第4話 次の日
次の日会社に行くと、派遣のAさんはやっぱり来ていなかった。
健康上の理由で辞めたそうだ。
女子社員からは、「妊娠したんじゃ?」と言われていた。
それまで派遣に頼んでいた仕事をやる人がいなくなったから、社員が分担しなくてはいけなくなってしまった。急いで派遣会社に別の人を面接に来させるように頼んだ。次はもう俺は面接に入らない・・・。俺が選んだ人はいつもろくでもない女ばかりだ。
いや、そうじゃない。その時、俺はもう死んでるんだ。
俺は引き継ぎ書を作ることに決めた。
仕事の合間に、最低限の引継ぎ事項をレポートにまとめた。
気が付いたら夜11時くらいだった。
まずかったと思う。夜遅いと駅前も人通りが途切れる・・・。
会社の近くのホテルに泊まろうか?
いや・・・金がもったいない。
俺はもう殺害される運命なんだ。
諦めて家路についた。
電車の中で、例のしょうもない官能小説をまた読み始める。
女の体に夢中になっている男は、妻が嫌がって体を固くしていることさえも興奮の材料だった。耳に息を吹きかけて、彼女の緊張をほぐす。そこは妻の最も敏感な箇所だった。妻は「あっ」と喘ぎ声をあげて、思わず緊張を緩めた瞬間、男は自分の指を・・・。
この人は、ポルノを書きたいんじゃないかと思った。
でも、旦那は奥さんしか知らないらしい。
だから、彼女にとっては物足りなかったんだ。
そんな奴にポルノを書くのは無理だろうと思う。
こういう人は真面目なんじゃなくて、臆病なんだ。もっと女と遊びたいけど勇気がない。俺は、彼のたった一人の女を手玉に取っているんだから、殊の外、恨まれているだろう。
駅の改札には誰もいない。
あ~!!よかった!
きっともう家に帰ったんだ。
走って家に帰れば、車で撥ねるチャンスもないだろう。
俺はかなり足が速い。
陸上部の人より足が速かった。
でも、興味がないから本格的にやらなかったけど。中学の時は試合だけ出て、400m短距離で市内で2位になったこともある。
俺は試合の時よりも、本気を出して家まで走った。
歩いている人はほとんどいない。
むしろ好都合だ。
誰もいない道をスーツ姿で、全力で駆け抜ける。
あとわずかで家・・・俺は気が緩んだ瞬間。
後ろから頭を殴られた。
俺はそのまま気を失ってしまった。
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