第13話 軍隊のお出迎え

 アランおじさんの読みは当たっていた。


 3日もすると辺境を担当する一個中隊の軍隊に囲まれ、子爵家までの護衛を申し出られてしまった。どうやら道を外れて進んでいることも想定して、中隊を小隊単位に分けて道沿いを点ではなく面で捜索したらしい。つまりは草の根分けても探し出せということのようだ。逃げ隠れるつもりもなかったが、ちょっと怖い。


 まだ子爵にアポイントを取っていないので心苦しいと申し出たところ、既に連絡済みだそうで、仮に子爵が断っても


「姫さま、その場合はそのまま帝都までお越しいただきますので問題ありません」


 と、問題発言をする中隊長から指示を受けた女性騎士のアーニャさん。

 単なる平民で姫ではないのですがと言っても一向に聞き入れない困った人だが、悪意を弾く結界を素通りするところを見ると悪い人ではないのだろう。


 そう、最初に私を見た中隊長さんは目を見張ると、四人交代で女性騎士に寝ずの番を命令したのだ。そこまでしなくても結界を張るから大丈夫と伝えると、


「結界!」


 と、アーニャさんをはじめとした女性騎士たちは信じられないことを聞いたような声を上げると、互いに顔を見合わせ更なる覚悟を決めた表情で、姫さまはご自身の価値について今の万倍は自覚を持つべきだと小一時間諭された。解せぬ。


 ◇


 そんなこんなで無事に子爵家に着くと、メイドの皆さんに徹底的に磨き上げられ、シックな青いドレスを着せられた。サファイアをあしらった髪留めを後ろにつけ、サイドを緩く編んだ様は品が良くも年齢相応の遊びを感じさせ、趣味がいいと感心してしまった。


 一足先に支度を終えていたアランおじさんは、以前話していた子爵に大方の事情を話してくれたようで、このまま帝都に随行してくださるそうだ。


「ブラウン・フォン・カーライルだ、アランから事情は聞いたよ」


 ナイスミドルのカーライル子爵は、感じの良さそうなナイスミドルのおじさまといった風情だったが、念のため悪意避けの結界を薄皮一枚のところで張り、差し出された手のひらの上に手を預けると、弾かれることなく触覚を得た。


 アランおじさんが紹介してくれただけあって信頼できる人のようだ。


「ミナ・ナナセと申します。礼儀作法を弁えない平民で無礼を働いてしまうかもしれませんが、どうかよろしくお願いします」


 うろ覚えながら生前に見たカーテシーをしつつ頭を下げた。

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