第41話 達人 対 達人

〈黒田視点〉

あらら。荒須裏切ってるよ。

目が虚ろだしあれは、魔法使いになんかやられたね。

という事は、あの魔法使いは精神系魔法が得意だったのか。

荒須でよかった。服部なら僕は殺されてたね。

さて、あの迷路が潰されたのは参ったなあ。


あれじゃあ足止めできないね。

時間稼いで、敵軍の水場に毒でも入れてきてもらおうと思ったけど。

これじゃあ、やばいなあ。

仕方ない即席で作ったあれを使うか。

数がそんなにないんだよなあ。

切り札に取っておいたのに。

まったく荒須は、どこまで僕を苦しめるんだよ。


「ねーねー、そこの兵隊さん。魚田くんにあれを使うように言ってくれる。」

「あれですか?」

「うんうん。そう言えばわかるよ。」


さて、仕方ないな。

服部に相手の魔法使いを暗殺してきてもらうか。

あの策で様子みて駄目なら『ジェネラル』の魚田と『聖騎士』の桜に前線を支えてもらわないとな。


そろそろ荒須があれの射程距離まできたね。


魚田の指揮で一斉に光の矢のようなものが荒須に当たる。

ダメージは当たっていないようだが、動きは止まった。

荒須の周りにいたルーン兵は次々と倒れていく。


うんうん、効果はあったね。

即席で銃を100丁作らせてよかったよ。

魔法の術式を刻んだ弾丸を魔力で飛ばす銃。

『魔力銃』というべきかな。

一般の兵だと10発くらいで魔力を尽きるけど、

そこは人をチェンジして連続で撃てるように隊列で工夫してある。

『長篠の戦い』みたいな感じになってるね。

相手の数が多いから足止めくらいにしかならないから、

今のうちに。


「服部くん。いるかなあ。」

「ここに。」

「うわ。僕の影にいたの?」

「如何なる時も主の側におります。」

なぜ主、、もうこの子自分の役に心酔してるよね。

まあ、いいや。

「あのさ、ルーン王国に魔法使いがいたよね。あれを暗殺してきて。あと精神系魔法を使うみたいだから、やばそうなら逃げてきてね。」

「御意。」

うん。うざい。


さてさて、あとは待つだけかな。


ん? なんだ荒須の近くでいきなり人が現れたぞ。


どれどれ。あらかじめ作らせておいた双眼鏡で

覗くと、寺田、浩介、阿部の三人がいる。


「おいおい、あいつらいつの間に帰ってきたんだ。」


浩介はいきなり走り出しルーン兵を次々と弾き飛ばしている。

阿部は地面に拳をぶつけて地割れを起こしてルーン兵

を谷底に落としている。


「なんだ。あの人間離れした攻撃。まるでマーベルに出てくるヒーローみたいになってるぞ。」


寺田は静かに荒須と対峙している。

「寺田って魔法使いだよな。勇者とタイマンは無理じゃない?」


二人に沈黙が流れる。それを察したのか、二人の間に誰も近寄らなかった。


「なんか達人同士の戦いみたいだよ。」


荒須は沈黙を破るように聖剣エクスカリバーを振りかざした。

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