夢を見て空を見る少女10
ツバメに道案内を頼み、進んでいったところ戦闘がかれこれ10数回、どれも毎回魔法陣が作動し黒い化け物が地面から浮き出てきた、だが毎回同じというわけではない、化け物の数や体の違いなど、少しばかりの差異は見られた
「ここまで敵との戦闘があると少しばかり疲れるわねぇ」
「っは、もう根を上げてるんですかぁ?早いもんですねぇ?」
「ちゅんちゅんうるさいわね、こちとらただのメイドだわ」
確かに敵との遭遇が多すぎる、それに戦闘が起きる感覚もどんどんと短くなっている気がする
「そうですね、流石に多すぎますね・・・」
ここまで戦闘があるのは予想外だった、どこまで私を警戒しているんだか
私たちが踏んでいる魔法陣のトリガーは明らかに私でしょう、私が近くにいるからこそ魔法陣の魔術は発動するように仕掛けてある、それが分かったのは人が多く行きかう大通りでいくつか戦闘があったからからです
ヒイロさん曰く、これまでに黒い化け物の目撃情報はなかったらしい
だからまぁ間違いなく私が魔術のトリガーなんでしょうね
それにしても、本当に多すぎる、いや魔法陣の数が時間が増すごとに増えっていってるって言うこともあるんでしょうか?
私は悩みながらも一歩前へと踏み出す、そこでまた足元が光り輝いた
その色は今までに何回も見た紫色、足元には幾何学模様の魔法陣が展開していく
「ルディア、貴方ってどのくらいの魔術を使えるの?」
ヒイロが弓を構えながら聞いてくる
「一応一通りの魔術は……それがどうしたんですか?」
「そうね……だったら誰も侵入できない壁を立てることも出来るかしら?」
私が使える魔術を思い浮かべる、誰も侵入できるかできないかと言われれば怪しいところだが壁を作ることはできるでしょう
「多分できます、何か策があるんですか?」
「一個だけ、大雑把でガサツだけどね」
「じゃあさっさとやってくださいよ」
「うるさいわね、鳥頭、こんなの使わないに越したことはないのよ、それに使った後どうなるか分からないのよ……ま、最悪冒険者に後始末してもらえればいいでしょうに」
私たちが話している間にも魔法陣は黒い化け物を徐々に足から泥を積み重ねるように召喚している、今回のは中々の大きさのようだ、既に腰が現れているがその大きさは既に2メートルを超えている
腰だけでも既に私の身長をはるかに超えていますね、全体は軽く4メートルは超えるのではないのではないでしょうか?
こんなのを相手にするのはやはり骨が折れちゃいますね
「ツバメ、貴方って私たち2人を運んで飛ぶことってできる?」
「………多分できますね、まぁ?ヒイロさんの体重がよく分からないのでなんとも言えませんが」
少し笑いながらヒイロの事を茶化す
「できるならいいわ、だったら私とルディアを抱えなさい」
「はい、はい、何をやるかは分からないですが」
私を片手で軽々と担ぎ、次にもう片方の手でヒイロの事を担ぐ
「貴方、鳥じゃなくて筋肉ダルマに改名した方がいいんじゃないの?」
「そんな事言ってると降ろしますよ?」
黒い化け物は言い合ってる間もこの世界に生誕すべく身体を積み上げている、既に大方の身体をこの現世に映し出している様な気がする
今にも黒い化け物は動き出しそうだ
「行くわよ、それとルディアは壁を貼る魔術を直ぐに使える様にしときなさい」
さらりとヒイロは私に伝えてきた、何をするのかあらかじめ伝えてほしいがもうそんな時間もないらしい
私は身体に魔力を回し始める、ぐるり、ぐるりと練り上げる
作るは一つの大きな氷の壁、分厚く誰1人も通さない透明な壁
イメージを細かく練り上げる、詠唱は必要ないでしょう・・・
「いつでもいけますよ、ヒイロさん」
私がヒイロさんに声をかけた瞬間に音もなく、動きすらなく、私の目の前の景色が瞬間的に移り変わる
