第19話 Side教皇:神使様との邂逅
重要な発表があると防衛上来れない場合を除いた国中の貴族と我々宗教関係者を招集するという帝位継承行事以外では前例のないことに、様々な憶測が飛び交った。
枢機卿だけでなく教皇の私まで呼ぶとなると、政治や軍事以外で余程のことが起きたのでしょうか?しかし、特におかしな動きは各教区から報告は受けていませんし、特にエルフに無念を抱く人間の死体がグールと化したなど、不浄のものが溢れたような気配は感じられない。
感じられないどころか、どちらかと言えば近年では稀に見るほど、今日の帝都は清浄な気配に溢れている。
不思議に思いつつ参列した教皇は、謁見の間に現れた碧眼の瞳に紫銀の髪をした美しい少女を見た瞬間に直感的に理解した。
「神使様だ」
それも半端な神の使いではない。いつも祈りを捧げている慈愛の女神エスリール様が発せられる神力の質を超える波動が感じられるのだ。かなり上位の神の使いと推定される。
貴族たちには質の違いなど判別は付かないであろうが、神使様は一般人にもわかりやすい特徴として、濁りのないクリスタルブルーの瞳まで保持しておられる。
こんな神使様が帝都にいるなら、それは普通の帝都の気配ではなくて当たり前だ。どうして常ならぬ清浄な気配に気が付きながら、その存在に思い至らなかったのか。知っていれば聖騎士団を率いて即座に保護申し上げたものをと忸怩たる思いをした教皇だった。
そんな教皇の思いを知ってか知らずか、皇帝は第一皇子か第二皇子との婚約の予定を皇帝の名で約する勅命を出してしまった。やられました。聖女認定を出す前に先に囲い込まれてしましました。
しかしカーライル子爵が報告したことが本当であれば、神はエルフの脅威から人族を救済するために神使様の優秀な子を残す使命を与えたのだという。なんと慈悲深い神がいたことか。神のご意志がそうであるならば仕方ない。
「聖女が駄目なら聖母になっていただくまでのこと」
神の慈悲に至上の喜びの表情を浮かべながら、確固たる意志を持ってそう結論付けると、早速、各教区へミナ・ナナセ嬢の神使認定通達と、中央教会に来訪いただくための算段を立てる教皇であった。
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