夢を見て空を見る少女13
ウィルフレッドがバッと右腕を掲げる、そのすぐ後に紫色に輝く
誰も死なせないように私は一歩前に出る、が関係が無かった
ウィルフレッドの右腕の輝きが収まると空中が黒く線を描きながらひび割れる、ひび割れた先を見る前に、自動的に床をなめることになった
パリンとガラスが割れた音が響いたのち空中の重さが変わる、異様に重くなった
二本足で立っていられないぐらいに、身体全体に岩を乗せられている様な感覚に陥った
重力を弄られたようだ
「ぐぅぅぅ」
体から空気が抜けていく、空中に漂っている酸素を身体に入れようとするが上手いこと入らない
「がはぁ!」
「つぅ……」
ツバメは空気を吐き出され苦しそうな声を、ヒイロからは歯を軋む音が聞こえて来る
「どうしたんですか?御三方?……いやはや女性が苦しむ姿というのはなかなか唆るものがありますねぇ」
くすくすと邪悪な笑みを浮かべながら悠々と話し続ける
コツンコツンと重力を操る魔術の影響を受けてないのか優雅な足取りでゆっくりとこちらに歩みを進める
「壊れちゃう?壊しちゃう?暗い真っ暗な教会の下で誰にも見つからずに死んでいく、そんな人生送りたくないですねぇ、ふふ!あっはっはっ!!」
ウィルフレッドの右腕から黒いヘドロがだらりだらりと地面へと向けて粘液を垂らしている
「笑えちゃうねぇ!あっはぁ!」
化け物を召喚したとて私の鎖でいくらでも止められますが・・・重力操作をどうにかしないとこちらから攻撃ができませんね・・・・
「さぁフィナーレですぞぉぉぉぉ!|夢見る悪夢の怪物!さぁさぁ踊り狂え」
床に広がった黒いヘドロからは人型の黒い化け物が二人ぐつぐつと浮き出てくる
その二つの黒い化け物は今まで戦っていた化け物と明らかに姿かたちが異なっている、片方の人型は黒い化け物は黒い甲冑を着込み、黒色の剣を持っていた
もう片方の黒い人形の化け物はガタイが異様に大きい、腕の膨らみや胸板の大きさが通常の人間の比ではない、人間というよりは魔物、怪物と言った方がお似合いだろう
黒い剣を持った化け物と同じように黒い防具に身を包んでいるだか黒い剣を持った黒い人形は聖騎士のような甲冑だがガタイがいい黒い人形は肩や腕などは魔族の魔王のような見たものを畏怖させるような黒い防具に身を包んでいた
ガタイが大きい方の黒い人形はそれまた大きい、自身の身長と同じくらいの禍々しい装飾が施された斧を片手で握っていた
「っう」
声を出すことすら憚れる
明らかに分かる、今までの化け物とは格が違う、威厳、圧力?人としてのその場に立っているだけなのに
体が縮こまってしまう
顔を合わせたら首を刎ねられるそんな予想が……妄想が私の脳内に入り込んでくる、身体が逃げろと声をあげている
何もしてないのに身体が震える
がたがたと音が鳴っていた、歯から音が鳴った
威圧というなの風が私の全身に叩きつけられる
だからその隙をつかれた
風が弾ける音が鳴る
黒い剣を持った化け物がツバメの真横を通り抜ける
「へぇ?」
間抜けな声が聞こえてきた
と同時に生肉が地面を時計回りにくるくると踊り狂う音が聞こえてきた、水の音を乗せながら
ずるずる、くるくるくるとツバメの腕が……
ツバメの血をあたりに撒き散らしながら、腕だけが地面を回転してツバメの身体から身体一つ分離れたところで止まった
ツバメの腕からは残っていた血がどろりどろりと床を埋め尽くさんと溢れたでる
ツバメの身体、腕が切り落とされた箇所からは床にうつ伏せにされているのにも関わらず止めどなく噴水の如く赤い真っ赤などろりとした血が噴出する
止めどなく止めどなく、ツバメの周りが瞬間的に真っ赤になっていく
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ツバメの絶叫が地下の室内に響き渡る
腕すら動かない重さのため残った片腕で血を堰き止めることすら出来ずに重力操作に抗うほどの痛さなのか身体が自然にくの字に曲がる
黒い剣を持った人形は剣を横に薙ぎ払い剣についた血を払う
「ルディア!!」
ヒイロが瞬時に私の名前を呼ぶ
正気に戻れと声が耳にはいる、次の手を打たなければ次は首を落とされるだろう
私は恐怖心を押さえ込む
鎮まれ鎮まれ鎮まれ、動け!
