夢を見て空を見る少女3

席に座り店のメニューを見始める、メニューを見る限り別段珍しいものがあるわけではなくどこにでもあるちょっとお高い普通の肉料理だった


店の中は焼けたお肉の匂いが充満していてお腹がいい具合に空いてくる、皿とナイフが重なり甲高い音や皆が談笑をしている声が聞こえてくる他にはのんきに寝ている奴なんている


ただ少しだけ違和感がある、何かがおかしいかった、何処が?と言われるとすぐには答えが出せない、だがそれでも何かしらの違和感がアルの胸を敷き詰めていく


「いやーどれもこれもおいしそうですね!どれにしようかな」


「そうだな、さて私は何にしようかな」


あーでもない、こーでもないとうんうんとうなっているルディアだった、かわいらしい


「そんな悩むことか?なにか抜段飛びぬけた料理があるわけではないんだし」


「そーなんですけどね、だけどどれもこれも美味しそうですもん、悩んじゃいますよ」


「私は決めたっと決まったら言ってくれ店員に声かけるからな」


「はーい」


元気よく返事をするルディアであった


その後もう一度周りを見渡す、先ほど抱いた違和感を拭い、理解するために、


店の中をもう一度見渡す真夜中も近いからか飲んでいる奴がいる、寝ている奴がいる、カップルや老夫婦が静かに談笑している、ルディアは黙々とメニューを見ている、肉を料理をしている店員があくびをした


店の中のを見渡していると誰も目を向けないような片隅がなぜか薄暗くなっていた、本当に端っこである、観葉植物でも置いてあるような隅っこが目を凝らしても真っ暗なのだ


何かの間違いではないかと目を疑い自身の目をこすった後にもう一度同じ場所に目を向ける


店の片隅が明らかに暗くなっている、夕日が差し込んでいるのに黒く、音もなく、気配もなく静かに黒くなっていた


「あのーおーいアルさん?どうしたんですか、注文しないんですかー?」


「あぁ……少しだけ待ってくれ」


私の言動においてルディアは首をかしげる、いきなり訳の分からないことを言われたのだ、当たり前の反応だ


ただルディアは私の言葉を聞きしっかりと待っている、いい子だ


ルディアと会話したほんの数秒だけ目を離しただけだった、「それ」はなぜかすでにたたずんでいた


「それ」は明らかに殺意をこちらに向けていたが周りの人間は気付いていない、気配がなく、音もなく、息遣いなんてものもなく店の一角、そこにいた


「それ」は全身が黒かった、真っ黒だ夕日に照らされているがその明かりすら飲み込んでしまうほどの黒を持っていた、そして世界との境界があやふやである、輪郭がぼやけている、ただ目に当たる部分には赤いぽっちが見え、片側に腕が二本、もう片側には腕が三本ついていた


