第29話 Side女神:予想できない少女

 なんということでしょう、宇宙神様が遣わした神使は暫く見ないうちに、飛行船というか飛行小屋で世界一周の旅に出ていました。


「どうしてよ!この子おもしろすぎるでしょ!」


 このまま東に進むと、元いた場所の南にある大陸のジャングル地帯に到達する。ジャンクル地帯は獰猛なエルフが数多く住まう土地だ。以前の場所のような(あれでも)比較的大人しいエルフと違って、この大陸では人族は絶滅している。


 こんなことがわかっていたら、前回あった時に惑星のイメージを送っておけば良かったわ。

 今のあの子ならエルフの魔法は効かないし、結界を張り続ける限りは問題なく通過できるはずだけど、未来を読み切れるならこんな世界旅行などに繰り出していないだろう。


「仕方ないわね・・・」


 パチンッ!指を鳴らすとドラゴンが住まう島にある白竜の巣の光景に切り替わった。


(これはエスリール様、何用でございましょうか)


 エスリールの地上における使いは長らくこの白竜が務めていた。エルフに負けない能力と寿命は、エンシェント・ドラゴンしか持ち得なかったのだ。


「久しぶり。早速だけど送り届けて欲しい人族の娘がいるのよ」


 そう切り出すと、ミナの現在地と魔力パターンを伝えた。


「魔力量はあなたにも引けを取らないから、近くまで行けばすぐわかるはずよ」


(人族がですか?どこかの神の使いでしょうか)


「宇宙神様の使いよ」


(なんと!それはまた随分と上位の神に気をかけていただいたものですね)


「ええ、ちょっとやそっとでは死なないはずだけど、このままエルフの大陸に突貫して何かあっては困るのよ」


(それが定められたことであれば、エルフとの全面戦争で駆逐を命じられているのでは?)


「いいえ、能力はともかく精神的に無理よ。以前会って確認した限り、人やエルフを虐殺できるような精神構造はしてなかったわ」


(わかりました。では、彼女と合流し、エルフ大陸の北に位置するカストル大陸の人族の領域近くまで送り届けましょう)


「頼んだわね」


 そう言って手を振ると、再度ミナが映る光景に切り替わった。


 何があったのか知らないが、あれから常時結界は身につけたようだ。感心感心と、居眠りしながらも多層結界を維持しているミナを見て、満足した笑みを浮かべた。

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