私の右腕から鎖を射出する
「全てを繋ぎ止め、全ての歩みを止める我の鎖!」
一本一本に重さを持たせる、一本一本に気合を入れる、一本でも触れれば止めてみせる、地面に繋ぎ止めて見せる
これ以上、血は流させない
鎖は意思を持った蛇のようにルディアの片腕からスピードを持ちながら射出された
大きく纏まった束が二つに枝分かれし片方は黒い剣を持った人形に、もう片方は黒い斧を持った方へと飛んでいく
鎖は撃ち落されないようにうねりうねりと奇妙な軌跡を描きながら二人を捕まえに行く
ちらりと横目でツバメの様子を見る
未だにに腕からは血が溢れ飛び出している、ツバメの周りが真っ赤に真っ赤に染め上げられていく、ツバメさん自身で問題が解決できていない以上私かヒイロさんで止血しなければ失血死してしまう
早く止血しなければ・・・
止血・・・
だめだ、黒い二人を止めたところで現状維持にしかならない、考えなければここから抜け出す一手を、この場面を打開できる一撃を、ツバメさんを救うためには重力をどうにかしなければ
頭をフルで回す
仮定しましょう、目の前にいるウィルフレッドは本物ではないと
ウィルフレッドはヒイロさんが刺した矢からは出血なども見れない、と考えると本物ではない、どんな魔術を使っているのか皆目見当つかないが本物ではないとだけ仮定すると本物は何処にいるのでしょう
重力魔術、ここまで広範囲かつ無差別ではなく指定の人物を魔術に引っ掛ける・・・
相当な技量がないと扱えない魔術・・周囲に漂っていた魔力を吸い取って魔術を展開していまし、現在二人の黒い人型を召喚しています
魔力と距離の関係性は比例の関係性にあります、展開する魔術の距離が長くなればなるほど魔力量は大きくなる、そのためここまで大規模に魔術を使用しているのならば私の目に入る場所にいると仮定します
だったら物量で探し出す
ここまで考え出した瞬間に地面が揺れガツンという重い音とカーンという金属が重なり合い高い音が室内に響き渡った
黒い剣を持った人型は見事に鎖でぐるぐるに巻かれた後に地面に鎖が潜り込み動けなくなっていたが黒い斧を持った人型は一味違った
全ての、自身に向ってきた鎖を斧の先端で地面に押さえつけていた
現状維持すら許さないですか・・・
黒い剣の人型が一つ身じろぎする、バキバキと嫌な音がする、金属が悲鳴を上げながらひび割れていく
あぁだめだ、あれも数秒も持たないでしょう、だから次のを展開するために自身の能力に意識を注ぐ
自身の心臓に何重にも巻き付いている鎖を一つずつ一つずつゆっくりとゆっくりと解き一つの線になるように全てのものに届くように、繋げられるように鎖を解いていく
そして身体を這わせ、手の中心に集めていく
展開完了、装填完了、射出準備完了
普段なら意識せずに鎖を出しているが今回は量が量だ、一から丁寧に全力で出すためにすべての工程に意識を注ぐ
ふぅーと一息つける
多分二人の黒い人型には同じ技は二度も通用しないだろう、だからここで打開しなければなりませんね
スタートの火ぶたが切って落とされる音が鳴る
黒い剣を持った人型に巻きついていた鎖がバギンと私に聞きたくなかった音を奏でて崩れ落ちる
それと同時に右手にため込んでいた自身の能力を放出する
ルディアの手からは最初に出した鎖の比ではないくらいの量、数十倍の本数が同時に黒い人型達には勿論のことそれに加えて空中を食らい尽くす勢いで展開されていく
黒い人型たちは鎖を難なくそれぞれ斧、剣で、向かってきた鎖を一つ一つ高速で切り落としていくが切り落とされた鎖は切り落とされた個所からまた新たな鎖が伸びる
時間稼ぎをもう少しだけ頑張ってください、私の鎖