ゆらりゆらりと黒い靄は右へ左へと動いていた、腕もそれに合わせてゆらりゆらりと動いている


目が合っている、「それ」は笑った、ただ音などは立てていない、だが確かに笑ったような気がした


ルディアは気付かない、ちょうどルディアの視界から外れている


小さく魔法を唱える、「それ」に耳などの外の音を聞くための機関が存在しているのかは不明であるが聞かれないのならどちらでもいい


「ど、どうしたんですか?い、いきなり」


魔法を唱えている最中、喋れない私は一つルディアに分かるように指をさす


ルディアはゆっくりと確認するように指をさした方向に目を向ける、目を向けたところ体が震えだす


「なんで…なんで…」


ルディアは言葉を漏らす、声を漏らす


「なんで‥‥どうして」


私は詠唱をしていて言葉を発せられないが身体は動かすことはできる


ゆっくりとゆっくりとルディアを落ち着かせるように頭を撫でた


かたかたかたと揺れていた、恐怖で彼女の身体は揺れていた


「大丈夫だよ」と伝わる様に私は撫でた




魔法を唱え終わる、魔法が唱え終わった頃に空中に一本の剣が剣先から徐々に表れる


剣の全貌が全て現れ、私は剣の柄をつかむ


剣の重さを確かめるため横に一振り、ぶんと空気を切り裂くいい音が鳴る、剣に体が持っていかれないほどの重さであり敵を斬るのに必要な重さを持っている


もう一つだけ簡単な魔法を唱える「雷の魔法」対象は剣


自身の魔法が加えられ剣が稲妻を纏う、バチバチと剣が音を出している


私が様々な準備をしている中で「それ」は一歩も動かず佇んでいた


あの化け物は何をしているんだ?それよか少し静かすぎないか?と思い私は周りを見渡す、談笑していた老夫婦や男女は顔が項垂れていいて会話がない、他には料理を作っていた店員は床に転がっている


他にも寝ていたり、転がっていたり、寝ていたりと皆が揃って様々な寝息を立てている


この現状を見ている者はルディアとアルしかいなかった


要するにルディアとアル以外は皆夢の中にいるようだ、羨ましい奴らめ


「さぁてとなんで私だけが起きているなかが分からないが・・最高の魔術を見せてあげようじゃないか」


「だ、大丈夫ですかほんとに・・」


怯えたウサギみたいな状態聞いてくる、なんて顔をしてるんだか


「あぁ。私はなんたって魔道具店の魔術使いのアルさんなんだぜ?」


私はルディアに向かって一つウインクを見せる


「はぁ‥‥なにが大丈夫なのかさっぱりわかりませんが頑張ってください」


ルディアは無理をして笑顔を作っていた


だからかっこよく勝ってやろうという気になってくる


私もルディアに笑顔を向けた、一言「任せておけ」と声をかけ、前を向いた




さて・・化け物は一向に動かないし何か理由でもあるのか?私を眠らせようとでもしてるのか?


なんだ私が眠るのを待っているのかそれにしてもだ、目の前にいる化け物が店の中の人たちを眠らせたのか?それとももっと他に原因でもあるのだろうか・・ま、これに関しては考えても仕方ない


アルは一つ指を鳴らした、パチンという音が鳴ると同時に机は壁際に寄せられ、寝ている人たちは壁にもたれ掛かる様に瞬間移動させる


これで被害は格段に抑えられる、私が多少暴れても問題ないだろう


「ほら!化け物!リングは作ってやったぜ?さぁ始めようや」


だが化け物は動かなかった


アルは一言「はぁ」とため息をついた後、先に動き出す、チリチリと稲妻を纏った剣を持ちながら、消える、物理的に消える、瞬間的に消えた


そして消えた時と同時刻に化け物の腰あたりにアルは突如、音もなく出現し、アルは同時に斜め上に向けて剣を振るった


空間の連続性を無視して跳躍する、私の特技の一つの魔法「空間の連続性の否定」


「っつ!」


渾身の一振りだが寸前のところで避けられる、もう一度「空間の連続性の否定」を使い、化け者から距離を取る


「どういうこった、背中に目玉でもついてんのかよ」


化け物は前傾姿勢になり動こうとしている所、化け物の足元を魔法「氷」で瞬時に固める


瞬間的に化け物の片足は見事に分厚い氷で覆われ、地面と離れなくなるが化け物はすぐさま足を切り落とし五本の腕を器用に使いこちらに突っ込んでくる


「んな!」


アホかこいつ、何者なんだよ!一体!


