1.3

 その普遍性故に人は取り立てて目立つ飾り立てに批評をしがちで、まるで自分は純心素朴なようなふりをして常識を語る。杉谷を囲んでいた旧友達のように、それがまったく正当で、自分に与えられた権利を行使するかのように、当然といった様子で品評を下すのだ。それは、彼らにとっての退屈凌ぎに過ぎない。彼らは、自分は社会の中核に存在するという自負から杉谷のような人間を否定できる特権を持っていると思い違いしているわけだが、見ようによっては杉谷と同じように哀れである。他者を嘲笑して初めて自我の昂りを感じるという事は、自分自身の権利を自覚するために他者の存在が必要不可欠であり、未来永劫何者かに依存していないと尊厳を維持できないという事ではないか。自身で自身を確立できないというのは幼稚で儚い。そうとも知らず、彼らは社会という特別意識に酔い、排他を良しとするのである。



 こうして偉そうに他者を評していると、「そういう君は釈迦や耶蘇のような素晴らしい求道者なのだろう」と皮肉たっぷりな罵倒をいただくように思うが、それは誤解だと弁明させていただきたい。私はただ、私が見てきたものをそのまま表しているだけに過ぎない。そこにあるものをあるがままに書いているのだから、それは私のパーソナリティとは無関係な、極めて客観的、俯瞰的事実なのである。例え私が天下名だたる大罪人であったとしても、事実を語ればそれは事実であろう。浮かぶ蓮の花を写す水面のようなものではないか。

 こんな風にいうと何人かは不愉快となるかもしれないし、もしかしたらここまでずっとそのように思われていたかも知れない。申し訳ないが、これは私の性分であるからして、どうか辛抱強く読み進めていただくか、目を離し、自らの時間に戻っていただくのが良いだろう。私を非難してやろうという気概ある人物や、腹の底から馬鹿者と笑ってやろうという奇特な暇人は、好きにしたらいい。

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