先までは少しだけ大きな路地にいたが、今いるのはまた違う道にいるようだ、目の前で今にも動き出しそうな黒い巨体な化け物は消え去り、目の前の道には化け物の姿なんて一切な普通の道だ、どこにでもある、何もないただの道だった
要するに瞬間移動した様だ
「ここは??」
私は当然のように疑問の声を出す
「いったい何が起こっているんだか・・」
ツバメさんも同じように今起きたことがわかってないようです
「グダグダ言っている暇ないわよ、さっさと壁を張って後ろの建物に入らないと大変なことになるわよ」
ヒイロが言葉を言い終えた瞬間に目の前の光景が魔法陣から溢れ出る紫色があたり一面に広がる、道の地面の至る所の魔法陣から黒い化け物がぽこぽこと浮き出てきている、その大きさはすべてが均等ではない大きい化け物もいれば比較的小さものが複数体出現している魔法陣もある
「ヒイロさんはいったい何をやったんですかぁ」
私とヒイロさんをゆっくりと下ろしながらツバメがぼやく
「何もやってないわよ、ただ起こる事象を引っ張ってきただけよ、それよりも・・・」
「任されているのでしっかりと壁は立てますよ」
杖を前方、私たちと化け物たちを隔てる地点に先端を向ける、私はイメージしたものと魔力を杖から放出させる、すると一瞬で氷の分厚い壁を出現させた
氷の壁はこちらに続く道を天高く止めるほどの大きさを持ち、何重層にも重ねた氷の防壁
化け物がこぞって攻撃しても2~3時間は持つだろう
「さっぶ!」
「あら、中々良いものを作るじゃない」
「それはどうもです、というかここは何処なんですか?」
「ここは何処って、貴方が行きたがっていた、夢想教がある教会じゃないかしら?」
ヒイロは少しだけ疑問を持ちながら言葉を発した
貴方がアクションを起こしたのになぜに疑問形なんですか・・
私は周りを見渡す、後ろにあるものに今気づいた、私の後ろには少しだけ大きな建物が存在していた
その大きな建物は手入れなんてものは数年単位で行われておらず、苔は生え、蔦は絡まり、草木は生え、建物の塗装は剥がれ落ち、塗装されている部分とはがれている部分で二色の建物になっている
周りは雑草も生えている、一か月この国に住んでいるがここまで放置されている場所があるなんて思いもしなかった
「おぉ、本当に着いていますね、一体どうやって?まぁヒイロさんの謎は後々追いかけるとしても、さぶいんで入りませんか?」
さぶい、さぶいと連呼するツバメが言い出した、敵の本拠地前なのに緊張感の一つもない
「はぁ、いいですがこれから戦闘が起きるんですよ、万が一に何かあった場合一応フォローを入れるつもりではあるんですが、回らない可能性だってあります、その場合逃げったってかまわないので自信の命を最優先にしてくださいね?」
「はぁ、ちみっこが何を言ってるのかしら、私よりも年下のあんたに心配される義理はないわ、あくまで私はソフィア様のために動いてるの、危険分子がこの国にいる以上私が動かないと」
「すいませんが、ルディアさん私も不本意ながら隣の人と同じで心配は入りません、私は最後まで情報を得るために戦いますよ」
最後の忠告、黒い化け物と何回か戦って少しでも折れたかと思ったが一切そのような素振りは見えなかった
「わかりました・・・・・では扉を開けますよ」
扉に手をかけ、ゆっくりと開ける、開けた瞬間からは内側から湿った空気とカビているにおいが鼻に入り込んでくる
「うっ」
余りの惨状に声が出る
「うへぇ、こんなところに入るんですか~やーですね~」
後ろからツバメの声が聞こえてくる
そんな空気を我慢しながら一歩教会の中へと踏み出す、当たりは真っ暗で次の一歩を踏みだすことも不可能なくらいに暗かった
「球体よ、その身を輝かせください」
簡単な光の球体を出す魔術を出し、光の魔術であたりを照らす、がやらなければよかった
目にはいいてくるのは光に照らされた空中に浮かんだ埃の数々
