第11話 Sideサミュエル:おかしな交易商人
ロスタリアからの親書を持って早馬で単騎駆けしていたサミュエル・フォン・ロイドバーグは、道の脇に小屋が建っていることに気がついた。こんなところに小屋なんてあったかと不思議に思ったサミュエルは、馬を近くの木陰に停めて小屋に近寄っていた。
中に人の気配がするので、ノックをして呼びかけてみた。
「どちら様ですかな」
ドアを開け中年を過ぎた交易商人の男が出てきた。
「いや、こんなところにいつの間に小屋が建ったのかと不思議に思って立ち寄った。私はサミュエル、帝国騎士だ。よかったら少し休ませてくれないか」
そう言うと、交易商人の男は少し困ったような表情を見せたが了承してくれた。
中に入ると驚いたことに目の覚めるような美少女が座っていた。紫銀の腰まで伸びた美しい髪に吸い込まれそうなクリスタルブルーの碧眼の瞳で、少し慌てた様子でこちらを窺っている。
どこかの王族の姫か?いや、王族でも碧眼はあるまい。というか護衛はどこにいった?
常識から照らし合わせるとおかしなことだらけであったが、騎士の挨拶をすると少女はミナ・ナナセと名乗った。
この奇跡のような色彩をもつ少女が平民?
訳がわからない。
「あ・・・お茶とクッキーしかありませんがどうぞ」
そう言って後ろを振り返って戸棚を開けると、お茶とクッキーの包みを差し出してくれた。
まてまて、クッキーは分かる。なぜ淹れたてのお茶が戸棚から出てくるのだ?
後ろを振り返って交易商人の男を見ると、やらかしたとばかりに目を覆って声をかけた。
「ミナ嬢ちゃんや・・・目と髪」
目の前の少女は、自分の髪を一房寄せて見て硬直した。
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