第7話 当面の目標
結論から言うとグラスウルフが一体あたり金貨3枚、フォレストウルフが金貨7枚、フォレストディアーが金貨10枚、そしてフォレストマッドベアーは何と一体30枚の値が付き、全部で483枚で当面生活していくに十分なお金を得ることができた。
いったいこの不思議な状態の皮をどこから仕入れてきたのかしつこく聞かれたそうだが、仕入先は秘密という商人の原則のおかげで事なきを得た。
やっぱり商業国家は身元がおぼつかない私のような存在には都合のよい場所だと、あらためて認識するのであった。
アランおじさんに金貨のぎっしりつまった袋を渡され、一部金額を渡そうとすると、助けてもらったのに受け取れないと固辞された。
「これからなにをしていくにしても先立つものは必要になるはずだよ、なにかやりたいことはあるかい?」
そう言われてみると、まずは街にたどり着くことで頭がいっぱいで、そのあとどのように過ごしていくかまるで考えていなかった。
年齢的に冒険者稼業もできない、アルバイト・・・という概念もあるのかないのかわからない。そうだ、山に住もう。いやいやいや、その隠遁生活はエルフの脅威からできないという結論ではなかったのか。
「そうですね。正直言って人里にたどり着くことしか考えていませんでした」
しゅんとした様子でうつむいた。
「しばらくはウチで過ごしてゆっくり将来のことは考えるといいよ」
と励まされて気を取り直すと、アランさんの店に向かっていった。
◇
大通りから少し奥まった場所で馬車が止まると、目の前の店から優しそうなおばさんが待っていたかのように出迎えた。
「ただいま、サラ」
どうやらアランおじさんの家族のようだ。
「こんにちは、サラさん。ミナ・ナナセです」
馬車から出て挨拶をすると、少し驚いたようにまじまじと私を見て挨拶をすると、アランさんに問いかけた。
「あんた、こんな可愛い子どこから拾ってきたんだい」
「訳あってしばらくうちで暮らしてもらうことになった」
そう切り返すと、詳しい話はあととばかり、家の中に案内された。
「まずは旅の疲れを取って、夕食を取ったら積もる話は明日にしよう」
こうして、夕食を取り汚れをふき取ったあと、二階の空き部屋に案内されると気が緩んだのかあっという間に寝てしまった。
◇
朝起きて水魔法で顔を洗ったあと、一階に降りていくとサラさんが朝食の用意をしていた。
「おはようございます」
挨拶をすると、こちらに気が付いたのか振り返り・・・そのまま硬直した。
「あ、あんたその髪と瞳の色は」
酷く驚いた風情でひねり出すような声をかけられ、自分の髪を一房つかんでみてみると紫銀に戻っていた。どうやらカラーコンタクトと色素による着色が解けてしまっていたようだ。初めて文化的な街で眠ったことで、どこか張りつめていた気が緩んだのだろう。
こちらに気が付いたアランおじさんが硬直した私たちを見ると、
「あ~朝からせわしないが、朝食を食べながら、昨日はしょった訳を話していこうか」
と、一人落ち着いた風情で頭の後ろを撫でて言った。
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