夢を見て空を見る少女7
ツバメの訪問後に私たちは外に出ることにした
ただのお散歩だ、何か不安なことがあるんだったら、空が見えるお天道様の下を歩くべきだ
っていう事でルディアを強引に散歩に連れ出した
「アルさんがお散歩に誘うなんて珍しいですね」
「えぇー、私だって偶には外に出てるだろう?」
「偶にですね、たまに」
ルディアは後ろからとことことついてきて声を発する、白い髪が太陽に充てられより一層に輝く
「私だって外に出たい気分だってあるさ、そんなときに一人で外に出るなんてそんなつまらんことをしてもしょうがないだろう?
二人で喋りながら優雅に歩く、最高じゃないか?」
「まぁ楽しいですけど、いいんですか店のことほったらかして」
「いいんだよ、どーせ来るのなんて知り合いか、ルディア狙いの野郎ぐらいしか来ねぇしな、ほっとけほっとけ」
「アルさんがいいっていうんならいいんですけど・・・・」
最近はルディアが店番を始めてからは客足が急激に増え始めた、というか私がさぼりまくった結果というか、なんというか・・・
まぁ増えたとこは嬉しい事なんだが・・ルディアとおしゃべりに来ている奴らが多い気がする、多少なりとも物品は売れているのだが・・・・ルディアとお喋りしている奴らがなぁ・・
酷い奴は私よりも少し年が高い奴がルディアに恋の相談なんて来ている
まぁ蹴っ飛ばして追い出したが
待てよ、これはあれか、いっその事、相談所なんてどうだ、相談所を作ってお金をとればいい感じに儲かるんじゃないか・・
とかとか考えが脱線し始めたところで、意識を現実に戻す
ルディアの歩幅に合わせながらのんびりと国の中を歩く
少しだけ空を見上げると国の中心には吸血鬼が住む城が見える
鼻を使うと草、木々の自然あふれるにおいに加え、人間が営み生み出す匂いが鼻に伝わってくる、美味しそうなパンのにおいや、肉がこんがりと焼けこんがり肉のにおい、朝っぱらから酒の匂いもする
活気づいている、吸血鬼が横暴な政治をしているわけでない、人が住みやすく、人が笑顔になれるぐらいには穏やかな吸血鬼の国だ
国に住んでいる人たちを眺める
酒を浴びてる人、店で売り物を売ってる人、それを買う人、店の宣伝をする人、物陰からパン屋のある一人の女性を眺めている男性、今にも冒険に行こうとするもの、獣耳を生やした獣人がのんびりと木陰でお昼寝をしている
「のどかな国ですね」
「そうだな、王様とは正反対だな」
「そうなんですか?」
「そうだよ、血の気が盛んな戦闘狂だよ、まぁ頭が切れるようだからここまで国が育ってるがな、少なくともあいつが穏やかな性格な訳がない」
「あー?よく言ってくれてるじゃないか」
ルディアは背後から声を掛けられぎょっとして瞬時に振り返る
声の主の方へ振り返る、今日はめんどくさいのに良く絡まれるなと思いながら挨拶をする
そこには二人いた、一人は後ろから声をかけてきた主人、もう一人は主人の一歩後ろで静かに待機している人物が一人いた
「よぉ、ソフィア、王様の仕事ほっぽり出して散歩かぁ?」
「はは、半ニートには言われたくないな、私以外からの仕事しか取ってないだろう?」
魔道具店なんて開いているが、ま生活ができるほど稼げてはいない、この吸血鬼が言ってるように収入源はこの吸血鬼からだ
「羽振りが良く大変助かってるよ、どうもありがとう」
「はは!そりゃあ良かったよ、とそちらのお嬢さんは?」
「は、初めまして、私はルディアと言います、訳あってアルさんのお家で住まわせてもらってます」
「ご丁寧にどうも、ふむ、何かしら威厳溢れる自己紹介をと思ったが・・・特にないため普通に自己紹介をさせてもらうよ、私はこの国の王様、名をソフィアと申すものだ、まぁ隣の奴から聞いてるとは思うが吸血鬼だ、以後お見知りおきを」
「こんにちはルディア様、私はヒイロと申します、ソフィア様のもとでメイドをしている、ただのメイドです」
アルは苦虫を噛み潰したような顔をする
「どうしたんですか、アルさん?」
ヒイロはアルににこりと笑いながら問う
「いーや、何でもないぜ」
アルはすらりと視線を合わせずに言葉を吐き捨てる、何かにあきれているような言動で
アルはきょろきょろと周りを見渡す
「っと、そういえば妹は今日はどうした?」
「あぁ?あーあの子は城中だよ、どうにも出不精でな、ま気が向いたときに外に出るんじゃないか、なんだ何か用事があったのか」
「んーや特に用事はないんだがな、まぁいたらいたで運動不足だし少々の手合わせをお願いしようかと」
「なんだ、だったら私が手合わせをしてやろうじゃないか」
「やめとくよ、お前とやると大変なことになりそうだし、次の日は絶対に動けなくなる」
「はは、それもそうだな・・・・・引き留めて悪かったな、私たちはもう行くよ」
