第6話 ラウルの街

 待ち行列に並ぶこと1時間ほど経過してようやく私たちの番がきた。


「通行証を」


 強面の門番さんがそういうと、アランおじさんが手のひらくらいの大きさの鉄板を差し出すと、特に私個人について問われることなく通過することができた。こんなザルでいいのかと聞いてみると、王侯貴族の屋敷じゃあるまいし、子供にまで詳しく検問を張ってたら商業は成り立たないと言われた。


 なるほど、12歳前後の子供に何か聞いて治安上の意味があるのか問われれば、時間の無駄としか思えない。そうなると身分証明にギルド証とか取得する必要ないのかしら。


 そう問うと、アランおじさんは困ったように私を見た。


「ミナ嬢ちゃんの歳でギルドとか常識的に考えて無理がないかい?」


 確かに!可食部分が取り除かれたフォレストマッドベアー、フォレストディアー、フォレストウルフ、さらには道中で駆除したグラスウルフの毛皮がアイテムボックスに眠っていたので、買取などしてもらえるのかと期待していたが、あてが外れた。


 少し残念そうにそういうと、アランおじさんは


「それなら、今から武器を卸しに行く帰りに、知り合いの皮製品を扱う商会寄って、卸してあげるよ」


 と売り先を提示してくれた。さすが商業国家の商人、売り買いはお手の物ね。ホクホク顔で頬を緩めるミナであった。


 ◇


 武器を卸して荷台が空になり、皮製品を扱う商会前に来た。


「はい、これだけです!」


 フォレストマッドベアー5体、フォレストディアー12体、フォレストウルフ24体、グラスウルフ15体の皮をアイテムボックスから荷台に出した。

 アランおじさんは最初ギョッとした様子だったが、状態を確かめるとニンマリとした。


「傷一つない、素人でもわかる状態の良さだ。これで売れなければ商人の名が泣く」


 ミナが狩った獲物は剣による切り傷がなく、解体もアイテムボックス内で行われていることから、中身だけ抜き取られた完全な皮だった。これなら傷んだ部分を切り貼りする必要もなく、広い範囲が皮製品に転用できるだろう。切り込みを入れるのは皮製品を作る専門家自身のみなのだから、これ以上のクオリティはなかろう。


「まあ、まかせなさい」


 そういうと、アランおじさんは商会に入っていった。

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