第28話 砂漠越え
あれから転移を試したものの、距離が遠すぎるのか転移することはできなかった。火事場の馬鹿力ならぬ馬鹿魔力で、無意識にエルフが決して来なそうな砂漠への逃避行を願ったのだろうか。サハラ砂漠も真っ青だ。
サソリや毒蛇などがいるかもしれないと、かつて女神様に言われた通り常時結界を張りながら、アイテムボックスから日除けの厚手の布を頭から被ると、どの方向に行こうかと考えを巡らせた。
まずは以前したようにナイフを方位磁石に見立てて北を確認する。うん?北に・・・太陽がある?まさか、北半球から南半球に転移したってことぉ!?
「うそでしょう〜!」
思わず砂漠のど真ん中で叫んでしまった。棒を地面に立てて暫く太陽がどちらに動くか確認したところ、やはり右から左に動いている。これでは単純に北に行けばかつての場所に辿り着くなどといった生やさしい距離ではなさそうだ。
いくら砂漠に疎い私でも、赤道直下越えが厳しいことなんて想像がつく。
アイテムボックスから小屋を出し、結界中で気温を下げつつ一日ほど太陽の出ている時間を体感で計測すると、ずいぶんと長かった。転移前は秋頃だったはずだから春とすると、以前より赤道に近いということね。
幸か不幸か食料と水は豊富にあったので、割とのんびりと考察して緯度だけでも相対位置を頭に浮かべると、ここは南に向かうのが正解と考えをまとめた。
そういえば飛行船に適用した魔法をこの小屋に適用すれば空飛ぶ小屋ができるわね。
落ち着きを取り戻したミナは小屋ごとプカリと浮かぶと、南に向けて飛行を開始した。
◇
「千切れ雲は風に軽く〜そ〜らを流れる〜と来たものね」
時速100キロ程度で砂漠を南下していたミラは、十日後にようやく砂漠を抜けステップ気候、さらにはサバナ気候に似た植生の土地が見えてきた。
南に1000 kmでようやく砂漠越えとは、本気でサハラ砂漠並みの広さだった可能性がある。と言うより、無意識にサハラ砂漠のようなところというイメージを思い浮かべた結果なのかもしれない。
こうなってくると、ヨーロッパからアフリカ大陸のような別大陸に転移した可能性が出てきて、思わず冷や汗が出てきた。とりあえずはバッファローやインパラのような動物もいるし、備蓄食糧の限界に不安を覚えることも無くなったが、山や森とは別の本物のサバイバル生活に近づいたとわね〜と感慨深い思いでいた。
それにしてもこういったところなら森もできないからエルフもいないでしょうし、人族にとってはパラダイスかもしれない。ログハウス生活での「住めば都理論」が再燃しつつあったが、また人と交流することもない生活に戻るのはやはり寂しい。
「こうなったら覚悟を決めて大航海時代をするしかないのかしら」
ここまで砂漠化が進んだ大陸でこのまま南下しても、南端に広い温帯湿潤気候の人間が住まう土地が見つかるかわからない。ある程度南下した後は、偏西風に乗って東に新大陸を求めるしかないかな。
そう決断すると、航海病にならないようビタミンを含んだ果実を鑑定魔法で探し、狩に勤しんでは惑星一周の旅に乗り出したのであった。
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