夢を見て空を見る少女2

ルドは紅茶を飲み終えてゆっくりと立ち上がる


「さぁてと、やることやったし私はいったん家に帰るわね、それと、この子のことあんたに任せていい?私よりもあんたの方が安全だろうし」


まぁ私の方が色々とできるしな、家に送り返すぐらいだったら別に構わないだろう


「ん、了解した、きぃつけてな」


「わかってるわよ」


ルドが扉に手をかけた後こちらを見ないで声をかけてくる、ただその雰囲気は明るいものではなく、ルドからは何か重い雰囲気を感じ取れた


「ねぇ何かすこーしだけ嫌な予感がするわ、ま、あんたも気をつけなさいね」


そう言い静かに扉を開け、化け物が出たという危ない森の中にある自身の家に帰っていった


「さて、お前も家に帰れるよな?家までなら送って行ってやらないこともないぜ」


私は少女に優しく声をかける


少女は寝かしつけていたベットの上で紅茶をゆっくりと飲んでいたが声を掛けられティーカップを静かに置きこちらに向き直す


「え~あー………と帰れないです」


少女は目線下げる、何か不安なことでもあるのだろうか


「なんでだ?おまえも森に棲んでるのか?」


内心まさかなと思いつつ口に出す


もし森に棲んでいたのならまぁ腹を裂かれた化け物がいる森になんて帰りたくない気持ちも分からないわけではない、だがあの森は日の日差し一つも入らない真っ暗な森だ、あんな場所に住むなんてルドくらいの化け物ぐらいだ


まずないだろう


「えっと、ですね……なんといえばいいか、家がないって言えばいいですかね…家族がいないっていうかどうしたものかっていうか」


不安な顔、思案している顔、寂しいそうな顔、恐怖している顔、今のこの子の表情から読み取れる情報だった、以前の記憶がフラッシュバックする、見たことがある、この子に手を差し伸ばしてみたくなった、手助けをしたくなった


「家がないって?ふぅむ……」


さてどうしたものか……家がなくなるってどうゆうことだ?この吸血鬼の国に住んでいれば家が跡形もなく消し去るなんてないんだが・・・・・・


ルドにこの子のことを頼まれているし・・何か私の勘がこの子は何かしら関係しているって言っている、それを踏まえて……


私はこの子に一つ提案をする


「だったら・・・・お前が嫌じゃなければここに住むか?」


「え!?いいんですか?」


「あぁだがまぁ色々と手伝ってもらうがな、それが条件だ、それでお前もタダで住まわせてもらってるとかいう罪悪感とかなくなるだろ?」


「あ、ありがとうございます、でも本当にいいんですか?」


「ん、まぁ別段気にしないぜ……じゃあ、まず一つ教えてくれ、お前の名前はなんでいうんだ?」


「私の名前は……ルディアです!これからよろしくお願いします!」


瞳を輝かして大きな化け物の恐怖など既に感じてないかの様子で元気良く満面の笑顔でお願いしてきた


「よろしくな」


私もその笑顔に釣られて笑顔で返す、かわいい子からの純粋な笑顔は心がほっこりとする


少しだけ不思議な彼女との共同生活が幕を開けた






あれから数週間が経ち身体の傷が完全に癒え、動けるようになったルディアに一つ、家の仕事を任せることにした


「んじゃあまずは…ほい」


私は壁にかけてあったホウキに手をかけそのホウキを投げ渡す


「はっ…はい……中々重いんですね」


しみじみとホウキを持ちながらルディアは言葉をこぼした


ホウキを持ちながら部屋の中の埃を一か所に集め始めた、隅々まで綺麗にルディアは几帳面な性格のようだ


黙々とただ黙々と


「アルさんは私の事を聞かないんですか?」


こちらを向かず、自分のなすべき事をしながらルディアは聞いてきた


「あぁ?何だ聞いて欲しいのか?」


「いえ、不思議に思っただけです」


「そうか・・・まぁ別に気になるっちゃあ気になるけど、別に聞くほどでもないだろ」


「いやーまぁその配慮に関してはありがたいんですが・・・ま、隠しておいても仕方がないので……そのなんていうか私ほぼほぼ記憶ないんですよね」


クスクスクスと軽くルディアは笑った


記憶がない?


「それはどういう?」


「言葉通りの意味ですよ、記憶が無いんです、私は森から生まれたようなもんです・‥‥現状今は記憶が無い事で何かしら不便になったりとかは無いんで特段気にしてませんが…」


「………んな、馬鹿な」


「冗談で済めば良かったんですけどね‥‥‥‥っと、掃除続けちゃいますね」


記憶が無い、私の技量でどうにかできるのかもしれないが、頭を弄るとなると気が引ける、もしも失敗した際には取り返しがつかないことが容易に想像がつく‥‥


だから迂闊には手は出せない


だが日常に支障をきたすほどの記憶喪失ではない、彼女が、ルディアの周りの記憶が無くなっていると考えると何かの弾みで思い出すのではないだろうか?


