第30話 エルフの大陸
偏西風に流されるまま海の上を進んで一月ほど経っただろうか。ジャングルの深い緑に覆われた大陸が見えてきた。
浅瀬に降り立ち小屋を収納したミナは半径100kmほどの広域探知魔法を使い危険の有無を確かめた。うん、魔獣・猛獣と危険だらけだった。それでも張り慣れた結界を常時展開することで、不足した食糧を補充をすることができた。
鑑定魔法をかけ、バナナやパイナップルに似た果物やカカオの実を見つけて転移のための目印をつけては、これでチョコレートやフルーツパフェの製作が見えてきたと無邪気に喜んでいた。
それでもジャングル奥地に進む勇気はなかったので、海岸沿いに北に進んでいった。
そんな毎日を過ごしているうちに、ついに知的生命体にが探知にかかった。そうエルフだ。
それも数人やそこらではない。100や200の集落が散見された。
ジャングルだけに日に焼けたダークエルフっぽい種族でもいるのだろうかと、アマゾネスや原住民的なイメージを浮かべ身を震わせたミナであったが、この大陸ではかなり昔に人族は絶滅していたため、広域探知魔法を使うミナに気がついても、人族と考えわざわざ海岸線まで出張って襲ってくるエルフはいなかった。
◇
さらに数日過ぎたある日、自分目掛けて急速接近してくる巨大な気配に気がついた。今まで感じたことのない気配に接近してくる方向を見ると、最初、米粒のような白い物体が物凄い勢いで大きくなっていく。
望遠魔法を使って見ると、その威容が見てとれた。
「ホワイト・ドラゴン!」
いくらファンタジー世界と言ってもそんなのありなの?と、わたわたとあわてるミナだったが、数百キロで飛来するドラゴンは慌てている間にミナの前まで到達すると、目の前に降り立った。
(こんにちは、宇宙神様の使い)
なんと、信じられない呼称で呼びかけられた。話を聞くと、目の前の白竜は女神エスリール様の神使で、女神様が私を送り届けに使わして下さったらしい。
「びっくりした〜死ぬかと思ったわ」
気が抜けて座り込むと、呆れたような声音でこう返した。
(貴方が私の攻撃程度で死ぬわけないでしょう)
これまたおかしなことを聞いたと確認してみると、私が長いサバイバル生活で常時展開できるようになった多層結界は、上位神が授けたものだけあって白龍さんの全力ブレスでも防ぎ切れる代物に成長していたらしい。
加えて女神様の印がついているため、外部魔力タンクである精霊魔法で補強しても無効になるので、およそ攻撃が通る存在などないはずなのに、過保護なことねと笑われてしまった。
なかなかフレンドリーなドラゴンさんである。
私はここまできた経緯を話して、今どこにいるのかわからないことを伝えると、この星のある程度の規模の大陸について教えてもらえた。
私が最初に送られた北半球に存在する小さめの大陸アーランド、赤道から南半球にかけて砂漠とサバンナが広がる大陸ドバンナ、そして今いる南半球のジャングル大陸エルフィン、最後に最大規模の中央大陸ミドルチャイ。
このうち人族が住んでいるのはアーランドとミドルチャイだけだそうだから、それ以外で番(つがい)を見つけるのは無理と言われた。
中央大陸のミドルチャイでは、中央の山脈地帯を挟んで南北に分かれてエルフと人族との戦争が続いているそうだ。
ついでに白竜さんにその巨体で飛んで魔力が尽きないのか聞いてみると、自分の魔力はほんの一部制御に使うだけで、メインは風の精霊を外部魔力タンクとした精霊魔法をメインにしているそうだ。神使の血を引くものであれば使えるそうなので、神使そのものである私も同様の方法で飛べるはずとイイコトを聞いた。
試しに風の大精霊をイメージしてシルフィードお願い!と呼んで以前開発した飛行魔法で飛ぶ動力の肩代わりをお願いしてみると、マッハを超えてソニックウェーブが発生してしまった。白竜さんに私の飛行魔法について感想を求めると、結界による空力はともかく、重力遮断がやりすぎらしい。
なるほどと重力遮断無して飛んでみると、白竜さんと並走するくらいの程よい(?)飛行速度となった。やったー!お礼を言うと白竜さんは初めて飛ぶ小竜に教えていたことを思い出し、案外楽しかったと笑ってくれた。
こうして白龍さんと並走するように北東に飛ぶこと10時間、エルフの大陸を後にしてアーランド大陸南端に辿り着いたのであった。砂漠に降り立ってから延べ一万キロに及ぶ長い旅は終止符を打ったのであった。
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