空中を喰らいつくす勢いでに広がっていた鎖は至る方向へと真っすぐに飛び回り壁に着弾したのならばカツンという良い音が鳴った後に角度を変え別の方向へと鎖が真っすぐに飛んでいく
それが何十本もの多さで空間を滅茶苦茶に乱雑に大雑把に空間を埋め尽くしていく
鎖をばさりと切り伏せて黒い斧と剣を持った人型が重い足音を響かせゆっくりと私に近づいてきている
私の顔から汗が滴り落ちる
見つけられない、見つからない、黒い人型が凄まじい圧力で近づいてくる、冷や汗が背中を伝う
数秒の世界、一瞬の世界、それなのに私にとっては長く感じ取れた
それも終わり、空中に広がり続けていた鎖が空中で何かに当たり巻き付いた音が聞こえた
「地面に撃ち落せ!」
力を込め、声を響かせる、空中に浮かんでいる何かを地面へと叩きつけるように鎖を操作した
良い音を立てながらその透明な何かは打ち付けられる、奥に突っ立っていたウィルフレッドが瞬時に消えた
その瞬間に重力がふっと軽くなり身体を動かせるようになった
「これで」
ツバメさんを応急処置できる・・・
と私は瞬時に立ち上がりツバメに視線を移す
「ルディア!ツバメよりも真ん前見なさい!」
やらかした
ブンと斧を振るった音、それと同時に視界の端に高速で降り降ろされた剣の残像が見えた
ばっと右腕を突き出し無意識的に、反射的に「緊急防壁」という魔術を展開していた
名前の通り、魔力を使い一定以上の衝撃、斬撃などを全てにおいて受け止めてくれる、防壁
それも軽く破られる、緊急防壁が砕け散りガラスが砕ける音が鳴り響く
それと同時に私の身体がゴムボールのように弾け飛ぶ
「ぶっ……!」
斧によって押し出された空気が口から漏れ出る、それと同時に臓器にダメージが入ったのか血も出た
二度三度バウンドして止まった
緊急防壁である程度威力は抑えられていますが……
素早く立ち上がる、だが違和感があった
右腕が異常なほど熱かった、お腹も熱かった
チラリと目を向ける、そこにはあるはずの右手が無かった、赤い断面、白い一本の棒が覗くことができた、だらりだらり赤い血が溢れ出てくる、止めどなく止まることなく
目をゆっくりとお腹のほうへ向ける
そこにはすでに一回見た光景が広がっていた、ぱっくりと綺麗にそれも深く裂け見るに立てない状況だった
人は自身の臓器は見ることなんてあるんもだろうか?私は二回目でした
「がぁ・・・・・・・・!」
鋭い叫びが口から放たれる
痛みのあまりに膝から崩れ落ちる、立っていられなかった、お腹が焼けるように、永遠に業火に焼かれ続けられているような、鋭く断続した痛みが永遠と・・・・永遠と・・・
あぁああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああああああああああああああ!!
やっば・・いです・・ね
意識を持ち直す、ぎりぎりのところで歯を食いしばる
自身の能力を何回もしているため、アドレナリンも出ているためなのかまだ耐えられる
立ち上がらないと、前の敵をどうにかしない
瞬時に自身の能力を使用する
切り落とされた右手から血が溢れ出ないように、鎖で右腕をきつく縛る
臓物が外に溢れ出ないように隙間なく鎖でふさぎ固定する、自身の能力だからだろうかそれともアドレナリンが出ているためなのか痛さは感じなかった
これでまだ戦えます
痛みによってぐらつく膝でどうにか立ち上がった
「あ」
一言声が漏れた、目の前にはすでに斧と剣が迫ってきていた
黒い人型の剣と斧がもう目の前に、すでに振り下ろされていた
誰にも邪魔などさせない圧力、誰の剣技すらも寄せ付けない最高の一撃
それが放たれていた
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