第43話 無視してないよ?

「美香、イブそんな先に行くなよー。」

「美香ちゃーん、イブさーん待ってぇ〜」

俺と優奈は敵陣の中取り残されていた。

俺長期戦に向かないんだけど。

優奈の方を見ると凄い事になっていた。


ルーン兵の精鋭と思われる兵を「キャー」とか言いながら素手で殴っている。

殴った敵は一瞬首が逆になったかと思ったが、元に戻って地面に叩きつけられている。

ルーン兵はみんな骨が折れたりしているが、すぐ治って気絶している。

実は優奈は回復をしながら殴っていた。

これで殺さずにルーン兵を次々倒していた。


死なないけど、死ぬほどの苦痛のため皆気絶していく。

たまに一撃じゃ倒れないやつがいる。5発の拳とトドメの蹴りで倒れている。

隊長らしいが、強ければ強いほど地獄の苦しみの末

気絶することになる。


かわいそうに。


これは優奈オリジナルの格闘技『悶絶拳』と名付けよう。

一撃食らえば骨は確実に折れ。盾で防げば盾事腕がやられる。


うん。敵がかわいそすぎる。


俺はそんな優奈の後ろをひっそり隠れて進んでいった。

ようやく、イブと美香のところに辿り着いたのだが、

イブの目と言動がおかしい。

あれは本気モードのイブさんですよね。

「あ〜ん。もっと、もっと激しく。」

イブはルーン兵が多い場所に向かい蹂躙している。

モーゼが海を割るように人の海に穴が空く。

うん。もうシラネ。

見なかったことにしよう。


戦場は、イブ、美香、優奈の三人により大混乱している。

三人を止めれる者は誰もおらず、ルーン兵はただ逃げ惑うばかりだった。


よく見ると美香が偉そうな奴と対峙している。

岩のような巨躯、高そうな鎧に、剣、盾。あの騎士はどう見ても将軍クラスでしょ。

その後ろから、コソコソしている魔法使いがいる。


2対1は卑怯だよな。多分。

とりあえず加勢してやるか。


「美香来てやったぜ。」

「助けなんていらないわよ。」

「そう言うなって。俺があの弱そうな魔法使いの方をやるぜ。」

「まあ、いいわ。弱そうなのはあげる。」


貧相な体の魔法使いが前に出てきた。


「ぼぼぼくは、この軍団の大将だ。こここの騎士より、僕の方が強いんだぞ。」


うん弱そう。


「そうかそうか。ならお前を倒せば終わりだな。」

「おおまえ、なんかが、ぼぼぼくを倒せるわけないだろ。

このどどチビが。」

騎士が魔法使いの側に寄った。

「ローレンツハイマー伯爵、ここは私1人でも十分かと。」

「いいいいや、あのどチビはわわわワタシが倒しますよデカルタ。」

うーん、俺の方が背が高いんだけど。まあ、いいや。


美香が暇そうにしている。

「そろそろ、いい?」


美香は鞘から刀を抜くと刀からは炎が溢れでる。

宝物にあった属性付きの刀だ。

それと、俺が作ってあげた刀『神楽舞』の二刀流

で戦おうとしている。

「あれ、美香って二刀流だっけ?」

「ん? 今日が初めてよ。大丈夫。イメージトレーニングは完了してるから。」

それ、ぶっつけ本番だよね。


美香はそう言い終わるといきなり騎士に斬りかかる。

デカルタは紅色の盾で防いでいるが、二刀流の連続攻撃に鎧が傷だらけになっていく。

初めての二刀流とは思えない程の剣捌きで、デカルタを追い詰めていく。

デカルタは、防御だけでは危ないと判断したのか攻撃に転じた。

美香は重そうなデカルタの一撃で後ろに吹き飛ばされたが、宙を舞うように着地した。


「なかなかやるわね。」

「なかなか、どうして女のクセして攻撃がするどい。」


デカルタは兜を脱ぎ捨てた。

頬や頭には古傷があり幾多の修羅場を潜ってきた事がわかる。


「あんた、まだ本気じゃないわね。」

「ぬしもな。」

二人は笑みを浮かべる。


あまりの凄さに俺は魔法使いと戦うのを忘れていた。


「おおおおまえ。私をむむ無視するな。」

「うるせーなあ。アルツハイマー伯爵。」

「だだれがアルツハイマーです。わわたしはローレンツハイマー……。」


言い終わる前に俺は『格闘家』に模倣して

電光石火の蹴りを顔面に食らわせた。

アルツハイマー伯爵は地面をバウンドするように跳ねて倒れた。


「あれ。一撃で終わった?」

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