「‥‥‥‥‥あぁ、じゃあ、まぁ、掃除を済ませてくれ、それと記憶は私の方でも考えてみるからな」


「はーい」


ルディアは暢気な声で言葉を返した


彼女の本心はいまいち掴めないが特段落ち込んでいる様子にも見えなかった


アルは考える、自然に治るのを待つしか無くない?と


これ以上考えても同じ結果しか出なさそうなため、アルはルドやルディアが来る前に読んでいた本を取り出し、コーヒーを淹れ、静かに集中して読み始めた




「アルさん…アルさん!聞こえてますかー」


集中しすぎてルディアが喋りかけているのを無視してしまっていたようだ


「うぉなんだ、何かあったのか」


机の上に本を置き、目を上げる、そこには少し頭や服に埃が付着していて全体的に小汚くなっているルディアがいた


「アルさんー掃除とかってあんまりやらないんですか?・・叩けば叩くほど至る所から埃がでできたんですけどーもう!」


「ま、まぁ見えるところはやってると思うけど………」


申し訳なくなりルディアから目をそらす


私自身、埃が目につくほどでてきたのなら箒を出してきれいに部屋の掃除を始めるのだが、どうしても手が届かないところとかはやらない


めんどくさいからだ


ルディアに思いのほか大変な労働を課してしまったらしく、この話を続けると自身の良心がゴリゴリと削れる、そのため私は話を変えようと時計を見る


そこにはちょうど夕飯時の時間を針がさしていた


「ちょうどいい時間だな、なぁ腹すいてないか?」


「ええ…まぁ…?ぼちぼち?」


「だったら何かうまいもんでも食いに行こうぜ」


その言葉を聞いてルディアはぱぁと明るい顔を見せる


「いいんですか!!」


「いいとも!見て回ってうまいもん探しに行こうぜ」


「はい!」


私たちは外に出る準備を始めた、ただ私がパチンと指を一つ鳴らせば準備は完了する、先まで埃をかぶっていたルディアは一瞬で元の綺麗な埃一つ被っていない身体となり、服も同様に塵一つなく掃除をする前の綺麗さとなっている


私の服装も外出用に切り替わっている、手元には帽子やらお金が入っているバックがある


「よっしゃ行こうぜ」


「はい!行きましょう!行きましょう!」


からんからんとドアのベルが鳴り、アルとルディアはお昼の町へと歩を進めた



少し肌寒い夜の街に繰り出した、夜の街は賑やかであり、店前で店員が美味しそうな匂いとともに客引きをしている、その客引きの声と店から漂う美味しそうな香りにルディアは目を奪われている


「どの店もおいしそうですねー」


「ここら辺は飲食店街だしな、それにここら辺の立地はなんだかんだ高いし、おいしくなけりゃやっていけないからどこの店に入ってもハズレはないと思うぞ」


「そうなんですねー、どれにしようかな………」


色とりどりに装飾をされ、店の目玉商品が店前に飾られているのを見てルディアはこれかな?いいややっぱこっちがいいかなと店を行ったり来たり、はたまた少し歩きだしてこれかな?これにしよかなと独り言を呟きながらあっちへこっちへと迷走している


私はおとなしくじっくり選んでいるルディアを待つことにした


選んでいる彼女は常に笑顔だった


「どれがいいですかね!みんなおいしそうで決められないですよ!」


「なんだ?ルディア、そうだなだったら好物とかはどうだ?」


「好物ですか…私の好物ってなると、そうですね‥そういう選択肢もありですね」


「ま、ちょっと冒険をしてみてもいいかもな、新しい発見があるかもしれない!」


「冒険!素敵な響きですね!冒険、いいですね!いいですね!じゅるり」


「悩むよなぁ、この辺りは本当に美味しいものしかないからな、私も毎度悩む」


「どうしましょう‥‥‥‥‥‥‥‥よし、直感でこれにします!!」


選んだのは少しお高いステーキ店だった、小柄な体だが成長盛りに加え、掃除という名の大運動をした後だ、やはり体が肉を欲しているのか・・まぁこんなことを考えても仕方ないな


「決まったか?だったらさっさと入ろうぜ!」


「はい!」


ルディアは満面の笑みであった、銀髪が明るい太陽に照らされて満ルディアの明るい笑顔につられるように明るく輝いているのであった、そして私は明るい奴だなと思い


私も笑顔を返した

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