第38話 初めてのダンジョン

 翌日早朝、ギルドで改めて集合した後、くだんのダンジョンに向かった。

 道中暇なので、折角だからダンジョンのことを聞いてみた。


 ダンジョンは地脈付近で自然にできた洞窟内で魔力溜まりができると、魔鉱を内包する魔獣が発生するようになったものだそうだ。

 わざわざ討伐せず安全に採掘はしないのか聞いてみると、魔鉱を鉱山のように採掘するなんて聞いたことないらしい。石油や石炭資源のように、中央大陸では埋蔵された魔鉱を採掘するほど大陸の歴史が古くないので、魔獣を討伐しないと得られないってことかしら。


 アーランドは大陸移動により地脈から外れて、埋蔵された魔鉱のみが昔ダンジョンだった跡を残しているってことかしら?火山地帯に近かったから、案外、アーランドの山にも存在していたのかもしれない。

 大陸間貿易が行われるようになったら、石油や石炭のように採掘できるところから輸入するようになるのかもしれないけど今は無理ね。


 ◇


「ここよ」


 スカウトのレイさんが鍾乳洞のような入り口を示した。なんだか富士五湖周辺の鍾乳洞を思い出してしまいました。天然水晶とかアメジストとかあるのではと別の意味でワクワクしてきましたよ。


「サンライト」


 とりあえず、懐中電灯やランタンでは進みにくそうだったので、魔法で昼間のように明るくした。三人はギョッとすると


「魔力は大丈夫なのかよ」


 全然平気平気〜と能天気に答えると、お嬢やっベぇなと斧使いは呟きながらも細かいことを考えない性格なのが、それきり前を向いて進んでいった。探知魔法を球状半径1キロで展開すると、確かに魔鉱をコアにした何かが移動しているのが感じられた。


「エコーからのホログラム」


 超音波による探査をもとに3Dで鍾乳洞のミニチュアをホログラムで投影し、その上に探知魔法による魔獣を分布を映し出した。


「今ここで、赤い点が魔獣たち。前方600メートルに何かいるみたいよ」


 一つも常識的な魔法を使っていないが、とりあえず戦闘に備えることにしたリーダーは、警戒して前にでた。


 ◇


 結論から言うとミナの探査は完璧だった。

 昼間のような明るさで事前に遥か前方どころか360度死角なしで魔獣の存在を感知してしまうので、経験豊かなAランクパーティである3人はあまりのイージーさに呆れていた。


 ミナも攻撃参加して窒息&雷撃コンボを試してみたが、生物とは違って効かなかったので、久しぶりにレールガンをぶっ放したところ、核となっていた魔鉱ごと粉微塵に吹き飛んだ。

 がっはっはっはと斧使いのガンツに爆笑され、魔鉱採取に向かないと言う事で、もっぱら支援に徹していた。


 実はメンバーを結界で覆っていたことから、防御無用で一方的に攻撃するだけの簡単なお仕事になっていたのだが、Aランクだけに器用に敵の攻撃を避けていたため、彼らが考える以上の安心安全な状況になっていたことに気が付かれなかった。


 ◇


 ドザッァー!受付嬢のカウンター一杯にばら撒かれた魔鉱に目を剥かれた。


「いったい一日でどれだけ狩ってきたんですか!」


 声を上げる受付嬢に肩をすくめるようにしてガンツやレイは答えた。


「お嬢の実力舐めてたわ」

「ピクニックに行くようなものだったわ」


 そう、アイテムボックスを持つミナがダンジョン攻略しようものなら、ダンジョン内で安全に出来立ての料理やティータイムを過ごすことすら可能なのだ。色々おかしかったが、冒険者は他人の能力を深く聞かないことが暗黙のルールだ。

 クソ便利だった。その事実だけで十分だろう。


「それではミナさんはランクDに昇格です、タグをお願いします」


 タグを受付嬢に渡すミナ。いや待て、なんていった?


「は?Dランクだと。ありえないだろ!」


 アーツは嘘だろと言う思いで叫んだ。いくら若くても最低でもBランクはないとおかしい。今まで素材買取しかしていなかったからだそうだ。


 ミナは最強のEランク、いや今はDランク魔法使いだった。

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