後ろに静かに立っているヒイロは静かに礼儀正しく頭を少し下げる、本当に良くできたメイドだと少しだけ思ってしまった
「あぁまぁまた何かしら仕事を振ってくれ、適当にこなすからさ」
「そうだな、期待している・・・・・・っと言い忘れていた」
ソフィアはそういうとルディアにゆっくりと近づき前に立つ
「なんとも言えないが‥‥そのなんだ運命は変えられると思うからさ‥‥まぁ頑張れ」
ルディアの頭にぽんぽんとソフィアは頭に手を乗せ優しくなでた、身長はあまり変わらない二人だがやはり年の差だろうかソフィアはやはり落ち着いて見えた
「えっとはい、何かは分かりませんがありがとうございます、それと少しだけ恥ずかしいです」
ソフィアはキョロキョロと周りを見渡す、流石にこの国の王様かつ、ここは人の行き来が多い場所だ、店などない端っこでお喋りをしていても目立つもんは目立つだろう
それにソフィアとルディアの微笑ましい光景を見せられれば目を引くものがあるだろう
ソフィアはその状況を理解し、少し照れながら手を止める
「わ、悪かったね、ま、頑張れ」
きびつを返し、此方を見ずに手を振りながら人混みへとソフィアは消えていく、ヒイロもその後に続いて人混みへと消えていく
「なんか、優しい人でしたね」
「まぁ、なんだしっかりした王様だよ」
「そうですね、しっかりと人を見れる王様なんて珍しいですからね、さてと、アルさん散歩ついでに食材とか買ってもいいですか?」
「あぁ、良いぜ、だったらどこに行く?」
「じゃ、ついてきてください」
私の手をルディアはぎゅっと握ってくる、私も何のためらいもなく握る、握ったのを確認するとルディアは元気よく走り出す
インドア派にはきついぜ、全く!
アルは色々と内心に言葉をこぼしたが、ルディアに引っ張られ帽子が飛ばないようにと片手で抑えながら走るアルの顔は笑顔だった
最近になって評判が上がってきたあるパン屋さんで私たちは買い物を終え、国から少しだけ外れた小さな丘の上、そこに生えている少しだけ大きな木の根元で寝転がっていた、何も下に引かないで寝転がっているため頭やお尻が草木でくすぐったい
「ちょっとくすぐったいでですね」
くすくすと笑いながらルディアが言う、私も釣られて笑う
「あぁそうだな、ちょっとかゆいな」
ルディアは紙袋からごそごそとパン屋で買ったサンドイッチを取り出し、私に渡してきた
それを落ちないようにこぼさないように丁寧に受け取る
「さて、食べましょう?アルさん」
「そうだな、食べるか」
私たちに向かって小さな、小さな髪がふわりと舞い上がりそれと同時に草っぱらのにおいが鼻をくすぐる
その自然現象、自然が与える気持ちよさにルディアと私は目を細める
「気持ちいですねー」
「そうだな、気持ちいな」
静かな時間が刻々と過ぎ去る、黙々と互いの昼食を食べ続けていたが、ある程度食べたところでぽつりとルディアの方が口を開ける
「アルさんはどうして魔術を始めたんですか・・」
「いきなりどうした」
「いえ、少しだけほんの少しだけ疑問に思ったんですよ、現代において冒険者にならなければ魔術なんて初歩ぐらい覚えていれば問題ないじゃないですか・・・・それにこの国は強い人たちに守られていて中々に安全じゃないですか・・・まぁ私が言えたことじゃないですけど・・・」
ルディアは苦笑いをしながら理由を話した
「そんな顔をするな、全く、そうだな・・・」
昔を思い出す、がどうしてだったか原点は案外思い出せないもんだな、ただ思い出せるのは一つある
これは口に出していいのだろうか、まぁ別にいいか、今はなんかそういう気分だ
風が気持ちよく今日は口が開く気分だ
「星だな」
「星ですか?」
「そう、星だよ。星、お星さまだ」
魔法で指先に光る星形をいくつも生成して火花のように飛ばす、指先からいくつもコロンコロンと金平糖のようにあふれ出し、空中を飛んだ後に少し地面へと転がりさらりと砂のように消えた
「綺麗ですね・・それにしても星ですか?星とどのような関係が?」
「星を渡りたかったんだよ、星を渡り歩きたかったから私は魔術を始めたってのがあるな」
「素敵な原点ですね・・」
「そうかぁ?」
「そうですよ、星を渡るなんて綺麗で純粋な理由じゃないですか・・星を渡って何がしたかったんですか?」
小さな透き通った声で聞いてくる、私もルディアにつられ声が少しだけ小さくなる
「星を渡って色んな景色を見たかった、知らない世界、誰も誰一人とも見たことがない景色を私だけが見れる景色を見るため・・・だな」
「本当に・・・素敵な理由ですね、行けたんですか?」
「・・・・内緒だ」
くすくすとルディアに笑って見せる
少しだけルディアに意地悪をして私は食べかけのサンドイッチに手を伸ばし口に運ぶ
今日は本当にいい天気だ
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