17:通信士
「どうして通信士にならなかったかって?」
事実、アーサーは翅翼艇を介した通信記術においては同期の――それこそオズにすら追随を許さない成績をたたき出している。通信を専門としている者と比較しても遜色ないかそれ以上の知識と技術を持っているのは間違いない。
しかし、アーサーはむっとした表情を隠しもせず、ちいさな唇を尖らせて言うのだ。
「なれねーからです。オレには本来、軍人になる資格がそもそもない。親父の口利きでもなきゃ、後方支援役でも難しいでしょうよ」
「そういうものなのか?」
「ジーンは知らないでしょうけど、そういうもんなんです」
ぴしゃりと言い切って、話はここまでだとばかりにアーサーは席を立つ。
「……だから、オレは霧航士を選んだんですよ。オレ一人で立つには、それしかないから」
そのしらじらとした横顔は、決然として、けれど同時にどこか哀しげでもあった。
アーサーがこれまで受けてきた仕打ちを私が肩代わりすることはできず、故にアーサーの思いを正しく知ることもない。ただ、その憂いが晴れる日が、この道の先にあってくれればいいと願わずにはいられなかった。我々の行く先に待つのが、――血塗られた道だと、わかっていても。
(霧航士候補生たちの一幕)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます