夢を見て空を見る少女5
思考が徐々に覚醒する、夢から現実へと引き戻される
むくりと身体を起こす、お尻にはふかふかな感触がある、私はベットに寝かしつけられていたようだ
周りを見渡すと、アルさんの店の中のようだった、私が夢を見ている間にここまで運んでくれていたようだった
「ありがとうございます、何度も」
「ん、あぁ、別に大したことじゃねぇよ・・とそれよりも大丈夫か?何度呼びかけても起きる気配がなかったが・・」
「はい、大丈夫ですよ」
「そうか・・・・それよりもあの黒い影について知ってることは何かあるか?本当に些細な事でもいいぞ、記憶が無くても全ての記憶が無くなっている訳でもないんだろ?」
黒い影・・・・オーローンさんは何か知っているんでしょうか?・・・それよりも今オーローンさんはどうしてしまったのでしょうか、なんで私の周りにいなかったのでしょうか、私はどうして森なんかで目覚めてしまったのでしょうか・・・・・
私はふるふると頭を振る、考えていたらキリがない、答えの出ない考えなんて考えたって仕方がない
今は黒い影についてですが・・・わかりませんね、何一つとも
アルはこちらの様子を伺っているようだった、私が喋りだすのを待っててくれているのだろう
「すいません、黒い影については何一つも分かりません」
「そうだよなーま、あいつが頼りかな?いや時間が解決するか?どうしたもんか…」
アルはうーんとうなり始めた
あの化け物に対して情報がない、いや原因だけは何となく私でもわかってしまう・・・・・・原因は私なのだろう・・・・アルさんがこんな感じだと以前までは出てきていなかっただろうな、だったら明らかに最初に襲撃された私に原因があるんだろうな
だったらこれからどうなるのだろう
また私は森でお触れたように、紙のように吹き飛ばされ、引きちぎれられ、血が止めどなく、内臓、腸、臓物を外の空気にさらすことになるのだろうか、またバキバキに骨がおられるのだろうか、また息を吸うだけで、全身が激痛に見舞われ、口からは血の塊が・・・・
何度も何度も体の内側から鋭い剣でほじくられるようなあの痛みをもう一度味わなければならないのか
自分の臓物を見て吐いて、血だまりの中に転がるのだろうか
また醜悪なあんな黒い化け物と対峙しなければならないのだろうか
かたかたと私の身体は刻み始める、考えをやめようと思ってもやめられない、何度も何度も何度も嫌な考えは浮かんでくる
怖い・・・・・・・
そんなことを考えていると優しく頭に手が乗った、小さく柔らかい手が・・・でも私よりも大きい手が・・
「心配すんな、最強のアルさんがついているんだぜ?」
屈託のない笑顔を向けて頭をゆっくりとなでてくれた、不安を一つ一つ取り除くように、優しく、優しく・・・
心から何か込み上げてくるものがある、今にも出てきそうだったが、無理やりに抑え込み、私もアルさんに向けて笑顔を向ける、関係ない人を巻き込んでいるんだ、これ以上迷惑なんてかけちゃだめだ
「大丈夫です!すいません、なんか迷惑かけちゃって・・」
「はっ子どもがいちいち細かい事気にすんな、迷惑なんてこれっぽっちも思ってないぜ」
「む、誰が子どもですか!そんなこと言ったらアルさんだってまだまだ子どもじゃないですかー」
「もう子どもじゃないですー立派で美人な魔道具展のお姉さんですー」
「それ、自称じゃないですか」
「ふ!ふ!ふ!ま、私に追いつけるように頑張るのじゃな」
アルはくるりと周り、顔をそむけ、一切ない髭を触るそぶりを見せた、お茶目な動きだった
「あ!逃げましたね!・・・・ふふ」
何か知らないが笑えてきた、さっきまで考えていたことが吹っ飛ぶ、嫌なことも、痛いことも、あぁこの人だったらどうにかしてしまうのだろうと思ってしまった
そしたら無性に笑いが込みあがてくる、先までのやり取りが心地よかったのだろう
私が笑っているとアルもつられて笑らった
二人の笑い声が少しだけ続いた
後から聞いた話だが店の中の人たちは戦闘後には目を覚ましたらしい、それに加え店の中も少しだけ焦げ臭いだけで損害がなかったらしい、というかアルさん本人が店の中で戦うにあたって色々と気を使いながら戦っていたらしい、何とも器用な人だ
あれからまた数日が経過した、依然として黒い化け物に関しては何もわからなかった
いや、分かるはずもない、あのレストランから化け物は出現していないのだから情報が増えないのだ
アルさんはその事について頭を悩ましているようだった、他にも何か目的があるのかもしれないが私のために動いてくれてると思うと嬉しくなってくる
「アルさん!よろしくお願いします」
本を読んでいるアルにルディアが声をかける
「ん、あぁ、もうこんな時間になってたか」
時計の針を見る、その時刻はそろそろ10の数字を指すところだった
「じゃあ今日は…どうするかなぁ」
少しだけ気の抜けた声でアル応えた
