており、お気に入りの場所の1つとなっている。


「エリーゼさん、こんにちは」

「ん、エリーゼって誰のことだ?」

「ああ、どうもテトラさん。こんにちは」

「ママって、エリーゼって言うんだ」


 オズは今まで気にも留めていなかったため、ママの名前を知らなかったのである。

 そして、ママに話しかけてきたのが『テトラ』さんだ。長い銀色の髪で綺麗な顔立ちをしている。ママの次に美人だ。


「その子がオズ君ね。はじめまして。かわいいですねー」

「まあ、可愛いのは当然のことだがな」

「ありがとうございます。アリアちゃん、元気にしてたー? ほらオズ、この子がアリアちゃんよ」

「バブバブ(僕はオズ。よろしく)」

「バブ!(私はアリア、よろしくね!)」


 不思議なものだ。赤ん坊同士だと会話ができるとは。

『アリア』は、ショートカットの銀の髪に綺麗な顔立ちで、母親によく似ている。

 そして、アリアの目は、透き通った空のような色をしており、オズを見て目を輝かせている。

 親同士が話している間、オズとアリアはたくさんおしゃべりをした。


「生まれてちゃんと会話したの初めてだよ」

「私もよ。とってもワクワクしてる!」

「何を話そうか悩むな」

「じゃあ私が質問するね。これからどんな風に生活していきたい?」

「生まれたばっかの赤ん坊の質問か? この世界のこと何も知らないのに、答えられるわけないだろ。」


 オズはアリアの質問に動揺してしまった。

 この世界がどのようなものか全く知らないオズにとっては、とても難しい質問である。でもどうしてアリアは、こんな質問をしたのだろうか。


「まあいいじゃん! 教えてよー」

「まあいいか。僕は、普通の人間と同じような生活がしたい」

「普通ねぇ、前世が普通じゃなかったみたいだね。もしかして、前世は魔王だったりして?」

「そ、そんなわけないだろ。何言ってるんだよ。そんなことより、アリアはどうなんだよ」

「私は、世界の平和を守る勇者になる!」

「す、すごいね。」

「でしょ! 早く大きくなりたいなー」

「でも、なんでそんなこと知ってるの?」

「そ、それは……お母さんが言ってたのよ!」


 アリアは明らかに動揺している。しかも、この世界で魔族のことすら聞かなかったのに、魔王を知っている。

 オズは何か違和感を覚えた。

 アリアの発言は、まるでような感じである。

 オズは問い詰めたかったが、そうすると自分も怪しまれると思って我慢した。


「そうなんだ。僕も知りたいなー」

「だめ、私だけの秘密だから」


 そう言って、アリアはえっへんと言わんばかりのドヤ顔をしてきた。


「じゃあ、そろそろ帰りますか」

「そうですね。今日はありがとう。またお話ししましょう」


 親同士のお話も終わったようで、家へ帰ることになった。


「また会おうじゃないか!」

「何その言い方。じゃあね」

「2人とも仲良くなった様子でよかったわ」


 その日から、お互いがよく会うようになり、仲良くなっていった。

 しかし、オズとアリアはお互いに疑問を持つようになっていた。

 なぜか、『お互いにしか会話ができず、他の赤ん坊とは話せない』と。


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