同様にアルも化け物に向かって突っ込み剣を振るう


だが化け物は片足が欠けているのにも関わらず完璧なバランス感覚でアルの一つ一つの剣捌きを五本ある腕で全て弾き、最終的には鍔迫り合いの形になる


「わお」


「kuraxaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」


全て攻撃を防いだ化け物は雄たけびを上げる、自信を鼓舞するためか、はたまた全ての「攻撃を防いでやったぞ」というような雄たけびだったのだろうか


どちらでもいい


アルは瞬時に「空間の連続性の否定」を使用する


鍔迫り合いの形になっていたものが解かれ、アルは化けの物の背後へと飛び、もう一度、剣で斬りつける


だが化け物は背後から迫ってくる剣を目などを一切向けずに腕だけで防ぐ


もう一度「空間の連続性の否定」で今度は化け物の真上、空中に出現する


そして真上から剣を自身の体重を全て乗せて振り下げる、だがやはり、化け物は完璧に傷を付けずに完璧に防ぐ


アルはまた「空間の連続性の否定」で飛び、死角になっている場所から剣を振るうが、見えていないにも関わらず剣を受け止める


アルは懲りずに「空間の連続性の否定」を使い剣を打ち込む、化け物はそれを完璧に防ぐ、その攻防を数回続けた


だがやはり、アルは空中、足元、頭上と「空間の連続性の否定」で飛び剣を一発でも入れようとするが全てを防ぎ切る


だぁしょうがない!床傷つくかもしれないけど、ごめんなさい!!後で直す!


アルは一度「空間の連続性の否定」で十分な距離を取る




距離を取ったが化け物はそんなのお構いなしに詰めてくる


んな、早すぎるだろ…別に良いが


私は瞬時に魔法「地」「風」「空間の連続性の否定」を意識し魔法を放てるようにする


射出 化け物めがけて 数 数十本 形状 剣 


魔法「地」は1秒にも満たない間で自身の魔力から鉄を生成、形状変化を経て剣を空中で何十本も作り出す


「いっけ!」


魔法「風」で空気を操り剣の柄を風の力で押し出し高速で飛ばす、このままだとまっすぐにしか飛ばないため「空間の連続性の否定」によって化け物の頭上に剣を跳躍させた


何もない空中から化け物に向かい剣が降り注ぐ


それは弾丸だった、化け物が腕で防ごうとするがそれすらも貫き、本体の化け物を貫き、地面をも貫いた


怪物は剣によって身動きが完全に取れなくなる


だが化け物はそれでも動き続ける、自身の傷みなんてものは感じていないかのように身体が幾ら傷つこうがそれすらも無視をして剣の折から逃げ出そうと身体を動かした


「はー…やっぱりこいつ痛覚とかないんだな」


改めて生物ではないことを実感する


痛覚がない生物もいるだろうが、大抵の生物ならば痛覚を持っているだろう、ということはだ、痛覚を必要としない理由がそこにあると考えられる、ルドとの会話で未知である話をしたがこう考える事もできる


痛みを得ても止まらずに成し遂げるために痛みを除いた存在


戦闘のために作られた存在である


ま、相手がどんな奴かは分からないからな、何処まで行っても仮定の話だが



くだらないことを考えるのを止め、一つ笑みを浮かべた後


アルは目を鋭く開く、自身が持っている剣に魔法「雷」を使い、先と同じように剣にバチバチと電流が流れ始める


アルが試すように右に剣を振るうだけで轟音が鳴り響く、その音はまさしく雷といっても過言ではない


ばちばちと剣を雷で鳴らしながら、かつんかつんと木材の床を歩みつつ化け物に近づいていく


「てめぇに主人でもいるんだったら伝えておくんだな、首洗って待ってろってな」


動けない化け物の横っ腹に剣を突き刺さる、その瞬間に魔法「雷」が猛威を振るった


化け物は魔法「雷」によって剣が雷を纏いまばゆい光を放ったあと、化け物は感電し、身体を焼け切られながら焦げ臭いにおいを放つ


化け物は言葉にならない咆哮を放った、その咆哮には知性の欠片すら見受けられない


「消え去りやがれ」


化け物は最後の電撃によって膨らみ、爆散した


化け物だったものが爆散し空中にひらひらと雪のように粉が舞っている、化け物を拘束するための剣は役目を終えたのを理解しているのか順々に剣の柄から光の白の粒子となり綺麗に空中に霧散していく


化け物と剣、黒と白い粒子は空中をゆらゆらと冬の雪のように地面へとゆっくりとゆっくりと落ちていく、それはそれは幻想的な空間が出来上がっていた

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