私はアルさんに稽古をつけてもらう事になった
今から始めるのは魔術の稽古だ、私はアルさんから家や、食料、知識、沢山の物を貰った、これ以上面倒をかけたくなかったが、アルさんも勘づいているのかあの化け物に狙われているのは私だ
そのため身を守るための魔術を学んでおく事に対して無駄なことなんてないという意見だったので、ありがたく稽古をつけてもらう事にした
「んーー………ふぁ」
アルから小さなあくびがでる
「眠いんですか?」
「んにゃ、眠くはないんだが、如何にも気が抜けてなぁ、今まで家ん中で本読み続けていたからかなぁ、目がしょぼしょぼする」
アルはパチンと指を鳴らした、そのあとすぐにどこからともなく「ポン」とポップな音がなった後にアルの頭の上に帽子が出現する
「さてと・・・いくかぁ」
椅子から立ち上がり気が抜けた声と共に立ち上がり、私の肩に手をかける
「ほいっと」
その次の声も気が抜けた声であった、だがアルが苔を出した後に視界が一瞬だけぐにゃりと歪み、真っ白くホワイトアウトした後にぱっと眩しい光が目に入ってくる
アルはルディアと共に転移した、
今目の前には緑色の台地が広がっている、見渡す限り何もなく、さえぎる障害物なんてものもない、少しだけ冷たいだけど心地の良い風が頬を撫でる、上を見れば真っ青な空、アルさんと外に出かけたときにも見たが、この空は青い、蒼い・・・綺麗な青色だ
私はこの空の色を長々と目に馴染ませる、青色の空を
綺麗な緑色の世界と青色の世界、白色の風、綺麗な世界なんだなと思う、優しい世界が広がっているように感じられた
「あー、じゃあどうしようかな」
軽々と飄々と次の行動を決めようと思考するそぶりを見せる
「決めてから来てないんですね」
「ん~まぁ、人に教えるなんて初めてだしなぁ」
「そうなんですか?なんかもう何人かに教えてると思ってたんですか」
「む、まだまだピチピチの魔術使いだぞ?私そんなに年取ってるようにみえるか?」
「そんなこと言ってないですし、それよりも考えてくださいよ」
強さからなのか、元からもっている器の大きさからなのか、アルさんは滅多なことでは怒らない、・・この数週間過ごしてきて何となく思ってきた
「むぅ・・・・・だったら、てかまぁ基礎らへんとまだ伝えてない所からかな…」
脳内で繰り広げられていた会話が口から洩れたようだった、可愛い人ですね
「よし!じゃあ最初は伝えている所、復習だな、簡単に基礎の基礎から・・・まず魔術には四つの基本的な魔術があってだな」
アルはルディアの目の前に手をだし、ぼおっと淡いゆらゆらと揺れている火を見せる
「これが基本的な魔術の火の魔術・・次に」
ぱっと火の魔術を拳を閉じ消し、もう一度ぱっと手を広げると次は砂の塊が空中に浮いている
「これが土の魔術、そい!」
アルは空中に浮かんでいる土の塊の手を真上に挙げ、ボールを投げるようなモーションと共に土の魔術を繰り出す、土の塊はまっすぐに跳び、どこかに当たるわけでもなく空中で自身の身体を少しずつ少しずつ分離していき、空中で消滅した
「でだ、これが風の魔術」
少しだけ土が残っていたのか、風の魔術によって手のひらで土が渦巻き状に風が生成されているのが可視化されている
数秒維持したのち風の魔術が霧散した、土も風に合わせて地に置いた
「で、だ、最後に水の魔術だ」
そういって今度も水の塊を手の上に生成した、空中に生成した水なのに形を綺麗な球状でブレ一つもなく維持している
「すべての魔術にいえる事なんだが、魔力の入れ方、魔術の詠唱の仕方で形状や威力が変わるってとこがなみそだな」
そういい終えると球状であった水を一瞬で形状が変化する、球状のある一点から水が伸びていき、鋭く弓の矢のように形状が変化を終えた後にひゅんと風の声を出しながら飛んで行った、着弾前に空中に消えた
「ま、こんな感じだな、でこの辺りからルディアに伝えていない部分の話になるが、魔術に関しては得意、不得意があるっていう点だな、この辺りは自身で魔術を使用してみないと分からないが」
「そうなんですね、てっきり誰でも簡単に扱えるものだと・・・」
「ん・・魔術を放つのなら誰でも出来るな、そこから威力やら消費魔力やらが個別っていう話なだけだからな、そうだな、例えば風の魔術が得意で風魔術の消費魔力量が極端に少ない体質の奴がいるっていう話だな、まぁやってみそ、私が一から、魔術の基礎を教えてやるからさ」
「はい!よろしくお願いします!!」
アルはルディアの可愛らしい返事に頬を少しだけ緩めた
「いい返事だな、よし!やるか!まず・・・・・・・」
アルは自身の得意分野の魔術をルディアに教え込み始めた、一人で身を守れるように、一人で戦えるように、一人で困難に打ち勝ってもらうために
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