第3話 明かりをつけるシーン
指先ひとつですべてが手に入る。
そう教えてくれたのは近所のお姉さんだった。
やさしくて、つよくて、いつだってきれいな人だった。
「ヒーローになりたい!」
そう言い張るわたしの頭をおだやかな手つきで撫でてくれたお姉さん。彼女の手つきは穏やかで、けしてわたしを殴ることをしなかった。
指先ひとつで灯りが落ちる。
彼女はいつだったかわたしをかばって殴られて、ふるいたつ心は折られて戻ってこなかった。
指先ひとつで希望が買える。
彼女の心よ、わたしに宿れ。
そう思いながら、いくつもの夜を越えた。
大人になったわたしは涙を拭いて、ようやく前を向く――今度はわたしの番。
「えいっ」
指先ひとつで笑顔が帰る。
そうしてわたしによって永遠の星が、落ちた。たくさんの光のなかでわたしは笑う。
お姉さんは間違っていなかった。指先ひとつで星が買える。
それはぜったい、しあわせ、だって。
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