夢を見て空を見る少女11

こつり、こつり、と三人分の足音が響きながら階段を下っていく、光源に足を照らしてもらっているが階段はまだまだ続くようだ


「いつまで続くんでしょうね~」


ツバメがぼやく


「結構長いですね」


「ま、敵が出てこないだけましでしょ」


ヒイロが言葉を出し切った後、沈黙が訪れる、誰一人として会話を続けようとはしなかった


厳密にいうと続けられなかった


私たちはそこまで中が良いわけではない、会話が続かないのも当然だろう


気まずい、早く降りれないかなぁ




最後の階段を下り終え、目の前を見る


目の前には先ほどの階段とは違い、大きな空間が広がっている、壁にはお洒落な蝋燭立てがいくつも均等に並べられているが、一つも明かりは灯っていない


部屋が全体的に暗いのか気分すらも重くなる、周りを少しばかり探索すると見つけた


私たちが下りてきた階段の少し先にはそれまた大きな扉が鎮座している


下りる前、上の階の教会とは違い、扉の装飾は禍々しく細々とした装飾がなされており今にも悪魔でも出てくるような表現が使われている、手入れも行き届いている、カビが生えている訳でなく、埃も溜まってるわけでもない、塵一つもなく誰かが手入れをしている様子が見受けられる


「いますね、二人とも大丈夫ですか?」


「倒しちゃって風呂でも入りたいわね」


「私は今回の事を早く帰ってまとめたいですね~」


気の抜けた、見当違いの返答、まぁ大丈夫ってことなんでしょう


私は扉に手を掛ける、前方に力を乗せる、扉は大きさの割にすんなりと開いた


扉の先にはまた大きな空間が広がっていた、壁にはいくつも均等に蝋燭立てがあり、蝋燭にも火が灯っており部屋は明るく細部まで見通せるぐらいの明るさは保っていた


大きな空間の中央に膝を地面につき首を下げている人の姿が見えた


その人は私たちが入ってきた事に気づいたのかピクリと身体が動き、ゆっくりと立ち上がる


ヒイロは弓を構え、ツバメは腰にある剣を抜き構えた


私も魔力を回し杖を構える


ゆっくりとゆっくりと部屋の中央にいる人物がくるりとこちらに向き直す


性別が男性、背丈は180ぐらい、黒く長い髪を肩の位置で一つに縛り顔は年なのか少しばかり皺が見え、目はギラリとひん剥いている

身に着けている服は全体的に白いイメージを持つ


そんな男性が口を開く


「お待ちしておりましたぁ、ルデイア様………おはようでしょうか?…こんにちはでしょうか?…それともこんばんはでしょうか?」


男性の目がギョロリと回る


男性の目は空中を眺めている様に感じる、明らかに私たちの事を目に入れていない


「こんばんはですね」


「おぉ、そうですか、そうですか……これは、これはご丁寧にありがとうございます、あぁ今日もまた終わってしまうのですね、いいえ始まるのですよ?

今日が終わったらまた今日が始まるのです、あぁ我が神よ、天啓を我に授けてください、あぁ神よ我に天啓を………下さるのですねぇぇぇぇ……」


パンっと弓が弾けた音が聞こえたのち、男性は頭をすっと、矢を避けるように首を傾けた


その矢は後ろでヒイロが弓を引いた様だった


「敵で間違い無いでしょ?だったら早々に仕留めたほうが早いじゃない?」


ヒイロがそんな事を言う、ツバメは驚愕した様で少し呆然した後に数秒経った後に正気に戻り口を開く


「な、何やってるんですか!?」


「何って弓引いて、矢を放って額にねじこもうと思っただけよ?」


「ダメですよ!それで相手が死んじゃったら話を聞けないじゃ無いですか!情報が暗闇の中ですよ!!」


「狂っている相手にどうやって情報なんか引き出すのよ……」


「何でもです、いくらでも手を使って情報を引き出すんですよ、それが情報屋ってもんで……」


グタグタと言い始めたツバメを他所に男性はにたにたと笑みを浮かべながら話を出す


「あぁ野蛮なお方達ダァ、話を聞かない聞かない聞かない?ダメーじゃ無いか、もっとお話しをしましょうしょう?」


「ほら、お話したがってますよ」


ツバメが冗談混じりに狂人の言葉を借り、ヒイロに言葉を返す


同調しないでください


「オッケーわかったわ、ツバメはあちら側に着いたわ、ルディア、これからは二体二よ、私はあの狂人をルディアはツバメを相手して頂戴ね」


真面目なトーンでヒイロは言う、ツバメをも消し去りそうな気配を醸し出していた


「待って!冗談ですから、真面目にやりますからぁ!」


ツバメも剣を前に構え、戦闘態勢に移る


もう話し合う余裕はない、相手がどんな相手かは知らないが人間において致命傷の傷を追っているのに未だに会話できている点


相手は人間を辞めているかはたまた何かしら使っている、そんな物を相手するのだ、もう余裕を持ちながら相手ができるもんじゃない


狂った男性は未だにぐちぐちと言葉を紡いでる、何かしらのアクションをこちらが取らなければ動かないだろう


「ヒイロさん、ルディアさん、相手から目を離さずに聞いてください、今回の騒動で魔法陣を引いて化け物を召喚していたじゃないですか……召喚する魔術は中々魔力を食うのは二人とも知ってますね?」


「ええ」


「はい」


魔力の消費量は自身の手で行う際の難易度によって決まる、他にもルールはあるが


例えば火を付ける行為は道具が有れば誰にだって簡単にできる、そのため魔術も火を出す魔術は比較的魔力の消費を少なく使える


そのため召喚魔術を使う際の魔力の消費量は他の魔術と比べて召喚するものにもよるが魔力消費量は多い


「それでですね、私はてっきり団体様と相手すると思っていたんですが、これが個人と来た、個人と相手するのは少しばかり予想外でですね、団体だったら召喚魔術も可能と考えますが個人だと少しきついものがあると思うんですよ……ですが、今の彼をみるとそんなものは考えられない、そのため魔力量に関してはアルさん並みだと考えなければなりません」


「でも……」


ヒイロは何かしらツバメの考えを否定しようとするがツバメは口を挟ませない


「ヒイロさんの考えもわかります、そもそも別の人が召喚魔術を使っていたとするとですが、そうだったらそれでいいんじゃないですか?どの道、今、目の前にいる方は最初の狂った挨拶からしてルディアさんの事を認知している感じでしたが………確認ですけど、ルディアさんあの方とは知り合いですか?」


「知りませんね、話したこともないですね」


400年前にも、今の時代にもあんな狂った知り合いはいない


「だそうです、なので、初対面のルディアさんを知っていると言うことは要するに狙っているのは明らかです、敵に関して強く見積もる事に対しては悪い事はないでしょう、なので気を引き締めないと死にますよ〜と忠告だけ、何か今伝えるべき事はありますか?」


狂った男性は相変わらずに動きがない、いや待っている?


微動だにせずに今はこちらをジィーと眺めている


「説明ありがとうございます、特段ないですね」


「無いわね」


「あ、後、殺しちゃ駄目ですからね本当に!」


「はいはい」


ヒイロが面倒くさそうに返事を返した


急造のチーム、どこまで動けるか分からないが息を合わせるしか無い


さぁ始めましょう

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