次に目に入るのは、ボロボロになった椅子や壁、以前はしっかりとと塗装がなされていたはずが今では見る影もなく、外と同じようにいたるところが剥げ、はがれた塗装が地面に転がっている
雨漏りもしていたのか、床にひかれているカーペットが黒く変色していたり、水溜りが見受けられた
鼻を摘まみながら教会の中へと足を運んだ
ヒイロとツバメも同じように建物の中へと入っていく
「こんなところあったなんてね・・・知らなかったわ」
「王様のメイドなのに知らないんですかぁ?」
「メイドだからよ、貴方メイドって言葉知ってる?行政を担当している訳じゃないのよ?」
はぁこの人たちと来たら、いつでも言い争いを始めますね、本当に・・
私たちは教会の中を別々に捜索に当たる、お互い同じところを探したところで得られる結果が少ないうえに今教会の外はあの黒い化け物で溢れかえっている、予測では2~3時間程度は持つだろうが、やはり時間は惜しい
異変に勘づいた冒険者が対処してくれていればいいんだが
ヒイロさんとツバメさんには私は最初に使った光源の魔術を二人にも使用する、ついでに追尾機能も付け、フリーハンドで探索できるようにする
私は奥へと進み探索をしていた
奥には大きな、とても大きなピアノが鎮座しており、ドアから真っすぐ位置する所に大きな真ん中で拳を重ね合わせ目を閉じている大きな女性の石像が目に入った
心がざわつく、何故か気色が悪い感じがした、その女性の像は笑みを浮かべているように感じた
「ルディアさーん」
数十分経過したところで少し遠くから声を掛けられた、声がした方向を見るとツバメが立っていた
「ルディアさん、何かみつかりました~?」
「いえ、特段目ぼしいものはありませんね」
「ここまで、何もないと空振りましたかねぇ」
「そんなはずは・・・・」
無いとは言い切れない、まずここが敵の本拠地とは限らない、そもそも相手につながるヒントが少なすぎる
「いや、あながち外れって訳でもなさそうよ」
いつの間にか近場にいたヒイロが声をかけてきた
ヒイロはある物陰に隠れていた隅っこを指をさす
あちらに何かあるらしい
私たちがそちらに向かうと、そこにはほかのところと変わらず石でできた床が敷き詰められていた
「?特段何もありませんが・・」
「そうね、何もないように見えるけど・・・」
ヒイロは足で今立っている位置の床を鳴らす、こんこんといい音が鳴る、次に指を指した地点まで移動し足で床を鳴らすと、こんこんと鳴るが少しだけ響きが違う、微妙に音の響き方が違う
「ふむ、なるほどこの下に何かありますね、というか隠しているとなると地下に続く階段とかでしょうか?」
「たぶんね、どうやって開けるか分からないけど」
「ふ~む、分かりました、だったら地下に続くスイッチ探しですね、面白くなってきましたねぇ!」
そんなもたもたやっている時間が惜しいですね
「我が腕よ、其の魔力を使い、光り輝き、全てを断ち切る刃となってください!」
詠唱どおりに私の片腕は光を灯し、刀のような形に変化したのち階段があるであろう位置に腕を振り下ろす
光が真っすぐに振り下ろされ、石を貫通して階段があるであろう位置まで潜り込んだ後、腕を振り上げる
光は役割を終えたように空中に霧散する、そのすぐ後にガゴっという石と石がずれお互いをぶつけ合ったような音が聞こえてくる
光の刃を通した場所が上手く切れたようだ
石は綺麗に一切の凸凹がなく断面が切れている、そしてやはりヒイロの言ったとおりに石の奥から人が一人通れるぐらいの階段が出現した
「ルディアさんそれはちょっとロマンというものがですね・・・」
「まぁいいんじゃない、時間がないんだし」
「それはそうですけど~」
「?さぁ進みましょうか」
ルディアは小首を傾げる
ロマン?というものは分からないがこれで進めるようになりました、時間はまだまだありますね・・・
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