17:通信士

「どうして通信士にならなかったかって?」

 事実、アーサーは翅翼艇を介した通信記術においては同期の――それこそオズにすら追随を許さない成績をたたき出している。通信を専門としている者と比較しても遜色ないかそれ以上の知識と技術を持っているのは間違いない。

 しかし、アーサーはむっとした表情を隠しもせず、ちいさな唇を尖らせて言うのだ。

「なれねーからです。オレには本来、軍人になる資格がそもそもない。親父の口利きでもなきゃ、後方支援役でも難しいでしょうよ」

「そういうものなのか?」

「ジーンは知らないでしょうけど、そういうもんなんです」

 ぴしゃりと言い切って、話はここまでだとばかりにアーサーは席を立つ。

「……だから、オレは霧航士を選んだんですよ。オレ一人で立つには、それしかないから」

 そのしらじらとした横顔は、決然として、けれど同時にどこか哀しげでもあった。

 アーサーがこれまで受けてきた仕打ちを私が肩代わりすることはできず、故にアーサーの思いを正しく知ることもない。ただ、その憂いが晴れる日が、この道の先にあってくれればいいと願わずにはいられなかった。我々の行く先に待つのが、――血塗られた道だと、わかっていても。

 

(霧航士候補生たちの一幕)

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