第31話 アーランド南西の街
今まで送ってくれた白竜さんに改めて感謝を伝え、巣に戻っていくのを見送ると、アーランド南西端からゆっくり北上した。
かつて見た三国の地図は大陸の四分の一くらいの範囲で、帝国の南、フィリス公国の東、その南側の四面くらいが大陸全土の大きさだそうだ。私は南西橋に降り立ったから、ちょうど商業都市国家の南にいることになる。
手っ取り早く転移が効く距離まで飛ぶことも考えたが、大まかな街や都市の位置は白竜さんに教えてもらったので、最寄りの宿場街ボストに寄って宿をとって一休みすることにした。
久しぶりに発動したカラコン魔法と着色魔法で茶色にして、厚手の布をフードのように目深に被って顔を隠すと、ボストの街に向かった。
◇
ボストの街に着くと門番に止められ通行証の提示を求められた。
持っていないと言うと通行料銀貨一枚を求められたので、商業都市国家の銀貨を出すと、ここらでは珍しいと裏表を何度か見ると、問題ないと判断したのか通してくれた。
為替レートはどうなっているのかと細かいところが気になったが、商業都市国家の通貨は信用のため他国より金や銀の含有量が多かったので、提示枚数と同じ枚数だけ出している分には文句を言われないと、アランおじさんに聞いたことがある。きっと、こちらの国でも同様なのだろう、ロスタリア万歳!
門番さんにお勧めの宿を聞くと、やや高めだが女性一人でも安心してできるところを紹介してもらえた。
調子に乗って今度はかつて登録できなかったギルドに登録しにいってみることにした。
ギルドは主に傭兵・護衛・討伐・素材に分かれていて、私は護衛・討伐・素材採取の三つにマルをつけ、職業欄に魔法使い、署名欄にミナ・ハイリガー・ナナセ・フォン・ローゼンベルクと書いて申請料銀貨5枚を渡して申請した。
受付嬢にちらっと見られた気がしたが、何も言われず処理され名前が刻印された金属製のギルドタグが渡された。
試しにサバンナで狩ったインパラのような動物の毛皮を出して素材として売り払って見たところ金貨2枚で売れた。アランおじさんがさばいた時より安い気がしたが、多分、仲介手数料とか必要経費があるのだろう。
大体の相場が分かったので、依頼が張り出された掲示板を確認すると、商業都市国家行きのキャラバン護衛で残り一人募集とあったので依頼を受けることにした。
受付嬢は何か言いたそうにしていたが、紹介状を私に渡すと、集合は明後日の朝ですと言い切った。プロ根性に徹したようだ。
門番さんに教えてもらった少し高めの宿にチェックインし、まあまあの味の夕食に舌包みを打ちながら眠りについた。
◇
明後日になり、フードを目深にかぶって集合場所に行くとキャラバンの人たちが出立の準備をしていた。
ギルドの紹介状を渡すと、少し訝しげな表情をされたが、紹介状欄に魔法使いと書いてあったことから、少し水を出してみろと言われたので、風呂一杯分くらいを馬の水場に発生させると驚いた表情をした。
そして、その後は何も言われず、後1時間したら出発だから休んでろと言われた。
後で知ったことだが、ギルドの雇われ魔法使いならバケツ一杯程度で十分だったらしい。
他の護衛が集まり準備が整うとキャラバンは出発し、ボストの街をあとにした。
道中は特にグラスウルフなどの野獣に襲われることもなく、半月ほど同行すると、商業都市国家に到着した。
依頼証にサインをもらい、商業都市国家のギルドに出頭して依頼完遂を報告すると、金貨5枚が支払われた。感覚的には半月で五万円くらいだろうか。駆け出しだからかもしれないけど、副業ならともかく、商隊護衛で生計を立てていくのは無理だと感じてしまった。
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