第48話 西から東への転換

 南に向けて飛ぶと、オーランドに似た造りの港町が現れてきた。畑も同じだし、これは東西北への交易拠点というメリットを縮小したオーランドと考えてよさそう。

 ようこそ港町ボルンへと書かれた街のアーチを抜けると、オーランドと同じ斜面に沿った赤ちゃけた煉瓦の街並みが見えてきた。

 市場の品揃えも同じで、やや高めといったところかしら。


 オーランドの街と同じことを自分でしても仕方ないから、支配人に相談してセイレン国での商会登録を済ませたら転移で適切な人を送り込んでオーランド式でチェーン展開してもらいましょう。


 そうと決めたミナは、ギルドに直行してセイレン王国の地図を購入した。

 港町ボルンは国の南東端、北東はエルフ防衛拠点の城塞都市、南東はステップ気候であまり人は住んでいないようだ。となると中央の王都か西のスペード王国に接する交易都市が観光ルートとしては適しているのかな。


 そこまで考えたミナは、一旦、西方向に足を伸ばすのはやめることにした。

 活動拠点であるオーランドから東は全く見ていないのだ。

 グラリア王国に本店があるのだからグラリア王国内やグラリア王国の東に目を向けるべきでしょう。


 ◇


 オーランドに転移して支配人に港町ボルンのチェーン展開方針の話を伝え、グラリア王国国内の拡充を相談すると、ちょうど王都への招致の話が来ていたそうだ。ガーランド王国の都に展開するくらいなら自国の王都にも展開せよとのことらしい。

 う〜ん、グラリアの王都はガーランドの王都の倍くらい遠いのよね。


 結局、オーランドから東の街道に向けて中継都市ネイザスに一旦入り、そこから水上都市ベネッティを通過して、東の王都カラミティに到着して・・・オーランドに転移して戻った。

 白竜さんや戦闘機じゃないんだから、やっぱりゆっくりでも飛行船方式でお茶飲みながら遊覧するのが性に合っている気がしてきました。


 正直いって人が足りなかったので、王都と水上都市で人を募集した後、オーランドに転移して、本店研修を三ヶ月ほど受けてもらい促成栽培した。その間に王都と水上都市で土地建物を支配人に買収させ、本店スタッフをフロアリーダーにして育成した子たちとシャッフルして、オーランドをどうしても離れたくない人を除いて3拠点に均等に割り振った。

 あとはOJDでなんとかなると期待するしかないでしょう。


 ◇


 そんな急造チームでしたが、やろうと思えば全拠点1日で回われるので、大きな問題は起こらなかった。セイレン王国には手が回らなかったけど仕方ないわよね。


 ガーランド王国では、ミナーセとは別の区画で試験的にショットバーを開いてみた。

 折角ギッシュ&グラッドの酒瓶とグラスが出来たのだからと、ラガービール、ウィスキー、ブランデー、日本酒もどきの本醸造と吟醸、焼酎といったものを展開した。

 ワインはミナーセで出していたので外して客層を分け、ラム酒とそれを使ったお菓子はミナーセに振り分けた。


 ショットバーは一等地ではなかったので最初スロースタートであったが、主にドワーフさんに口コミで広がり、ガラス職人以外のドワーフ職人さん全般と知り合うことができた。その結果、アーランド大陸のドワーフと同様、蒸留機や冷却機なども作れるようになり、中央大陸でも蒸留酒が作れる下地ができた。また、以前の課題だったパスタ製造器もできて、アイテムボックスに頼らないパスタ量産も実現できた。


 そんなこんなでドワーフ酒場状態になり、もう人族は来なくていいかなぁと思っていたら、ルイスさんをはじめとしたガーランド王国有力商会の情報網にドワーフ酒場の噂がかかり、偵察にきた各商会の人が未知の酒の完成度に目を剥きながら会頭に報告した結果・・・また頼みもしないうちに一等地に酒専門店が建っていました。えぇ〜?


 この流れは、またガーランド王国の貴族に波及して、それを自慢されたグラリア王国に自国でやらんとはけしからんと招致されるパターンですか?


 嫌な予感がしてならないわ。

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