幕間 ルディアの夢
ルディアは夢を見ている、ずっと欠けた記憶を追体験のように見ている
真っ赤な空の下、それとは相対的に綺麗な原っぱの上で魔王の娘のシャルルとルディアはぼぉーと遠くを眺めていた
その二人には言葉は無かった、静かな時間が過ぎ去っていた
だけどそれを優しく、静かに壊すように、シャルルは言葉を放つ
「ルディアはさ、親の愛情って分かる?」
そうシャルルはいきなり切り出した
「いきなりどうしたんですか」
ルディアは茶化す訳でもなく、静かに、優しく返事を返す
「私は魔王の娘だったからかな、余り親に育てられた記憶ってないのよね、だから親の愛情ってなんなのかなぁってね」
「愛情ですか…そうですね、何か?と聞かれると困りますね、言語化が難しいですね」
「そうか、ま、どうでもいいか、悪いわね変なことを聞いて」
シャルルの顔は寂しそうだった
親の愛を知らなくても生きてはいける、親からの愛情を受け取らなくても強い人ならば一人で立っていられるだろう、親の愛を知らなくても困ることはない
家族との絆なんてものは人それぞれだ、厚い人もいれば薄い人もいるだろう、それでも生物は繁殖した
世界に生きる生物はそんなもの関係なく結局は一人で生きていく
家族であっても極端に言ってしまえばそれは他人だ
家族という狭いコミュニティーに属している他人
だけど、ルディアは思う
優しさというものには触れて欲しいと思った、家族というものしか与えることができない優しさに触れて欲しいと思った
友達があげるような優しさではなく、本物の優しさに触れて欲しいと思った
ゆっくりとシャルルの手を握る
優しく、優しく、優しく手を握った
「ルディア?」
「私はシャルルさんの本物の家族にはなれません‥‥血縁関係はないので…だけど、シャルルさんが迷惑じゃなければ、私はシャルルさんともっと仲良くなりたいなって思ってます」
「んん?どうゆうこと」
「えっとですね、なんて言えばいいのかな…」
「‥‥そっか…ありがとう」
「え?」
「大丈夫、伝わったから‥‥ふふ、そうねぇこの世界が元に戻ったら王族に来ない?」
「冗談ですよね?」
「さぁどうかしら?もっとも私は余り冗談を言わないわ」
「はは、堅苦しそうですけど、楽しそうですね」
「きっと、楽しいわよ、あぁそうだオーローンは家来にでもしましょうかしら」
「ふふ、もうちょっとオーローンさんに優しくしてくださいよ」
その声を最後にして視界がぼやけていく
声もだんだんと遠くなっていく、ぼやけ、全てが曖昧になっていった
夢はいつかは覚める物
青い空からの日差しが目に入ってくる、その日差しがまぶしいと思いながらどうにかしていつも通りに目を開ける
最近寝泊まりさせてもらっているアルさんの家の天井だった
目から一粒の涙がこぼれた
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