使命を果たしたその先で
第37話 山の魔女
いきなり人混みに紛れて生活する気分でもなかったので、中央大陸中央にある山脈地帯で高原生活を送ることにした。
常時結界だけで、カラコンもなし、着色もなし、幻惑もなし!
久しぶりにありのままの自分で過ごす自由を満喫していた。
南北に分かれて紛争しているど真ん中の山脈に居を構えるなど、かつてのミナからするととんでもなかったが、ただでさえ宇宙神様の結界や女神様の印で精霊魔法無効を与えられていた上に、70年以上の歳月を経て、白竜並みの魔法力と外部タンクとなる精霊の制御を完全掌握した彼女は、もう単なるエルフにどうこうできる存在ではなくなっていた。
攻撃してくるエルフがいたら右手で払うだけで麓まで安全に吹き飛ばしていた。
逆に人族から美しい少女ということで野盗が襲ってくることもあったが、悪意ある者を防ぐ結界でパントマイムするしかないので、こちらも転移魔法でお帰りいただいていた。
そんなことを数年ほど繰り返しているうち、エルフからも人族からも、ミナの居住区域は山の魔女の棲家として不干渉地帯となった。住居はアイテムボックスで持ち歩いていたドワーフ謹製の洒落た別荘で、転移で麓の村や街に赴き、時折買い物したり、冒険者ギルドで素材売却をしたりしていた。
麓住民からすれば、金払いがよく不足しがちな素材を卸してくれる美少女ということで、ありがたい存在と化していた。
◇
そんなルーチンワークにも飽きてきた頃、いつものように冒険者ギルドで素材を売り払おうとカウンターに寄っていくと、三人組のパーティに声をかけられた。
話を聞くと、主にダンジョン攻略をしているAランク冒険者で、麓にあるダンジョンを攻略中、不慮の事故で魔法使いが怪我で一時脱落してしまったらしい。
「なぁ嬢ちゃん、うちのパーティに入ってくれないか?」
リーダーらしき戦士風の男が切り出した。斧使いに罠外しの女スカウターと、少しバランスが悪くなって難儀しているそうだ。
それにしても嬢ちゃんですか。享年80歳、むず痒い。
それはさておき、この星にはダンジョンなんて代物があるのでしょうか。そんなファンタジーありえま・・・あ、そういえばファンタジー風にしたとか聞いた気がする。
「う〜ん、怪我が治るまでの期間限定ならいいわよ」
そう答えると、ミナ・ハイリガー・ナナセ・フォン・ルーデルドルフと名乗った。
「ん?嬢ちゃん貴族なのか?」
「そうだったような、もう、そうでないような?」
自分でも首を傾げている様子を見ると、リーダーと思しき男はまあいいやとばかりに、リーダーのアーツ、斧使いのガンツ、スカウトのレイとそれぞれ自己紹介を終え、明日出発ということで解散となった。
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