どうも、僕らが主人公です

第0話 それは他世界からの印象

 空が、やけに近いように感じる。

 足元を見ればそこは雲の上だった。どうして雲だと思ったか、それはその周辺が一面青だけだったからと言うことから推測しただけ、白いふわふわするようなこれは、カーペットといっても自身が知り得る材質に近いものは見当たらないということもあった。

 状況を読み込むため、落ち着くために足元を見ていたら、高くもなく低くもない、それだけでは性別が分かりづらい声が耳を打った。


「ようこそ、世界の境界線へ。」


 視線を前に向ける。周辺は青ばかり、足元は白一色、そして目の前には人が3人。話しているのは中心にいる人間だ。


「此処は君達の世界と僕達の世界が繋がる門の前、普通に生きていれば辿り着くことない世界。」


 にっこりと笑う人間はこれもまた女性とも男性とも取れそうな中性的な容姿。首元までの短さの髪は陽の光を浴びて柔らかなハニーブラウンの色に揺れた。性別が判別できないのはその容姿もあるが、纏っている純白の神官服が、男なら出てくる喉仏を確認できる首元を覆っていたからだ。


「けれど貴方達は此処にきた。それは僕らの世界に望むものがあるから。」


 不意に笑顔で細められた目が、一瞬開いた。髪に負けないくらい美しい……かつてどこかの冒険先で見た宝石のロードナイトの色の目だ。


「ではご用件をどうぞ、しかし偽りは許されません。」


 柔らかい目の色と相反して凍りつくような声に込められた警戒心に一瞬、身構えそうになったが言葉はなお続く。


「貴方たちが此処に来た理由、意味、本来の目的を嘘偽りなくお答えください。」


 目的、思わず漏れ出そうな言葉を唇を噛むことによって抑えた。目の前の人間の言葉で、この場所がかつて自分が伝え聞いた話にあった場所だと確信が持てた。同時に彼の抱えている事象も、此処でしか対処できなくて、そうでなければ自分の世界は終わる。それは避けなければならなかった。

 自分がこれから語ることが、偽りのない言葉であれと一抹の望みをかけて、男は選んだ言葉を伝えようとした。


「魔王を倒すための武器、探し物をしているんだ!!此処を開けてくれ!!」 


 隣、自分じゃない、共をしていた別の男が声を張り上げた。

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